要は、「日中に下半身に溜まった水分が、夜に横臥位で寝ることで膀胱に行く」のを防ぐということだ。それには、太ももの内側の筋肉引き締めや、肛門括約筋の引き締めなど、普通は意識していない筋肉を引き締めることが重要だ、ということである。
老化の特徴が、筋肉劣化であり、しかも、ふだん使わない(意識しない)筋肉から劣化していく、というのは重要な知識だろう。そこで、前に書いた「筋肉体操」が大事、となる。つまり、一般の筋トレのように、「見せる筋肉」の鍛練ではなく、「見えない筋肉」をこそ鍛えるのである。まあ、鍛えるといっても、三石巌流ならわずか6秒の「引き締め」である。
(以下引用)
快適な睡眠は「ふくらはぎ」が決める…!「夜のトイレ」と「こむらがえり」はこう防ぐ
膀胱を安定させる
良質な睡眠は健康づくりの要と言っていい。だが、これを大きく妨げる要因が2つある。夜中に何度もトイレに起きてしまう「夜間頻尿」と、ふくらはぎがつって激痛で目覚めてしまう「こむらがえり」だ。
これらを防ぎ、朝まで目覚めることのない快適な睡眠を取り戻すためにはどうすればいいのか。
まずは「夜間頻尿」の改善法について見ていこう。横浜市立大学医学部客員教授で、泌尿器科医の関口由紀氏が解説する。
「年を取ると筋力が衰え、下半身から上半身への血流が滞ります。すると、ふくらはぎなど下半身に余分な水分が溜まってしまうのです。これは本来であれば腎臓へと流れ、尿となるはずなのですが体内に溜まったままになります」
こうして溜まった水分は、日中は下半身にとどまり続ける。しかし、いざ寝ようと思い横になると、下半身から腎臓へと送られていく。
「腎臓に送られた水分は、寝ている間に尿へと作り替えられます。これが膀胱に溜まり、尿意を催すことで夜中に何度もトイレに起きることにつながるのです」(関口氏)
( 中略)
「太ももの内側にある内転筋など、大きな筋肉を鍛えると下半身の血行が良くなります。そのため余分な水分が溜まりにくくなり、夜にトイレに起きる回数を減らしてくれます」(関口氏)
この体操は夕方から夕食後にかけて行うと、就寝前に水分が腎臓へと届けられ、余計な水分を尿として出し切ることができる。
寝ている間だけでなく、日中からトイレが近いという人は加齢により膀胱が収縮し、尿が溜まっていなくても尿意を覚えてしまう「過活動膀胱」を患っている可能性が高い。
これを改善するために役立つと考えられているのが2.骨盤底筋トレーニングだ。関口氏が続ける。
(中略)
「夕食の味噌汁」が危険
膀胱の周りを通る血管の血流を良くすることも、夜中トイレに起きる回数を減らすことにつながる。神奈川歯科大学客員教授で泌尿器科医の奥井伸雄氏が語る。
「へそから指3本分ほど下にある丹田という部分を、小型の湯たんぽやカイロで温めることで、膀胱の周りの血流が良くなります。こうすると膀胱の柔軟性が取り戻され、尿を溜める能力が高まるのです」
食事に関しても気を付けたいポイントがある。それは、塩分を摂取するタイミングだ。
「夕食に塩分の高いものを食べると、塩辛さを和らげるため、一緒に水分を多くとると思います。身体にとっては余計な水分を取り込むことになり、それが下半身に溜め込まれることでも夜間頻尿が引き起こされるのです」(関口氏)
汁に含まれる塩分が高いため、そばやうどん、味噌汁といった汁物も夜に食べるのは控えるほうがいいだろう。
これらを継続することで、快適な睡眠を手に入れることができる。奥井氏が語る。
「私が診療した中では、75歳の女性が下半身の運動と食事の改善に3ヵ月間取り組んだことで、夜中トイレに起きる回数を6回から1回に減らしたという例があります。夜間頻尿は決して治らないものではありません」
もう一つの安眠を妨げる大敵である「こむらがえり」は何が原因となって起きるのか。清水整形外科クリニック院長の清水伸一氏が語る。
「こむらがえりが起きる原因は、筋肉に疲労が溜まったり、血流が悪くなったりすることで筋肉の収縮を抑える腱紡錘という部分の機能が落ちることにあります。
腱紡錘の機能が低下すると、寝返りを打った際などに少し体が動くだけで筋肉が過度に縮み、足のつりを引き起こすのです」
こむらがえりは激痛を伴ううえ、つりが戻った後も鈍い痛みが続く。そのため、また寝付くまでには時間がかかり、睡眠の質を大幅に低下させてしまう。
これを予防するためには、こむらがえりを起こすふくらはぎをはじめとした下半身の筋肉をほぐすことが必要だ。
筋肉をほぐすといっても、難しい動作はひとつもない。テレビを見ながらなど、空いた時間に簡単にできる動きばかりである。
こむらがえりは、膝裏の筋肉が固い人が起こしやすい。清水氏は、これを解消するためには下図中の1.ふくらはぎ伸ばしがおすすめだと語る。
「30~50cmほどの台の上に片足を乗せ、台に乗せた側の膝に両手を置きます。台の上の足の重心を前に傾け、地面に接しているほうの足のふくらはぎを伸ばします。これを左右30秒ずつ行います」
こむらがえりを起こすふくらはぎの筋肉(腓腹筋)に加えて膝裏の筋肉も伸ばされるため、効果を実感しやすい。このような大きな筋肉を通る血管の血流が促進され、腱紡錘の機能が保たれることが期待される。
足首の柔軟性を保つことも、腱紡錘の機能を落とさないためには重要だ。これには下図中の2.足首ほぐしが効果的である。
(中略)
1と2を行った後に取り組むと効果をより高めてくれるのがふくらはぎ揉みである。
床に腰を下ろし軽く膝を立てて、足首から膝裏にかけて優しく手で揉みほぐすだけだ。ストレッチができなかった場合は、入浴後など筋肉が温まっている時に行うと、ほぼ同じ効果を得られる。
「『第2の心臓』と呼ばれるふくらはぎを揉むことで、さらに全身の血流が促進されます。下半身の筋肉にもまんべんなく血がいきわたり、こむらがえりを予防してくれます」(出沢氏)
ここでポイントとなるのは、ふくらはぎを揉むことは、余分な水分を腎臓に送る効果もあるということだ。つまり、ふくらはぎを伸ばしたり揉んだりすることは、こむらがえりと夜間頻尿のどちらの改善にもつながるのである。
体内のミネラルが不足することも、こむらがえりを招く原因となる。なかでも、マグネシウムが不足すると筋肉のけいれんが起こるため日々の食事で意識して摂るべきだ。出沢氏が語る。
「マグネシウムは手に入りやすい食材だと玄米や納豆、ほうれん草などに多く含まれているため、これらを食事に取り入れるのがおすすめです」
これでも症状が改善しなければ、漢方薬に頼るのも手である。
「こむらがえりに効く薬として知られているのが、『芍薬甘草湯』です。これは筋肉の緊張を緩める効果があるため、就寝前に服用するといいでしょう。しかし、常用すると高血圧を招く危険性があるため、あくまで運動や食事による予防を目指すべきです」(出沢氏)
快適な睡眠は、簡単な体操と少しの生活習慣の見直しで手に入れることができる。それが健康を取り戻し、あなたに幸せを運んでくれることは間違いない。