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「白鯨」#1

第1章 海へ

長い人生の中には、どうしようもない憂鬱に捉えられる時期がある。たいていの人はそういう時、そんな憂鬱を黙って飲み込んだり、あるいはいっそ自分の頭をピストルで撃ち抜いたりするものだが、私はそんな時、海に行く。
私の名前はイシュマエル。仕事は、今のところは自由人、つまり浮浪者だ。学校を出てから、小学校の教師をはじめ、さまざまな仕事を転々としてきたが、中でも大西洋を航海する汽船の乗組員を何回かやり、その仕事は気に入っていた。私は海が好きなのだ。
定期的に訪れる憂鬱症の発作から逃れるため、私はまたしても海に向かった。しかし、今度は商船ではなく、捕鯨船に乗り込もうと思ってのことだった。この気軽な思いつきが、後に私を死ぬほどの目に遭わせることになるなどとは、その時は思いもしなかったのだが。



第2章 漁村の宿

私がナンタケットに着いたのは夜だった。捕鯨船の集まる一大基地であるナンタケットは、見たところ、只のうら寂しい漁村で、潮の匂いのする大通りには、数軒の宿屋以外には明かりの漏れている家はほとんどなかった。
私は一軒の宿屋に入って、夕食と一晩の宿泊を乞うた。主人はずるそうな顔で、「同宿で良ければ部屋はある」と言った。暖かいベッドに寝られさえすれば、私に文句はない。
ハマグリと、得体の知れぬ魚の切り身の入ったスープで腹をふくらまし、私は満足した気持ちで先にベッドに入った。同宿者が帰ってくるのを待って、寝ずにいるわけにもいかないからだ。
私がベッドに入ってしばらくして、階段を上る足音がし、部屋のドアが開いて、暗い室内に外の明かりが入ってきた。




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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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