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ここにも合成の誤謬がある

ハジュン・チャンの『世界経済を破綻させる23の嘘』はグローバリズムと自由主義経済の虚偽を見事に解説した、読みやすい経済学の本で、この10年ほどの間に出た本の中でもベストの部類に入る。
その中の一節で、世界の先進国での製造業の重要性が低下している、という見方を正した部分を例として挙げよう。下線をつけた部分は、私も含めて多くの人が気がつかなかったところではないだろうか。統計における比率の低下は、実は生産性向上による値下がりのせいだということを知らず、その産業の重要性の低下だと錯覚する人間が多いはずだ。
今の日本の経済的困窮を救うためには貧困産業に金を回す工夫をすることだと私は何度も書いているが、企業努力によって生産性を向上させることが、その産業全体を貧困化させるという悪循環をも考察するべきだろう。


(以下引用)

ほとんどの人が工場ではなく店やオフィスで働いているという意味では、わたしたちは脱工業化社会に生きているのかもしれない。しかし、世界は工業が重要ではなくなった「脱工業化」という段階に突入したわけではない。国内総生産に占める製造業の比率の減少のほとんどは(すべてとまではいかないが)、製造業の絶対量の減少のせいではなく、サービスと比較して製造品の価格が安くなったためである。この現象は製造品の生産性(一定の投入当たりの生産量)の向上がサービスのそれよりも速いために起こっている。ただし、この非工業化のおもな原因がサービスと製造品のあいだの生産性向上のちがいで、したがってそれ自体にはマイナスとなるところはないにしても、経済全体の生産性向上と賃金のバランスという面では、無視できない好ましくない結果が生じる。発展途上国は工業化の大部分を跳び越して、一気に脱工業化段階に入れるという考えにいたっては、現実離れした空想でしかない。 (下線部は引用者による)

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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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