新年のご馳走
新年の食卓は単に美味しいものだけでなく、長い休日分をまとめて用意するため量も半端ではない。主な料理を挙げていこう。まず冷たい前菜としては伝統的な「オリビエ」サラダと「毛皮を着たニシン」が欠かせない。自家製ピクルスと酢漬けキャベツも食卓に必須だ。現代の流行としては低カロリーのギリシャサラダやシーザーサラダ、エビのカクテルサラダがある。イクラはオープンサンドとしてパンの上に載せるよりも、アボガドやゆで卵の上に載せる人が多いようだ。煮凝りはおそらく数百年もロシア人の食卓を飾り続けてきたが、すべての主婦がこの料理に6-8時間を捻出できるわけではない。本物のロシアの煮凝りを作るにはこれくらいの時間を要するのだ。温かい前菜のチョイスは各人のお好みで。キノコやマッシュルームホワイトソース煮を詰めたジャガイモ、チーズとハムを詰めてオーブンで焼いたナスやトマト、あるいはベーコンに重ねて焼いたチキンフィレなど。
メインディッシュはほとんどの場合、鶏になるだろう。「アントノフカ」という小ぶりのリンゴかソバの実カーシャを詰めたガチョウ、七面鳥あるいはチキングリル。あるいはニンニクを詰めた羊の足を好む人もいるだろう。また地中海料理のファンは海老のチリソース添えを選ぶかもしれない。この料理にロシア風味を加えるとすれば、チリソースに天然ハチミツを加える必要がある。
オリビエ
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新年の食卓では通常のパンに代わり、色々な具の入ったパイやピロシキが並べられる。形やサイズも様々、中身もキャベツ、ジャガイモ、ネギ、肉、魚と様々だ。甘いペストリーに関しては、1位はアップルパイだろう。ただしリンゴの代わりにどのようなフルーツでもベリーで焼いてもいい。市販のケーキももちろん選択肢のひとつだ。ケーキを選ぶ際には家族の大半の好みが考慮される。様々な種類のチョコ菓子、シュガーブレッドやジンジャーブレッド、クッキー。これらも祝祭のテーブルを彩るのに欠かせない。
特別な役割を果たすのが果物だ。ロシアの新年は冬の祭りであり、窓の向こうは極寒や吹雪かもしれない。しかし新年の食卓のみかんは小さな太陽であり、遠く離れた国の比類なき香りが新年の祭りに特別な魅力を与えている。みかんの隣にはオレンジ、バナナ、キウイ、梨、りんごが並ぶ。より一層祝祭の雰囲気を盛り上げるのはパイナップルだ。子どもたちに受けがいいフルーツサラダを作るのもアリだろう。
願い事を
新年を迎える5分前、ロシア国民に向けて大統領が祝福のメッセージを送る。この伝統は1976年にレオニード・ブレジネフ(ソ連共産党書記長)が始めたものだ。メッセージが終わるとクレムリンのスパスカヤ塔の鐘が鳴り始める。この瞬間、シャンパンがグラスに注がれ、乾杯でグラスを鳴らし、お互いを祝福する。ちなみに去り行く年の最後の数秒にした願い事は来る年に必ず叶うと言われている。そのためには鐘が鳴っている間に願い事を紙に書き、それを燃やし、灰をシャンパングラスに入れ、鐘が鳴り終わるまでに飲み干さなければならなない。
祝いの楽しみは屋外でも続けられることが多い。ロシア人は雪だるまを作ったり、花火を打ち上げる。ソリ遊びをしたり、凍った坂を滑ることもある。冬の遊びはとてもロシア的だ。