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味わうは「ワ行五段活用」で、語幹は「味わ」

この程度の口語文法は中学校で習うのだが、国語の文法というのは子供にとってはまったく興味を惹かないものだろうから、右の耳から左の耳へと通り抜けていくことになる。
で、世間では「味あわせる」という馬鹿表現がまかりとおるのである。「味合わせる」に至っては、お料理の話かと思ってしまう。






「味あわせる?」 「味わわせる?」

公開:2016年6月1日


Q
「味あわせる」「味わわせる」のどちらが正しいのでしょうか。
A
文法的には「味わわせる」が正しいことになります。

<解説>


現代語の「味わう」は、ワ行五段活用の動詞です。

味わワ(ない)、味わイ(ます)、味わウ味わエ(ば)、味わオ(う)


このように、「語幹」が「味わ」で、「活用語尾」が「ワ、イ、ウ、エ、オ」となります。「語幹」というのは、「変化しない部分」です。「~せる」が下に連なるときにも、語幹を保存して「味わわせる」となります。


ただし、「味あわせる」という形も、実際にはよく使われています。ウェブ上でおこなったアンケートでは、年代差や男女差はあるものの、全体としては「味わわせる」よりも「味あわせる」のほうを支持する意見のほうが、やや多くなっていました。また次のように、歌詞にも使われています。

〈カシスより赤く染まって酔いしれる ブレンドされた時はぜいたくに
ゆっくり味あわせてね〉

【「Hungry like the CHICKEN」歌・作詞:木村カエラ】


さらには、「合う」という漢字を当てて「味合わせる」と書いた例も、少なからず見られます。


この「味あわせる」は、本来変化しない部分である語幹の「味わ」の「わ」を「あ」に変えてしまっているという理由で、文法的には正しくないとされています。「味あわせる」という形が出てくる背景には、一つには伝統形「味わわせる」に含まれている「~わわ~」という「同音の連続」を避けたいという意識があります。その証拠に、「味あわせる」「味あわない」という形では比較的多く用いられていますが、それに比べると「味あいます」「味あう」「味あえば」「味あおう」といったものは、それほど使われていないようです。語幹部分を保存した伝統形「味わいます」「味わう」「味わえば」「味わおう」のままでも、「~わわ~」という同音の連続は生じていないからです(田野村忠温(2011)「大規模コーパスとしてのインターネット」)。


同じように「~わわ~」という「同音の連続」が生じているものとして、「祝わない」「祝わせる」などもありますが、これについては「いあわない」「いあわせる」という「同音連続回避形」は、あまり見られないようです。そういえば、自分の誕生日を積極的に祝わなくなってから(そして、祝われなくなってから)、もうずいぶんたちました。負けるな、俺。


(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2016年2月~3月実施、744人回答)





メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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