「ちきゅう座」というサイトから(直接には「阿修羅」投稿で知った)転載。
今後の日本の生活状況分析部分が、正しい見通しであるように思われるので、備忘のため掲載しておく。
(以下引用)
基軸通貨国の特権乱用による世界的なエネルギー、農産物価格上昇が日本に波及するとき
2011年 2月 16日時代をみる エネルギー・農産物価格上昇基軸通貨国特権浅川 修史
<浅川 修史(あさかわしゅうし):在野研究者>
世界的にエネルギー、穀物、金属価格が上昇している。その原因として中国、ロシア、ブラジルなど新興国での需要増加が指摘されるが、根っこの原因は米国の金融政策=QE2によるドルの減価(あるいは将来の予想)である。
砂糖、コーヒー豆、大豆、とうもろこしなど農産物国際相場の上昇は顕著である。日本では小売価格に占める原料価格の割合が低いこと、円高であることからまだ肌身に影響を感じていない。だが、チュニジア、エジプト政変の原因の一つが物価高であることを想起すれば、エネルギー、農産物価格の上昇の世界的影響はすでに表面化している。
市場経済の原理は冷徹である。バングラディシュの貧しい農民がランプに使う灯油を変えなくなるという事態を見れば心が痛む。しかし、貧しい人々から順番に購入者の地位から排除されていくのがマーケットメカニズムである。
もちろん新興国にも富裕層はいる。かえって貧困層が多い国ほど富裕層も多い。たとえばインドのタタ財閥の一員であるタタ・モータスが生産している超低価格車ナノ。一台30万円以下が売りのクルマだが、サイドミラーが運転席側しかついていないなどコストを切り詰めている。だが、そのナノもインドでは高級車メルセデス・ベンツ以下の販売台数であるという報道を読んだ。ナノを買うくらいならインドで生産しているスズキ車を購入したほうがコスト・パフォーマンスが高いと、インド人も考えている。この事実は日本が新興国で低価格の消費財を売って成長するという戦略の脆弱性を語っている。
さて、とりとめのない話になって恐縮だが、バーナンキFRB議長は、マネタリストであり、米国を経済危機から脱出するためには、資源価格の上昇やそれに伴う途上国の政情不安を引き超したとしても、QE2(量的金融緩和第2段階)の手をゆるめることはないだろう。基軸通貨国である米国がドルの信認よりも基軸通貨国の特権を追求していることは世界に不安をもたらしている。
1971年のニクソン・ショックでブレトンウッズ体制、すなわち金ドル為替本位制がが崩壊し、変動相場制に移行した。ドルは金というアンカーのない完全な管理通貨になった。それから40年。アジア通貨危機が起きた1997年以降、米国は金融政策と海外からの資本環流によって、基軸通貨国の特権を生かして、経済成長する路線を強めたように思える。
この結果、次々とバブルリレーとその反作用であるバブル崩壊と金融危機が引き起こされた。バブルリレーは、2000年ころのITバブルから顕著になり、ITバブルが崩壊すると、米国住宅バブル、資源バブルが起こされ、それらがリーマンショックで崩壊すると、新興国バブル、資源バブル再発動になっている。バブルのときはそれぞれを合理化するシナリオが語られる。「IT革命の時代を迎えた」「中国の石油需要が膨大なので石油価格は歯止めなく上がる」「米国は人口が増えており、移民も多い国なので住宅価格は上がり続ける」などなど。現在も新興国バブルに関して、似たシナリオが語られる。
しかし、こうしたシナリオを真に受けて、人生を懸けていたら、命がいくらあっても足りないだろう。
ただ、現在はニクソン・ショック以降、ドルの減価により世界的に物価が上がった経済状況に似てきたと考える。何年かこの状態が続くかもしれない。
その後にインフレと不況が同居するスタフグレーションなる可能性も高い。すでにわれわれは1980年代に経験している。
新興国バブルによって日本の輸出も増えるが、資源価格上昇>工業製品価格上昇というのが最近の経験則であり、日本の交易条件は悪化する。
企業の利益が増えると、雇用が増え、所得も上がるという「ダム理論」は、企業経営者が、株主優先の経営に転換した現在ではあまり期待できない。
あまり先行きについて悲観すべきではないが、いわゆる庶民、特に年金生活の者の生活は厳しさを増す懸念が強い。資源高の生活への波及、消費税導入、財政危機を理由とした年金・医療など社会福祉の削減などの影響が考えられる。将来もし円安に転換すれば、さらに物価高は加速される。
もちろん、資源価格は波動を繰り返すのがこれまでの経験だが、しばらくは上がるというシナリオで考えたほうが良いと思う。
もう一つ、チャイナ・ボーナスの消滅リスクがある。中国から安い製品を輸入して、日本の消費者は恩恵を受けていた。ホームセンターや100円ショップの製品、衣料品はほとんどが中国製である。だが、現地の労働コストの上昇や環境対策の強化によるコスト増、レアアースの輸出規制強化という現実を見ると、こうしたチャイナ・ボーナスも減りつつある。
ここから先は身近すぎる話題で恐縮だが、チーズ、お菓子、パンなど食品価格はここ数年、表面価格を上げていないが、内容(重量)は減っている。日本では高齢人口が増えている。食べる量も減っているのでバランスがとれているといえるかもしれないが、これからさらに飼料価格上昇=食肉価格上昇、肥料価格上昇=農産物価格上昇という連鎖も考えられる。代替品である食肉が上がり、漁船の燃料である石油が上がれば魚価も上がるということも想定される。
2012年から13年にかけて今の政治情勢では消費税アップが実現する。一時「消費税が高くても福祉の充実した北欧に見習え」という議論がテレビなどでさかんに展開された。筆者はこれも消費税上げへのキャンペーンだったか、と勘ぐってしまう。
少し大げさな言い回しになるが、エジプトなど途上国の民衆不満は、日本人にとっても、やがて対岸の火事でなくなるかもしれない。
個人としての人間の力は限られているので、大きな力(たとえば米国の金融政策や日本政府の増税路線)には抗すべくもないが・・・・。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1195:110216〕
今後の日本の生活状況分析部分が、正しい見通しであるように思われるので、備忘のため掲載しておく。
(以下引用)
基軸通貨国の特権乱用による世界的なエネルギー、農産物価格上昇が日本に波及するとき
2011年 2月 16日時代をみる エネルギー・農産物価格上昇基軸通貨国特権浅川 修史
<浅川 修史(あさかわしゅうし):在野研究者>
世界的にエネルギー、穀物、金属価格が上昇している。その原因として中国、ロシア、ブラジルなど新興国での需要増加が指摘されるが、根っこの原因は米国の金融政策=QE2によるドルの減価(あるいは将来の予想)である。
砂糖、コーヒー豆、大豆、とうもろこしなど農産物国際相場の上昇は顕著である。日本では小売価格に占める原料価格の割合が低いこと、円高であることからまだ肌身に影響を感じていない。だが、チュニジア、エジプト政変の原因の一つが物価高であることを想起すれば、エネルギー、農産物価格の上昇の世界的影響はすでに表面化している。
市場経済の原理は冷徹である。バングラディシュの貧しい農民がランプに使う灯油を変えなくなるという事態を見れば心が痛む。しかし、貧しい人々から順番に購入者の地位から排除されていくのがマーケットメカニズムである。
もちろん新興国にも富裕層はいる。かえって貧困層が多い国ほど富裕層も多い。たとえばインドのタタ財閥の一員であるタタ・モータスが生産している超低価格車ナノ。一台30万円以下が売りのクルマだが、サイドミラーが運転席側しかついていないなどコストを切り詰めている。だが、そのナノもインドでは高級車メルセデス・ベンツ以下の販売台数であるという報道を読んだ。ナノを買うくらいならインドで生産しているスズキ車を購入したほうがコスト・パフォーマンスが高いと、インド人も考えている。この事実は日本が新興国で低価格の消費財を売って成長するという戦略の脆弱性を語っている。
さて、とりとめのない話になって恐縮だが、バーナンキFRB議長は、マネタリストであり、米国を経済危機から脱出するためには、資源価格の上昇やそれに伴う途上国の政情不安を引き超したとしても、QE2(量的金融緩和第2段階)の手をゆるめることはないだろう。基軸通貨国である米国がドルの信認よりも基軸通貨国の特権を追求していることは世界に不安をもたらしている。
1971年のニクソン・ショックでブレトンウッズ体制、すなわち金ドル為替本位制がが崩壊し、変動相場制に移行した。ドルは金というアンカーのない完全な管理通貨になった。それから40年。アジア通貨危機が起きた1997年以降、米国は金融政策と海外からの資本環流によって、基軸通貨国の特権を生かして、経済成長する路線を強めたように思える。
この結果、次々とバブルリレーとその反作用であるバブル崩壊と金融危機が引き起こされた。バブルリレーは、2000年ころのITバブルから顕著になり、ITバブルが崩壊すると、米国住宅バブル、資源バブルが起こされ、それらがリーマンショックで崩壊すると、新興国バブル、資源バブル再発動になっている。バブルのときはそれぞれを合理化するシナリオが語られる。「IT革命の時代を迎えた」「中国の石油需要が膨大なので石油価格は歯止めなく上がる」「米国は人口が増えており、移民も多い国なので住宅価格は上がり続ける」などなど。現在も新興国バブルに関して、似たシナリオが語られる。
しかし、こうしたシナリオを真に受けて、人生を懸けていたら、命がいくらあっても足りないだろう。
ただ、現在はニクソン・ショック以降、ドルの減価により世界的に物価が上がった経済状況に似てきたと考える。何年かこの状態が続くかもしれない。
その後にインフレと不況が同居するスタフグレーションなる可能性も高い。すでにわれわれは1980年代に経験している。
新興国バブルによって日本の輸出も増えるが、資源価格上昇>工業製品価格上昇というのが最近の経験則であり、日本の交易条件は悪化する。
企業の利益が増えると、雇用が増え、所得も上がるという「ダム理論」は、企業経営者が、株主優先の経営に転換した現在ではあまり期待できない。
あまり先行きについて悲観すべきではないが、いわゆる庶民、特に年金生活の者の生活は厳しさを増す懸念が強い。資源高の生活への波及、消費税導入、財政危機を理由とした年金・医療など社会福祉の削減などの影響が考えられる。将来もし円安に転換すれば、さらに物価高は加速される。
もちろん、資源価格は波動を繰り返すのがこれまでの経験だが、しばらくは上がるというシナリオで考えたほうが良いと思う。
もう一つ、チャイナ・ボーナスの消滅リスクがある。中国から安い製品を輸入して、日本の消費者は恩恵を受けていた。ホームセンターや100円ショップの製品、衣料品はほとんどが中国製である。だが、現地の労働コストの上昇や環境対策の強化によるコスト増、レアアースの輸出規制強化という現実を見ると、こうしたチャイナ・ボーナスも減りつつある。
ここから先は身近すぎる話題で恐縮だが、チーズ、お菓子、パンなど食品価格はここ数年、表面価格を上げていないが、内容(重量)は減っている。日本では高齢人口が増えている。食べる量も減っているのでバランスがとれているといえるかもしれないが、これからさらに飼料価格上昇=食肉価格上昇、肥料価格上昇=農産物価格上昇という連鎖も考えられる。代替品である食肉が上がり、漁船の燃料である石油が上がれば魚価も上がるということも想定される。
2012年から13年にかけて今の政治情勢では消費税アップが実現する。一時「消費税が高くても福祉の充実した北欧に見習え」という議論がテレビなどでさかんに展開された。筆者はこれも消費税上げへのキャンペーンだったか、と勘ぐってしまう。
少し大げさな言い回しになるが、エジプトなど途上国の民衆不満は、日本人にとっても、やがて対岸の火事でなくなるかもしれない。
個人としての人間の力は限られているので、大きな力(たとえば米国の金融政策や日本政府の増税路線)には抗すべくもないが・・・・。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1195:110216〕
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