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東海アマ氏による「ヘーゲル思想」解説

「東海アマ」ブログ記事の一部だが、ヘーゲルの「絶対精神」なるものは、私には直観的に大馬鹿思想に思えるのだが、批判的に論考する気力も無いので、アマ氏の文章を転載して、思考素材として提供するだけにする。
まあ、プラトンのイデア論と仏教の輪廻思想とユダヤ的神秘思想と弁証法をミックスしたら、こんな奇妙な思考になるのだろう。
で、この世界のどこに、絶対精神を実現した存在がいるのだ? 何億年の輪廻の果てに、まだひとつも絶対精神など世界に生まれていないではないか。そもそも、「すべての存在」が究極は絶対精神になるのなら、とっくの昔に世界は絶対精神で満杯だろう。猫も鼠も糞も石ころもすべてが絶対精神、つまり神になるのか? まあ、「世界=神」という思想なら、少しは面白い。我々は神の見ている夢の中の存在だ、というわけだ。


(以下引用)


 私は、高校生のころから哲学に関心を持ち、マルクスやヘーゲルを学ぶ機会があった。
 そして、ヘーゲルの「絶対精神論」こそ、宇宙と人生の究極の本質を示すものと確信を抱いた。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B6%E5%AF%BE%E7%B2%BE%E7%A5%9E

 「絶対精神」というのは、一人の人生でもいいのだが、原理的には宇宙のすべてのものが「合理性」というエネルギーポテンシャルに導かれて、変化(否定の否定・対立の統一)を繰り返し、やがて絶対精神=イデーという終着駅に達するというもので、人生の場合は、「輪廻転生」を繰り返して、あたかも双六のように運動しながら、最期にはイデーという「上がり」に到達するというものだ。

 輪廻転生で矛盾のカルマを克服し、すべての矛盾を克服したとき、人(モノ)は、やがて超越的存在=神の領域に至るというもので、絶対精神に向かうプロセスこそ、人生の本当の意味であるというものである。

 つまり、人は神になるために生きて死に、次々に生まれ変わるのである。輪廻転生によって新しい人生で過去のカルマを解消し、少しずつ矛盾のない完成された人格に向かって歩み続ける。
 人はたくさんの失敗を繰り返し、たくさんの人生を経験することで人格が完成してゆき、最期には、転生不要の絶対精神が待っているわけだ。

 こう考えると、自分の過去の間違いや愚かな所業に苦しんでも、「次の人生で克服すればいいのさ」と気楽に考えることで大いに救われるのである。
 私など、ひどい失敗だらけの人生だったから、そんな自分でも、やがてイデーに到達できると約束してもられるのなら、本当にありがたい。

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「聖痕」5





 


第八章 湖畔の家


 


 翌日、俺たち四人は、奥多摩へと向かった。高尾でレンタカーを借りて、森林地帯へと入っていくと、やがて河口湖が見えた。その湖畔から少し離れた森の中に、我々の目指す場所があった。


 そこは、何かの保養施設らしい広大な土地で、周りは2メートルほどの高さの板塀で囲まれている。門についたインターフォンに向かって、月村静が「小野寺さんに面会したい。私は月村静だよ」と言うと、自動式の門扉がすぐに開いた。おそらく、門の上の監視カメラで確認したのだろう。


 門から見えたのは、床面積は大きそうだが、形は厚めの紙マッチに似た、平凡な二階建ての建物であった。前面はほとんどガラス張りで、政府が税金や年金でよく作る保養施設風である。少なくとも、個人の住宅には見えない。


 玄関のドアも自動で開いた。入り口付近はホテルのロビー風で、床には厚い絨毯が敷かれ、ガラステーブルとゆったりとしたソファがあちこちにある。フランス窓からは前面の庭が眺められて、気持ちがいい。奥にはカウンターがあり、そのさらに奥は厨房だと思われる。入り口から入って、向かって右手に広い階段があり、そこから一人の中年男が下りてきた。


「おやおや、お珍しい。四十年ぶりですね」


 その男は、笑顔で静に握手の手を伸ばした。


「面倒が起こってね。あんたの協力が欲しいんだよ」


「ほほう? まあ、コーヒーでもどうですか」


 男はカウンターに歩み寄って、「コーヒーを五つくれ」と言った。中から若い女の声で「はい」という声が聞こえる。


 我々は窓際のテーブルの周りのソファに腰を下した。その間に俺は小野寺と呼ばれた男を観察した。日本人には珍しいタイプの彫りの深い中年美男子である。眉が太くて睫毛が長く、鼻梁が高い。「濃い」顔だ。昔のフランスの俳優で、確かシャルル・ボワイエというのがいたが、彼に少し似ている。着ているのは、ごく普通のジーパンにポロシャツだが、なかなかダンディな雰囲気だ。頭の毛はいわゆるロマンスグレーで、まだ薄くはなっていない。


「実は、ローゼンタールと戦うことにしたんだよ」


 静は世間話でもする調子で言った。


「ほほう。そりゃあ大変だ。勝算は、……無いんでしょうな?」


「まあね。でも、とにかく戦うのさ。で、あんたに、この若者たちが戦うための援助をして欲しいってわけ。具体的には、武器の調達。訓練場所の提供。通信手段の確保。移動手段の確保。その他、戦いと逃亡の手段のすべての援助」


「やれやれ。私の気楽な隠遁生活もお仕舞か。だが、正直退屈してもいましたから、気分がわくわくしないでもないですな。では、この若者たちにご紹介願えますか?」


 我々は、それぞれ自己紹介した。その間に、若い娘が我々にコーヒーを出した。大人しい感じの娘である。その娘は、我々の前に水のコップとコーヒーを置くと、すぐに引き下がった。


「ほかに、あと三人います」


自己紹介の後、武がつけ加えた。


「わかりました。では、今日から、この家と設備を、あなたたちの物として自由に使ってください。私は、あなたたちが戦うまでの間お手伝いして、それからは後方待機ということで、宜しいですかね?」


「ああ、そうお願いするよ。悪いね」


「いえいえ。静様のお頼みですからね」


その時、明良が「あのう」と二人に言った。小野寺と静は、明良に目を向けた。


「小野寺さんも月光族なんですか?」


「いいえ。私は、亜種ですよ。人よりは若くは見えますが、不老とはいきませんし、今、


七十歳ですから、後五十年も生きられるかどうか」


「この小野寺さんは、なかなかの技術者なんだよ。それとも科学者かな? 若い頃は学生運動などやっていて、武器にも詳しいから、きっとあんたたちのお役に立つよ。私は、そうしたドンパチにはうといからね」


「私よりも武器に詳しい人間がここにいますよ。後で紹介します」


「ここには何人の人がいるんですか?」


俺の質問に、小野寺は笑顔を向けて答えた。


「私以外には二人だけです。先ほどの娘も亜種で、コモリ・イズミと言います。それから、武器に詳しいと言ったのは、ホシ・ヒカルという若者で、奥の部屋にいます。ここには、いろいろと設備がありますから、そんなには退屈しないと思いますよ。しかし、月村様のお話では、これからあなた方は、大きな戦いをするのですから、外部との連絡は、慎重にお願いします。携帯電話とインターネットは、使わない方がいいでしょう。あれは、連中に完全に捕捉されていますから」


「固定電話はあるんですか?」


「いいえ、使ってません。この建物自体、倒産したある会社の持ち物で、登記簿からも抹殺されています。だから、今の所は、誰かがこの建物に不審を抱かない限り、この建物の存在を知る者はほとんどいないのです」


「携帯電話が使えないのは不便だな」


「大丈夫です。ホシ君が作った、我々専用の携帯電話がありますから。いや、トランシーバーと言うべきかな」


「ここにはどんな武器がありますか?」


と言ったのは明良であった。


「いろいろありますよ。しかし、拳銃、ライフルなどの小火器がほとんどで、世界を相手の戦いとなると、無理でしょうね。まあ、ホシ君に考えて貰いましょう。では、ホシ君に会いにいきましょうか」


 小野寺は立ち上がって、俺たちを案内した。家の奥に行くのかと思ったら、そうではなく、階段下の物置の床が、地下室への入り口になっていた。


 地下室は、家の地上部分よりも広大で、天井の高さも5メートルほどある。


「ここが射撃練習場。最長、300メートルまでの練習ができます。まあ、ライフルの狙撃練習なら、もう少し欲しいところですがね。それには、海外の施設を使って貰うか、北海道のオオツキさんの屋敷を借りるしかないですね」


「オオツキさん?」


「我々の長老の一人です。最年長者ですね」


俺は、前々から疑問に思っていたことを口に出した。


「月光族の人間は、どれくらいいるんですか?」


小野寺は、静と顔を見合わせた。


「まあ、あんたももう仲間だから話すけど、少ないよ。我々の女は、一生に二人か三名しか子供を生めない。いや、生まないんだよ。我々にとって、出産はひどく体の負担になるんでね。だから、一生、子供を生まない女もいる。私のようにね。そうだね、まあ、子供を一人生めば、寿命が50年縮まると思って貰えばいい」


「普通の人間との間に子供を作ることもできるんですね?」


小野寺は頷いた。


「それが、亜種だよ。でも、普通の人間との間の結婚が続くと、生まれる子の寿命はどんどん短くなる」


「純粋種は、どうせ滅びる運命なのさ。だからと言って、クローン技術やら何やらで、純粋種を保存することに意味があるとも思えない。普通の人間の寿命が短くても、それなりに充実して生きることはできるし、長いと逆に、人生を無駄に生きてしまうこともある。残念ながら、月光族の人間の中にも、無駄に長命だという人間もいる」


静の言葉には、痛みのようなものがあった。


 地下室の右半分が射撃練習場や室内体育館で、左半分は幾つかの個室になっていた。


「ここが研究室です」


小野寺が、その最初の個室のドアを開けた。


「お邪魔するよ」


 部屋は、かなりな大きさである。無数のテーブルがあり、そのそれそれに様々な器具が並んでいる。しかし、天井や壁の照明器具の大半は点灯していないために、それらがどんな物かははっきりしない。


「うちは、自家発電で電気はまかなっているんで、電力の無駄遣いはしないんですよ。とは言っても、太陽光発電ですから、コストはゼロですけどね」


小野寺が、俺の表情を読んで、説明した。


「ホシ君。ちょっといいかな」


小野寺が声をかけると、更に奥の部屋のドアが開いた。


「はい? 何ですか」


出てきたのは、まだ少年のような若者だった。せいぜい14,5歳くらいだろうか。もっとも、月光族の年齢はよくわからないが。


ぼさぼさの髪が額を覆い、眉まで隠しているので、顔つきが良くわからないが、可愛らしい顔つきのようだ。白衣を着ているが、小柄なためにそれが大きすぎる感じである。


「この人たちは、月光族の人たちだ。今度、ローゼンタールと戦うことにしたから、武器の援助をしてほしい」


「ローゼンタール? 何者ですか、そりゃあ」


小野寺と静は顔を見合わせた。


「やれやれ、最初から説明する必要がありそうだね」


「私たちも、ローゼンタールには詳しくないので、できれば、一緒に聞きたいですね」


武が静に言った。


「じゃあ、私のオーディオルームに行こう。ローゼンタールについてまとめたDVDがあるから、それを見てもらおうか」


 


第九章 ローゼンタール


 


 DVDを見終わって、俺はひどくショックを受けていた。他の若者たちもそうだったと思う。前に静に聞いた言葉から、彼らが世界の富のほとんどを握っていることも、多くの政府を操る力を持っていることも知ってはいたが、今一つ信じてはいなかったのである。だが、今見せられた映像は、その事実のすべてを裏書きしていた。アメリカやイギリスの政権交代は、すべてローゼンタールと、そのアメリカでの仲間のロックフェロー一族の指示によるものであった。彼らは、思いのままに政治を動かし、あらゆる戦争は彼らの指示で行われてきた。その戦争ごとに、彼らは富を拡大してきた。そして、もちろん、彼らの意思に従わない大統領は、彼らの指示で暗殺されてきたのである。しかも、ローゼンタールは、バチカンを始め、さまざまな宗教界の内部にも入り込み、モサドからCIA,MI6にいたるあらゆる情報機関を手足として使っている。このような存在に、どのように立ち向かうことができるだろうか。


「なるほど。改めて見ると、いやな連中ですね」


 小野寺が呟いた。


「彼らは、自分たち以外の人間を動物だと見なしているのだよ。だから、どのような悪事でも平気で行える。それが彼らを無敵の存在にしているんだ。普通の人間なら、他の人間を不幸にすることに耐え切れない。だが、彼らは他の人間を人間とは思っていない。言葉を話す動物にすぎないと思っている。例のプロトコルは偽書ではあるが、彼らの精神をありのままに描いている。つまり、自分たちのグループ以外の人間には嘘をついていいし、財産を奪っても、殺してもいい。いや、積極的にそうするべきだというのが、彼らの考えなんだ。平気で他人から奪い、他人を殺す。そんな人間には、通常の善良な人間は対抗できるはずがないんだよ」


 静は苦々しげに言った。


「そして今、彼らは我々にまで手を出そうとしている。金も権力も腐るほどある彼らに足りないのは長寿だけってわけさ。あいつらに、長寿の秘密まで渡したら、人類の不幸は永遠に続くことになるだろうね」


「ローゼンタールとロックフェローのほかにも、彼らの仲間は無数にいるんでしょう?」


明良が聞いた。


「まあ、世界的大富豪の中で、マスコミにあまり登場しない連中はほとんどそうだし、世界の王室や貴族の生き残りもだいたいがそうだね。それに、宗教関係者や、財団などもほとんどがそうだ。赤十字やノーベル財団のような一見、慈善事業風の団体が、一番、彼らの活動の隠れ蓑になっているんだ。財団は、税金逃れの手段でもあるけどね」


「つまり、俺たちは大金持ちを皆殺しにすれば、いいんだ」


ホシの言葉に、静は笑って言った。


「ちょっと短絡的だが、それ以外には見分けもつかない場合もあるね。何しろ、彼らは右翼も左翼も宗教信者も警察官も軍隊もすべて手足としているから、厄介さ」


「これで、方針は決まった。まず、世界の資産家をすべて洗い出す。国籍も人種も問わない。これは人種問題とは無関係に、この世界を支配する悪党どもとの戦いだからだ。そして、世界の大企業、大資本家、大株主、及び、それに協力する政府グループの人間を殺していけばいい。それも、頭からだ」


武が淡々とした口調で言った。


「まるで、昔の共産主義者みたいだな」


俺は、この方向が間違っていないか気になって、言った。


「違うね。共産主義者ってのも、実は、連中が作り出した隠れ蓑さ。共産主義者が敵と見なした実業家は、小者に過ぎない。資本家と労働者の対立を煽って、自分たちが攻撃されないようにしたんだ。本当の大物は、実業などしない。彼らは、産業界に寄生する寄生虫だ。彼らの本業は、金融業さ。何も作り出さず、金で金を生む金融業は、ところが、絶対に必要な存在と思われている。共産主義者たちが金融業を攻撃したことはない」


静が言った。


「だから、武の言ったことは、正しい。もちろん、彼らを攻撃するときに、彼らと見分けのつかない普通の金持ちや、彼らの身辺の人間も殺されるだろう。つまり、我々はけっして正義だとはされない。しかし、正義を守っていては、この戦いはできないのさ」


「とりあえず、世界の大資産家、大資本家のリストと、その所在地を作り、その行動スケジュールを探ることと、彼らを殺す手段の検討から始めよう。明良、その調査をお願いする。ホシさんには、彼らと戦う武器を、渡と一緒に検討し、作ってほしい」


武が言うと、明良とホシは頷いた。


「我々は、ここに引っ越すことにするが、しかし、『P5』からすぐに人がいなくなるのもまずい気がする。ただの勘だがな。冴湖と渡と純は、当面の仕事は無いから、二郎さんと一緒に、我々とは別に、ローゼンタールについて調べてもらいたいが、いいかな?」


武の言葉に、俺は頷いた。心の中で、「俺一人、両手に花だな」と思ったが、静がこちらを見たので、あわてて他の事を考えた。


「注意したいのは、彼らについて調べる際に、我々がそれを調べているという痕跡をできるだけ残さないことと、集めた記録はすぐに廃棄できるようにすることだ。CDでもフラッシュメモリーでもいいが、敵の手に渡る前に、即座に廃棄することを、冴湖と純に言っておいてくれ。では、俺たちは、静さんたちと、もう少し計画を煮詰めておくから、二郎さんだけ戻って、冴湖たちに事情を話して貰いたい」


「オッケー。じゃあ、そのまま、しばらくはあそこにいるんだな。俺の事務所と『P5』は、まだ拠点としていていいわけだ」


「ああ。それじゃあ、頼む」




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自分こそが自分の主治医

下記記事は一説として述べており、批判や圧力を避ける書き方だが、低血圧の恐ろしさは私が前に書いたばかりである。これは我が身で体験したことだから、これほど確かな話はない。そして、脳に血液が廻らない状態が続けば認知症になるというのも、理として可能性は高いのではないか。
もちろん、高血圧だと脳梗塞などになりやすいという可能性もあるだろう。まあ、自分で常に血圧を測り、自己コントロールするのが一番賢明だろう。医者は患者の症状を話としてしか聞いていないし、患者が正確に症状を伝える能力があるとも限らない。

で、降圧剤の中には危険な副作用を持つものや、副作用が未知のものもあるはずだ。私の場合だと、横紋筋融解症の経験(血尿や歩行困難などの症状)があり、それは厚生省通達でもその薬の副作用として明記されていたが、別の薬に変えた最近も下肢の筋肉の異常という症状が時々ある。降圧剤との関係は不明だが、これが単なる老化だとも思えないので、いずれ降圧剤を完全にやめるかもしれない。少なくとも、体重コントロールをしていれば、さほど血圧も上がらなくなるようである。まあ、年齢的に150から160くらいは正常値なのではないか。


(以下引用)


ガンマGTPの数値を下げたけりゃ「健康診断の〇日前から断酒」しなさい! 200だった数値はどこまで下がる!?〉から続く


何を基準に考えたらいいか、わからない代表的な数字といえるのが「血圧」だろう。どれくらい高かったらリスクなのか、たとえば低いと認知症のリスクが高まるという説もある。書籍『健診結果の読み方 気にしたほうがいい数値、気にしなくていい項目』より一部抜粋・再構成し、知っておくべき血圧の最新情報をお届けする。

血圧(BP)

身体計測の次は、たいてい血圧測定になります。


医学的には「血液(血流)が動脈の内壁に与える圧力」が血圧です。単位は「mmHg」、水銀柱を何ミリ押し上げる圧力かを表しています。


血液は、心臓(左心室)が収縮することによって、全身に送り届けられます。このときの血圧がもっとも高く「収縮期血圧」、一般的には「上の血圧」と呼ばれています。逆に心臓が拡張して肺からの血液を取り込むときが、血圧がもっとも低くなります。これが「拡張期血圧」ないし「下の血圧」です。


基準はどうなっているのでしょうか。テレビCMなどでは、上が130を超えると大問題であるかのように煽っていますが、そんなことはありません。日本人間ドック学会の基準は、表6のとおりです。

130ぐらいなら「ちょっと気を付けましょう」といったレベルです。臨床的には、上が140以上(かつ下が90以上)になると、高血圧と診断されます。ただし159までは「Ⅰ度高血圧」、つまり軽い高血圧とされています。それでもすぐに薬を始めようという医者もいますが、まずは食事や生活習慣の見直しから、という医者も大勢います。ちなみに上130〜139は「高値血圧」といって、まだ様子見(経過観察)の段階です。


昔はもっと基準があまく、1987年より前は「年齢+90〜100」と言われていました。たとえば50歳のひとなら、140〜150より低ければ問題なしでした。


厚生労働省(旧厚生省)は1987年に高血圧の基準を発表しましたが「上180以上」というものでした。ところがそれがどんどん下げられて、2009年に130となったのです(高血圧治療ガイドライン2009:日本高血圧学会)。しかしさすがに行き過ぎとの声が大きく、現在は前述のように少し緩和されています。


では実際の血圧の分布は、どうなっているのでしょうか。次ページの表7に令和2年度(2020年度)の、東京都における収縮期血圧(上の血圧)の分布と、上下の血圧の平均値を載せました。

加齢に伴って血圧が上がるのは自然な現象

注目すべき点は、男女とも年齢に伴って「要注意」や「異常」の割合が増大することです。たとえば40代前半の男性では、要注意は22.7パーセント(「130以上140未満」と「140以上160未満」の合計)ですが、70代前半では52.1パーセントに達しています。さらに異常(「160以上180未満」と「180以上」の合計)は、40代前半男性で1.4パーセントしかいませんが、70代前半になると6.4パーセントになっています。女性でも同じ傾向が見られます。


また平均値を見ても、上の血圧は年齢とともに上がり続けています。40代前半と70代前半を比べると、男性で10以上も上がっていますし、女性では20以上も上がっています。

この問題について、加齢に伴って血圧が上がるのは自然な現象であって、むしろ年齢に応じた基準を作るべきだという意見が、かなり以前から出ていました。しかし実際に基準を変更しようという動きはまったくなく、若者から老人まで同じ基準が使われ続けています。


基準値が180以上の時代には、高血圧患者はかなり少なめでした(全国で約180万人)。表7を見ても明らかなように、いまでも180を超えるひとは、男性70代前半で1パーセントですし、女性70代前半で0.9パーセントに過ぎません。


基準値を厳しくしたおかげで、患者は大幅に増えました。潜在的な患者も含めて、全国で3000万人とも4300万人とも言われています。ただし厚生労働省の「患者調査(令和2年)」によれば、定期的に医者を受診している患者数の推計は約1500万人。患者の2〜3人に1人しか受診していないことになります。


高血圧を放置してはいけないという話を、よく耳にします。それが医学的には正しいのでしょう。しかし4300万人が本当に医者に行きだしたら、病院はたちまち患者で溢れかえり、医療崩壊を起こしかねません。さもなければ、今の「3分診療」が「1分診療」になるか、どちらかです。


それよりもこれだけ多くの潜在患者が出るような基準値そのものが、どこか変なのではないでしょうか。

低血圧

血圧というと高血圧ばかりに注意が向けられていますが、低いほう、つまり「低血圧」はどうなっているのでしょう。


健診における低血圧の基準値はありません。日本高血圧学会の基準でも、上120未満、下80未満を満たせば、どれだけ低くても「正常血圧」と判定されてしまいます。とはいえ上が80以下になったら、お医者さんもかなり慌てると思います。心臓が止まりかけているかもしれないので。


表8は日本高血圧学会が決めた血圧の基準値です。「診察室血圧」は病院で計る血圧、「家庭血圧」は家で計る血圧です。大抵のひとは、病院では少し緊張するため、上の血圧が10〜20、ひとによっては30以上も高くなります。

そのため最近は、家庭血圧のほうが重視されるようになってきています。血圧が気になるひとは、家庭用血圧計を買って、家で毎日計って記録をつけておくべきです。それを医者に持っていって、相談すればいいでしょう。


それはともかく、この表のなかにも「低血圧」という言葉は一切出てきません。また日本「高血圧」学会は存在しますが、日本「低血圧」学会はありません。つまり日本では、低血圧は病気として扱われていないということです。


ただし世界保健機関(WHO)の定義があります。上100以下、下60以下の状態が継続しているものを、低血圧としています。日本でもこれに準じて診断している医師が大勢いるので、健診の最後に行われる「内科診察(医師による診察)」で「低血圧」と判断され、その旨が健診結果に記載されることがあります。


低血圧の主な症状は、めまい、立ちくらみ、朝起きられない、などです。しかし命にかかわることはなく、しかも動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞などのリスクが低いこともあって、「低血圧は治療の必要がない」とする医師が少なくありません。また治療といっても、食事や生活習慣の改善指導が中心になります。


低血圧に悩むひとがどのくらいいるかは、よく分かっていませんが、人口の約1〜2パーセントとする説があります。人数で言えば、125万人から250万人といったところです。また男性よりも女性のほうが多く、男女比は1:2とされています。


そんな低血圧が「認知症の発症と関係しているらしい」という研究が、最近増えてきています。中年期では高血圧が認知症のリスク因子とされており、血圧を下げることで、将来の認知症をある程度予防できると考えられています。ところが老年期になると、むしろ低血圧が認知症のリスクを高めるらしい、ということが分かり始めてきたのです。


低血圧のひとは、血液が全身に十分に回りにくいですし、とりわけ脳はからだの最上部にあるため、血液不足になりやすいのです。しかも高齢になると、ほとんどのひとが動脈硬化になります。血管が硬くなるため、血圧を上げなければ、ますます血流が減ってしまいます。

つまり低血圧が続くと、血の巡りが悪くなって、脳細胞が酸素不足や栄養不足になるリスクが上がってしまうのです。そのことが認知症の引き金になるらしい、と考えられています。実際、高血圧の高齢者に降圧剤(血圧を下げる薬)を処方したら、血圧が下がり過ぎて、かえって認知能力が低下した、という話をよく耳にします。


 

結局、血圧が低すぎるのもよくないということでしょう。年齢とともに血圧が上がるのは、むしろ自然な現象と捉えるべきです。中高年は130〜140ぐらいあったほうが、頭も体も健康に暮らせるような気がしますが、どうでしょうか。


図/書籍『健診結果の読み方 気にしたほうがいい数値、気にしなくていい項目』より


写真/shutterstock

健診結果の読み方 気にしたほうがいい数値、気にしなくていい項目(講談社+α新書)

永田宏
健診結果の読み方 気にしたほうがいい数値、気にしなくていい項目(講談社+α新書)© 集英社オンライン 提供

2024/3/20


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岸田無能論VS岸田悪党(妄想)論

「隠居爺の世迷言」記事の末尾で、前半では「ホッキ貝」を「北寄貝」と書くということを知った。まあ、北海道ではそう書くのか、隠居爺氏の思い込みかは知らないが、語源的に「北に寄る貝」というのは、ありそうで、ないような気がする。北海道の貝はすべて「北に寄る貝」だろうからだ。とは言っても、私はホッキ貝は食べたことも無いし、語源を調べたこともない。

これは、後で書くことのちょっとした布石であるwww まあ、大げさに言えば、だが。

と言うのは、私は隠居爺氏の大局観というか、政治鑑識眼、あるいは情報咀嚼能力の高さを高く評価しているが、岸田総理を「無能」呼ばわりするのは少し違うのではないか、と思うからである。とんでもない悪党である可能性は高いが、無能な人間が総理にまでなれるはずはないだろう。彼がやっていることは、悪事も含めて、すべて「分かっていて」やっているのだと私は思っている。そもそも、日本の総理に、米国の命令に従う以外のどんなことが可能だというのか。命令に反したら、家族の命も、自分の命も失う可能性があるのだから。
そして、長年外務大臣をやってきて英語には堪能なはずの岸田総理が英語スピーチで「言い間違い」をするはずもない、と私は思う。そこは、副島の判断通り、岸田のイタズラで、官僚高官を含む日本の政権運営陣営の、アメリカへの「サイン」であった可能性が高いのではないか。つまり、「いちおう、あなた方の言うことは全部受け入れるが、いざのいざと言う時は、我々は自分の命を捨てて中国とでも手を結ぶ覚悟はありますよ」というメッセージだった、という解釈である。
まあ、そうだったら面白いね、という話だ。
なお、「悪党」というものの質にもよるが、歴史上の偉大な政治家に無能な政治家はゼロだが、悪党で偉大な政治家はたくさんいる。まあ、無能も悪党も「国民にとってどれほど有益か有害か」だけが問題である。スターリンにしろヒトラーにしろ、政治においてはなぜか「悪党=有能」という事例も多いのである。何しろ、善人には、政敵を倒すための悪事ができない、という最大の弱点があるのだから、なかなか「勝ち抜く」ことは難しいわけだ。
そして岸田はここまではともかく「勝ち抜いて」きた。私は、そこで岸田に少し期待しているのである。まあ、最悪、既に一度滅んだ日本がもう一度滅びるだけではないかwww 

そして、岸田を馬鹿にするなら、自分がもし総理なら、アメリカの前に自分の体を張って(自分の家族も道連れに)殺される覚悟はあるか、と問いたい。私のような無名ブロガーがこうしたアメリカ批判のブログを書くだけでも、なかなか覚悟は要るのである。いや、岸田の「日本国民貧困化政治」は徹底的に批判するべきだと私も思うが、アメリカ追随主義批判は「自分は安全な立場からの批判」で、聞き苦しく思うわけだ。

(以下引用)



 話はいきなり政治の話に飛ぶけれども、岸田総理は怖いね。その怖さは、狂人の怖さというか、無能力者の恐ろしさというか、そのようなたぐい。仮に、総理大臣が自衛隊に「尖閣諸島周辺の中国船を撃沈せよ」と命令したら、それって自衛隊は拒否できないよね。国会審議も何も必要ないよね。

 そんなことを私が想像するのも、岸田総理が「平和が大切」とは言わないためだろうと思う。どう見ても、日本をいつでも戦争のできる国にするのが岸田総理の目標に思える。アメリカに指示されるがままで、そこが無能者の無能者たるゆえん。

 今回のアメリカ議会での演説でも、「核兵器のない世界の実現」とは言ったけれども、平和な世界の実現とは言わなかった。それどころか「アメリカ、NATO、ウクライナはお友達」「中国、ロシアは敵」ということを強調していた。まあ、バイデン大統領の奴隷になっていることが嬉しくてたまらない総理大臣だから、そうなるのも分からないでもないけれど、一般国民としては恐ろしくて仕方がない。

 アメリカは日本がどうなろうが知ったこっちゃないからね。日本が全滅しようが痛くも痒くもない。それどころか、日本が、そしてトヨタがなくなったらアメリカ製の車が売れると喜ぶくらいのものだろう。

 そんなアメリカが日本に対して、中国を攻撃せよとこっそり命令したら、岸田総理はどうするだろうか。断れると思いますか? 断れるも何も、そもそも事態を把握していない人ではないかと思う。「めくら蛇に怖じず」の世界。だから何でも言われるがまま。

 その点、もしかしたら韓国は賢いのではないかと私は思う。4月10日に行われた総選挙で、韓国与党が敗北し、野党の「共に民主党」大勝したという。「共に民主党」といえば、以前反日的な姿勢をあらわにした文在寅大統領の属していた政党になる。

 これに関して日本では、「親日政権が支持されず、反日勢力が台頭した」と見る向きもあるようだけれど、実はそうではなくて、支持されなかったのは親米政権であり、支持されたのは親中勢力ではないかと私は思う。韓国にとっては日本などどうでもいいはずだ。どうせアメリカの腰巾着なのだから。

 そして、この韓国の外交姿勢というか、世界観というのは正しい可能性があると私は思っている。どう考えてみても、アメリカやEUは落ち目の帝国であり、今やBRICSが昇竜の勢いなのだから。大国が間近にある弱い国の韓国としては、強い方に付くのが当然であり、自然でもある。納得できる選択だ。


 


 そういえば、今年1月だったかな、台湾で総選挙が行われて、今回の韓国と同じ結果になっている。つまり、国のトップは親米だけれども、多数を占める野党は親中。韓国も台湾も、ちゃんと分かっているのですよ。アメリカに近寄り過ぎては危険であることを。1人日本だけが外交音痴の国で、あらぬ方向に向けて走っている。音痴に音痴と指摘したところでそう簡単には治らないから、行き着く先が不安になる。



 日本はどっちに転んでも困難はある。日本は大国ではないけれども、そして、大国になるだけの実力もないけれど、かといって小国でもない。韓国なら中国に接近しても見逃してくれるけれども、日本となるとアメリカも必死になって止めるかもしれない。アメリカは世界一の " 野蛮人の国 " だけに恐ろしいよね。

 だからといって、岸田総理のように擦り寄っていけば問題が解決するというものではない。斜陽の帝国アメリカは、今や日本を食い物にすることで延命しようと考えているからね。岸田総理は個人的に「どうぞ好きなだけ食べてください」と我が身を差し出しているけれども、国民としてはそれではつら過ぎる。


 


 どうせ食われて死ぬや生きるやの思いをするのであるならば、私なら未来のあるBRICSに近づきたいと思ってしまうけれどねえ。それにしても、いつから日本は岸田総理の所有物になってしまったのだろう。彼は平気で娘を売り飛ばす父親のようなものだな。単に " いいふりこき " をするためだけに。

 そういえば、岸田総理はアメリカでの記者会見の席上で、「同盟国たる中国」とバイデンを目の前にして堂々と言ってのけた。もちろん単なるケアレスミスとして処理されたけれども、実はそれがケアレスミスではなく、あえてイヤミとして、あるいは本音として、ケアレスミスを装って言ったのであれば、岸田総理も頼りになる総理大臣だけれどね。その可能性は0%だろうけれど。

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「聖痕」4



 


第六章 競馬


 


 ヒムロ・サエコとタイガ・ワタルが俺の探偵事務所を訪ねてきたのは、2日後だった。


「あんたに、仕事を依頼したい」


 タイガ・ワタルはそう切り出した。事務所に姿を現した彼は、俺の推測どおり、身長が190ほどあり、幅も厚みも通常人の2倍近くある。ラグビーかアメフトの選手のような、あるいは重戦車のような体格だった。


「どういう仕事だ?」


「ローゼンタールの日本での活動拠点を知りたい。できれば、そのメンバーの情報すべても」


「商売のことなら、おそらく、一番の中心はゴルドン・サックス証券だな」


「そうじゃない。裏の活動の拠点だ」


「難しい仕事だな」


「それに、もちろん、危険な仕事だ。日本政府の高官でも知らないレベルの情報だろうからな」


「最上層部なら知っているだろうが、俺にはもちろん、そんなルートは無い。だが、あの婆さんなら、何かのルートがあるかもしれないな」


「婆さん?」


「月村静さ。何せ、おん年175歳だ」


そういう俺が、この前は彼女とデート気分で浮き浮きしていたことは内緒だ。


「おっと、サエコさんとやら。俺の心を読んじゃいけないよ」


サエコは軽く肩をすくめた。


「だけど、俺は、こちらからは動かない方がいいと思うよ。もしも、あちらがまだこちらの存在に気付いていない場合、こちらがあれこれ動くことで、存在を知られることになるからな」


「ふむ。なるほど、そうかもしれないな」


タイガ・ワタルは頷いた。俺はサエコに目をやって言った。


「君達には、時間は無限に近いほどある。俺なら、気楽に、毎日を楽しく生きるね。ローゼンタールのことは、相手が現れてから考えればいい」


「でも、相手と接触しなければ、相手を調べてもいいでしょう?」


「まあね。じゃあ、その依頼は引き受けよう。ところで、例の金儲けはどんな感じで進めている? 今のところ、あんたのテレパシー以外には、特殊な能力が無いなら、金を作るのも簡単じゃないだろう。これも月村婆さんに頼むか?」


「いや、それはしたくない。株か、ギャンブルをやろうと思うんだが、俺たちはそれも良くわからないんだ。あんたに教えてもらいたい」


「まあ、手っ取り早いのは競馬だろうな。あんたのテレパシーは、どのくらいの距離で心が読めるんだい?」


「普通の人間のひそひそ声を聞くくらいよ。せいぜい3メートルまでね」


「それじゃあ、パドックで騎手の声を聞くのも難しいかな。それともできるかな。あんたの能力があれば、もしかしたら金になるかもしれない。今日は土曜日だし、俺と一緒に競馬場にでも行ってみるか」


二人は顔を見合わせた。


「そうしよう。だが、今、金は100万円しか持っていないが」


「いいさ。今日は、別にこれといった確実な目当ては無いんだから。俺も少し、金を下ろして試してみよう」


 


 たしか今は、府中開催だったかな、と考えて、俺は二人を連れて府中競馬場に行くことにした。馬券を買うだけなら新宿や渋谷のウィンズでもできるが、サエコのテレパシー(本当は、双方向的なものではないようだから、別の名称が適切なのだろうが)を利用するには、競馬場まで行く必要があるわけだ。


 俺たちは、新宿から中央線で府中に向かった。


 府中駅前の銀行で俺は金を100万円下した。


 残念ながら、俺たちは特別観戦席に入れる身分ではないので、取りあえずは、パドックで馬を眺め、騎手の心を読むことにした。タイガ・ワタルを投票窓口の傍に待機させ、携帯電話で連絡してこちらの言う数字で購入させる手はずだ。もちろん、その前に勝ち馬投票券を買うマークシートの記入の仕方をレクチュアしたが。


 俺とサエコはまず第五レースのパドックを眺めた。競馬などやるのは久しぶりだが、やはり心が浮き浮きする。俺が競馬新聞で検討している間に、サエコはパドックを周回している馬の口取りの心を読む。やがて、騎手が騎乗する。


「あ、あの人」


「ん、誰?」


「8番の馬に乗った人、今日のこのレースは、必ず勝てると思っているわ」


「それは、馬の力かな、それとも、レースが八百長ってこと?」


「わからない。でも、相当に自信を持っている。あっ。八百長みたい」


「ふむ。ほかに、勝つ自信を持っているのは?」


「2番の馬の人と、7番の馬の人」


 俺は競馬新聞で第五レースの柱を見た。8番はほとんど無印で、黒三角が二つあるだけだ。そして、このレースの大本命が7番で、対抗が2番だ。7と8は同枠である。これは、大穴のパターンだ。


「わかった」


 俺は携帯電話でタイガ・ワタルに三連単の「8-2-7」を10万円、「8-7-2」を5万円、「8-2」の連勝を10万円、「8-7」の連勝を5万円、8の単勝を20万円、複勝を50万円購入させた。


 競馬初心者のタイガ・ワタルが、この指示にきちんと従えるかどうか不安ではあったが、「天与はこれを取らざれば、返りてその咎を受く」という言葉もある。いま、来たばかりのパドックで八百長らしい情報を手に入れたのも天与だろう。


 俺とサエコは投票窓口に向かった。ちょうど、タイガ・ワタルのでっかい体が窓口に見えた。記入されたマークシートを出して、勝ち馬投票券、つまり馬券に代えるだけだから、彼が百万円という大金をこの一レースに投入したことは周囲の人間に知られることはない。もっとも、8番の馬の単勝オッズが9.6からいきなり9.2まで下がってしまったのだが。


 さて、どうなるか。俺たちはわくわくしながら、レースの開始を待った。


 いきなり、8番の馬がハナを切った。一角で先頭に立ち、そのままゆったりと逃げていく。4,5馬身離れて他の馬のグループが続く。2は中団、7は最後方のようだ。やがて4角を回り、後ろの馬団が密集してくる。しかし、8のリードはそのままだ。府中の長いバックストレッチを、逃げる8番を他の馬が追う。


「そのままっ!」


 俺は、心の中で大声を上げた。


 8番が先頭でゴールインしたが、2番手以下に何が入ったのかは分からない。それまで見届ける余裕がなかったのである。だが、掲示板を見ると、上から「8-2-7」となっていた。


 競馬新聞の予想オッズでは、三連単の「8-2-7」は7800円、つまり78倍だ。直前で70倍くらいに下がったとしても、10万円の投資は700万円にはなったわけである。それ以外の当たり分を合わせると、おそらくこのレースで1500万くらいにはなったのではないだろうか。


 俺たちは、顔を見合わせた。


「勝ったみたいね?」


「ああ。さあ、次に行こう。その前に、俺はいくらか換金しておくから、サエコはパドックに行っておいてくれ」


 俺はワタルの手持ちの馬券の中から、8の複勝だけを抜いて、それを払い戻し機に入れた。帰って来たのは160万円だった。50万円の3.2倍である。俺はそれをワタルに渡した。


 その後、サエコのテレパシーに引っ掛かる目ぼしい情報は無く、メインレースも本命―対抗で固く収まった。俺は気晴らしに自分の好みで馬券を1,2万円ほど購入したが、もちろん、すってしまった。


「あっ」


とサエコが小さく声を上げた。


「まただわ。今度は、11番と15番。特に11番ね」


 最終レースである。俺は新聞を見た。それほどガチガチの本命はいないが、11番と15番はどちらも大きな印はついていない。これが来れば、大穴だ。


「ほかには?」


「よくわからないけど、5番の騎手の乗っている馬は、いい馬みたいね。何で、自分が勝たないのか、不満に思っているわ」


5番は、なるほど一番の実力馬だ。ということは、この馬は今回は連にも絡まないということか。


「1番と4番の騎手は、強い自信を持っているわ。『まともなら、勝ち負けだ』と考えている。どういうこと?」


「今回は、まともな勝負じゃない、ということだろう」


 俺は、携帯でワタルに「11-15」の連勝複式を50万円と、11番の単勝20万円、複勝40万円、15番の単勝10万円、複勝40万円を購入するように言った。


 窓口に行くと、空いていてまだ購入する余裕があったので、俺は自分の金で「11-15-1」と「11-15-4」の三連単を30万円ずつ買った。


 12レースは、1着が11番、2着が15番、3着が1番だった。15番の単勝と「11-15-4」の三連単以外は、皆、当ったわけである。オッズは、11の単勝が9倍、複勝が4倍、15の複勝が5倍、11-15の連勝が120倍、11-15-1の三連単が250倍だった。つまり、俺の買った30万円は7500万円になったわけだ。


 俺たちは、金額の少ない複勝馬券だけを換金したが、それでも700万円になっていた。残りは、他人に怪しまれないように後日換金することにして、俺たちはその場を退散した。


 


第七章 世界との戦い


 


 タイガ・ワタルたちの前では「月村婆さん」などと言っていたが、俺はもちろん、月村静が好きなのである。少なくとも、外貌だけから言えば、俺がこれまで見たどのアイドルスターよりも美しいし、スタイルもいい。まあ、確かに、その目の表情が、深い淵のようで、そこは少々不気味だが、笑顔になれば、そんなことは忘れる。


 俺は、新宿駅西口から歩いて5分のところにあるカーライル・ホテルに月村静を訪ねた。その時同行したのが、ヒュウガ・タケルとヒカゲ・アキラの二人である。彼らは、この前の競馬で世話になった礼を俺に言いにきたので、話のついでに、三人で月村静を訪ねることにしたのである。


 これも話のついでに、俺はP5のメンバーの名前を確認しておいたが、漢字で書くと、「日向武」「日影明良」「大河渡」「氷室冴湖」「炎純」らしい。まあ名前などいくらでも偽名は作れるから、符牒の役割があればそれでいいのだが。


 夜には出歩かないだろうという俺の予測通り、静は部屋にいた。(ついでだが、例のオーラ、つまり、聖痕は、明るいところではほとんど分からないので、明るい場所にいる限りは、問題無いのである。だから、武と明良の二人が夜に行動するのも、陰に行かないように注意すれば問題はない。)


「やっと訪ねてきたね」


 月村静は俺たち三人を見て、部屋の中に通した。


「ローゼンタールについて、もっと詳しく聞きたい」


 ソファに腰掛けながら、武がぼそっと言った。


「私に聞くまでもないわ。市販の本に、ほとんど出ている。いわゆる『陰謀論』の本ね。ただ、問題は、それがほとんど本当だということ。現在、世界の金は彼らが発行しているし、世界の資源も彼らが独占している。世界のほとんどの国の政府は彼らが支配し、大統領や首相は彼らが決定している。ついでに言えば、様々な宗教もね。それだけよ。その事実が、誇大妄想狂の書いたいい加減な擬似『陰謀論』と混ぜ合わされて見えなくなっているだけ。まともな人間は、『陰謀論』など相手にしないという風潮が、彼らを助けているのよ。もちろん、その風潮も、彼らがマスコミを使って作ったものよ」


「では、俺たちが彼らに対抗する手段は無いんじゃないか?」


「さあね。しかし、彼らの実験動物になるのはいやでしょう。それに、彼らが世界中の金と権力を手にしても、寿命だけは手に入れられないというのは、私のようなへそ曲がりには痛快だわ。そのためだけでも、私なら戦うわね」


「日本での彼らの組織はどうなってますか?」


「日本政府そのものを彼らは自由に操れるのだから、組織云々はあまり意味が無いけど、日本での最高権力者はアルフレッド・モーガンという男ね。もう七十近い爺さんよ。その片腕が、カール・モーガン、アルフレッドの息子ね。こちらはまだ五十にはなっていないはず。でも、そのレベルの人間にあんたたちが会うのはちょっと無理かもしれないね。それに、どういう形で彼らと戦うの?」


「テロしか無いでしょう。つまり、ローゼンタール一族を皆殺しにすることです」


「悪くはない考えだけど、中々難しいでしょうね。さっきも言ったように、彼らは世界の政府のほとんどを動かせるのよ」


「彼らの考えを変えさせるよりは、その方がやさしいでしょう。その『陰謀論』が正しいなら、人類の近現代史すべてを支配してきた一族が、自分のやりたいことをあきらめるとは思えない。敵に対する一番安全な対策は、敵を殺すことです。白人が、『良いインデァンとは、死んだインディアンだけだ』と言ったようにね」


 月村静は、武の言葉にしばらく考え込んだ。武のこの考えは、おそらく彼女も考えてきたものだろう。


「まあ、私も、人を殺したことも何度もある人間だし、人を殺すことを悪いとも思わない。自分の身が危いときに相手を殺すのは、当然の権利さね。問題は、やるならうまくやるって事だね。これは月光族対ローゼンタール一族の全面戦争だよ。そして、あんたたち5人がその中心になるんだよ。その覚悟はあるかい? 逃げていれば、長生きだけはできるんだよ?」


「一度、仲間と相談してみますが、俺は戦いたいな。自分が、権力のお目こぼしで生きているというのは不愉快だ」


「俺もそうだ。まあ、しかし、他のメンバーはどうかわからないからな」


 明良が武に同意した。


「5人ってのは、俺は入ってないってこと?」


 俺は静に聞いた。


「まあね。あんたのような一般人に迷惑を掛けるわけにはいかないからね。私たちのことを黙っていてくれればそれでいいさ」


「いやだね。俺もあんたたちと戦いたい。何せ、世界全体を相手に戦うんだろう? 味方は増やしていかないと」


「あんたが良ければ、私は文句は無いよ。むしろ、嬉しいけどね」


「とりあえず、こちらの強みは、こちらが弱小なだけに、相手に存在をはっきりと知られる前に、準備ができるということだな」


明良が言った。


「やはり、まずは金だな。それで、武器を買う」


「ただの武器では意味が無いよ。普通の戦争をするんじゃないからね。相手の懐に飛び込んで、相手を倒していく、忍者的な武器が必要なんだ。そして、こちらの人数は少ないんだから、絶対にこちらはやられちゃいけない。もしかしたら、あんたたちの役に立つ武器を手に入れられるかもしれないから、明日にでも一緒に来るかい?」


 俺たちは頷いた。






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「人間→ロボット」への置換はここまで来ている

「大摩邇」所載のヴァーノン・コールマン医師の記事の一節である。
非常に示唆的な情報だと思う。前者は地球人口削減方針がここまで来ているということ、後者は、人工知能(ロボット)は、外科手術すら可能な段階に至っているということ。

(以下引用)


19. 5060年前、患者が入院すると、常駐の往診医が問診し、徹底的に診察した。どの患者も45分から60分の精密検査を受けた。これは患者にとっても良かったし、若い医師が腕を磨くのにも役立った。最近では、入院してきた患者を若い看護師が診察し、カルテにDo Not Resuscitate(蘇生させない)の告知をするよう促す。DNR告知は、患者が何と言おうとカルテに記載される。



20. 
医療におけるコンピューターやロボットの使用は新しいものだという誤った思い込みがある。そうではない。1974年、リーズで働く医師とコンピューター科学者のチームが、コンピューターが診断において医師よりはるかに優れていることを示した。一連の552人の患者を対象にした実験では、上級臨床医の診断精度が81.2%であったのに対し、コンピューターの診断精度は91.5%であった。その後、17,000人の患者と250人の医師を対象とした試験で、重度の腹痛に苦しむ患者の診断において、コンピューターがほとんどの医師よりもはるかに優れていることが確認された。最近では、複雑な外科手術にコンピューターが採用されている。アメリカでは、ニューヨークのIBMトーマス・J・ワトソン研究所のラス・テイラー[Russ Taylor]とカリフォルニア大学デービス校のハワード・ポール[Howard Paul]によって、股関節置換手術を補助するロボットが考案されている。フランスでは、グルノーブル大学のスティーブン[Stephen]が、脳手術ができるロボットの開発に取り組んでいる。イギリスでは、インペリアル・カレッジのブライアン・デイヴィス[Brian Davies]が泌尿器科研究所と共同で、前立腺手術ができるロボットの開発に取り組んでいる。ドイツでは、アーヘン大学のラルフ・モッジス[Ralph Mosges]が、耳鼻咽喉科の手術にロボットを使うことを計画している。コンピューターやロボットには多くの利点がある。それらは疲れない。スピーディーで予測可能。偏見に左右されない。何よりも重要なのは、製薬業界の媚薬や賄賂の影響を受けにくいということだろう。

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低血圧症への対処

低血圧の症状

低血圧は頭痛、めまい、食欲が落ちるなど日常生活に様々な影響を及ぼす場合があります。
低血圧により引き起こされる主な症状について解説します。

食欲が落ちる

低血圧により、食欲の低下が起こることがあります。
特に朝食を抜く傾向がある方は注意が必要です。
栄養バランスの良い食事を摂ることで、低血圧の症状を和らげることができるため食生活を改善しましょう。
 

身体がだるい

身体のだるさや体力不足、慢性的な疲労感などは、低血圧でよく見られる症状です。
気温や季節の変化によっても悪化する場合があります。
十分な休養を取ることや、適度な運動を行うことで症状を和らげることが可能です。
 

頭痛、めまいや立ちくらみ

低血圧が原因で脳への血流が不足すると、頭痛やめまい、立ちくらみが起きる場合があります。
特に急に立ち上がった際に起こりやすいです。
急な立ち上がりは、下半身の静脈に大量の血液が集まることで心臓に戻る血液の量が減少し、血圧が低下する可能性があります。
立ち上がる際には、注意してゆっくり立ち上がりましょう。


 
 

低血圧を放置するリスク

低血圧は見逃されることが多い場合がありますが、実際には様々な健康リスクをもたらす恐れがあります。
こちらでは低血圧を放置するリスクについて解説します。

全身に血液が供給されなくなる

低血圧状態が続くと、体全体の組織や臓器に十分な血液が届かなくなる恐れがあります。
特に影響を受けやすいのは脳です。
脳への血流が不足すると、めまいやふらつき、集中力の低下、頭痛などの症状が現れる場合があります。
 
低血圧が重症化し、脳への血液供給が極端に減少すると、失神や意識不明の重体へ陥る可能性もあるため注意が必要です。
 

ショック状態に陥る

血圧が急激に低下すると、ショック状態に陥る危険性が高まります。
ショックは全身に血液が行き渡らなくなる重大な状態で、多臓器不全を引き起こし死に至るケースもあります。
低血圧によるショック状態は、特に外傷や大量出血、重度の感染症などが引き金となる場合が危険です。
 
低血圧が続くと、その他にも動悸や息切れ、手足の冷えなどの症状が現れます。
日常生活の質を低下させるだけでなく、長期的には心臓や腎臓などの重要な器官に負担をかけるため、低血圧は放置しないようにしましょう。


 
 

血圧が低くてしんどい時の対処法

低血圧で困っている方には、日常生活で簡単に取り入れられる対処法があります。

水分を十分補給する

低血圧の症状を和らげるためには、十分な水分補給が有効です。
成人は1日に約1.2リットル程度の水分摂取が目安です。
水分補給することで、血液の量を増やし血圧を一定に保つ助けとなります。
 

食生活を改善する

低血圧の改善には、栄養バランスの取れた食事が不可欠です。
具体的には次の栄養素をバランス良く摂りましょう。
 

  • ● 糖質
  • ● タンパク質
  • ● 脂質
  • ● ビタミン
  • ● ミネラル

 
これらの栄養素をバランス良く摂取し血圧の安定につなげましょう。
特に筋肉や血液を作るタンパク質と、血液の流れを助けるビタミンEの摂取が重要です。
 
また、塩分も適度に摂取しましょう。
塩分の材料であるナトリウムは血圧を上げる働きがあります。
ただし、塩分の摂りすぎは逆に高血圧のリスクを高めるため注意が必要です。
 

運動を行う

運動は血液の巡りを良くする上で効果的です。
ウォーキングやストレッチ、水中ウォーキングなどは下半身を効果的に使うため、血流がよくなります。
急な動きをしないよう無理のない範囲で継続していきましょう。
 

食後にカフェインを摂る

カフェインは交感神経を刺激し心臓の動きを活性化させることで、血圧を上げる効果があります。
また、カフェインには毛細血管を拡張させる作用もあるため、血液の流れも良くなります。
食後に血圧が下がることの多い方は、コーヒーや紅茶などでカフェインを摂ることがおすすめです。




 
 

まとめ

今回は低血圧の原因や症状、そして「しんどい」と感じた時に取り組める4つの対策について解説しました。
 
低血圧は高血圧と同様、放置すると危険な症状です。
血圧が低く、身体の不調が続く場合には必要に応じて医師へ相談しましょう。



 

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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