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組織力学の話

「阿修羅」記事から転載。
特に緊急の情報性は無いが、ある市民運動(?)の内ゲバと変質の内情が描かれていて面白い。真面目な人間ばかりが集まった集団では、重箱の隅をつつくような厳密性に長けた近視眼的人間が主導性を取りやすい。ユーモアのある人間は不真面目で無責任だとして主導権を失いがちである。
それが市民運動の変質や衰退の大きな原因ではないだろうか。

沖縄の人間の「テーゲー主義」にあこがれて沖縄に移住しながら、自分自身の本土的几帳面さを持ち込んで周囲を「本土化」してしまう本土人の多いことを想起する。まあ、そこには「本土人である自分はこんな現地人より上だ」という無根拠で奇妙な優越意識もあるのだろうが。
話が逸れたが、議論が強いことと、その議論の内容が有益であることとは必ずしも一致しない。大局観を持たない人間が「コアメンバー」である集団は滅びるものである。


(以下引用)


「TUP速報」の消滅 - 私の退会理由

http://www.asyura2.com/10/warb7/msg/360.html
投稿者 千早@オーストラリア 日時 2011 年 3 月 04 日 21:05:01: PzFaFdozock6I



(写真は、『世界は変えられるII 戦争の被害者って? 加害者って?』)

TUP速報の発起人のお一人で、長いこと管理人兼配信係もなさっていた萩谷さんから、今回多少手直しされた、退会なさったときにお書きになった「私の退会理由」が送られてきました。すでにCMLにも多少お書きになったとあり、転載の許可も戴きましたので、ここにご紹介します。

★関連投稿は、
転載 - [CML 007621] TUP配信停止について 
「TUP速報」の消滅 - 「陰謀論を扱うのは平和活動にとってデメリットだ」は本当か?
「TUP速報」の消滅 - 「読者からの質問に答える」
「TUP速報」の消滅 - 彼らがしたことは、一体なんだったのか?

尚、TUP速報で出した9/11の公式説に疑問を投げかける内容の速報というと、まずあの詐欺師「きくちゆみ」のご亭主「森田玄」が出した

TUP速報398号広がり行く911事件真相究明の運動(1)
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/425

があり(これは「(1)」となっていますが「(2)」は出ていない模様)、
その後に私が訳した

速報551号 非難を浴びる9-11 の嘘
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/597

速報591号 9/11の公式発表は「でっち上げだ」とエキスパートが主張
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/640

が出て、加えて

速報710号 シンディー・シーハン、遂に9/11の真実に言及す
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/735

速報720号 ニック・ロックフェラーは「全住民にマイクロチップを埋め込むのが最終目標だ」と言った
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/745

も、公式説に大きな疑問を見出している内容になっています。

あとの4本は皆私の手がけたものでしたが、それらの配信は誰からの文句も出ぬまま、スムーズに行われたのでした。しかし、無数の「疑問を呈する声」を集めたサイトからの訳は阻止された。

先にお伝えしている通り、ゴア・ヴィダルやダニエル・エルスバーグという広く知られた人々や、9/11当日亡くなった消防士の息子ダン・ワラスやおじを失ったマニー・バディーヨといった遺族を含む疑問の声を訳したものが、まっとうな理由もなく配信阻止されたのですが、萩谷さんはその辺の経緯にも触れていらっしゃいます。

木村愛二さんのお名前も出ていますが、TUPの作業用MLに木村さんのメールニュースを転送してくださっていたのは星川さんで、私はそれで木村さんの存在を知ったほどです。

それからTUP速報発起人の方々には私も敬意を持って接してはいましたが、それだって、他のメンバーに対し、同じ人間として払う敬意とその実大差なかったと思います。更に、M女史等が言うような権威主義を感じることがたとえあったとしても、言いたいこと、言うべきことは遠慮なしに言わせてもらっていたうえ、そうした声でもちゃんと聞いてくださっていたのが本来のTUPでした。

萩谷さんは、

「天下の岩波から本を出すんだ、世間に認められる売り物になる訳をするんだ、ということが、そういう権威主義、またそれに起因する匿名の横柄なチェックなどにつながったのだと思います」

と書いておられますが、殊に、「その本を作る作業の中心に私がいたのだ」「あれをやったのは私よ」というような「(複数、少数の)個人を売り込む」ことに熱を上げていたのではないでしょうか。

七つ森書館から本を出して戴いたときには、「TUPみんなでやった」という意識が強くあったように思います。そのあたりや、『冬の兵士』の"査読"が匿名で行われていたことなども(これは今知りましたが、驚愕!)、TUPがすでに本来のTUPではなくなっていることの証を見る思いです。

また萩谷さんも「陰謀説」という表現を使っておられますが、これは「9/11はブッシュ政権中枢にいた者たちの陰謀だった」と主張する「説」のことです。しかし「陰謀説」という表現を使うことによって、それを主張する者たちが「陰謀」という、何かしらうしろめたい、いかがわしいことに手を染めているような誤った印象を与えます。

世間で「陰謀説」という表現が使われるときは、隠されている本当の事実を伝えないようにする勢力による、またはその影響を受けたレッテル貼りであることも、皆さんには気づいて戴きたいと思います。そして萩谷さんの

「読者の中にも、陰謀説はお断りだ、という人が少なからずいるでしょう」

という弁に対しては、以前も書いたとおり私の知る限りにおいて、読者からその手の声は届かず、逆に私の書くものを支持する声が複数あったのです。しかもそれらをコア・メンバーは無視し続けた。

それと同時に何度でもくり返したいのは、9/11が多くの命を今も奪い続けている複数の戦争の大元であるという点です。「平和を目指す翻訳者たち」ならばこそ、「そこに無数の疑問がある」という事実を放置しておくべきではありません。

こうしたグループの分裂話は「双方に問題があるのだろう」などと見られがちでしょうし、中々読み取れないものがあるでしょう。ですが、きちんと冷静に事実を見る方にはきっと通じるものがあるはずと思います。そして私個人としては、

根底に横たわる、無数の「本当のこと」を伝えないようにするために
明らかに、そうした意図を持った人間たちによってTUPは乗っ取られた

と、見ています。
そういえば当時、詐欺師「きくち」の旦那にそんなことを書いたとき、

TUPなんて、全然大したことないから
そんなところにスパイが入るなんてあり得ない

などと書いてきましたよ。

TUP速報も一時は読者が4,000を超えていたし、読者が他に転送したり転載することも多かったので、決して馬鹿にできない影響力を持っていたと私は思っていたのに、です。
#彼と妻の正体がバレて、今では「さも、ありなん」と思うばかり

とにかく、自分で色々でっち上げる人間なら
9/11の公式説やゴアの嘘、温暖化人為説
という「でっち上げ」擁護に動くのも当然といえるでしょうか?

では、萩谷良さんからの「私の退会理由」をお読みください。
読みにくい部分があるかもしれませんが、改行も原文のままにしておきます。

尚、今日私が遭遇している妨害は「ウェブ上で日本語が書けない」というもので(これまでにも何度かあったが)、これらの文章も皆他で書いたものをコピペしてアップしています。また先日、ネットカフェに行く機会があったので、そこからならブログの背景や文字の色を変えられないかと思いましたが、家でと同様、不可能でした。

私の作業の邪魔をしようというネガティブな工作を続ける連中には、いつか必ずやったことに相応の処罰が下ることを信じています。


<私の退会理由>

(以下は、基本的内容は以前、退会のときに書いたもので、CMLに投稿もしたのですが、それを、もう少し簡潔に書き直し、当時言い足りなかったことを足してあります。いまさらのようですが、いまTUPにおられるメンバーの皆さんにご理解いただく必要があると思います。)

 私はTUPには2003年3月の発足当時、発起人の一人として関わり、ML管理人を務め、のちに配信係もしました。2007年から仕事の関係で一時休んだのち、2008年末に戻って来ました。そして、2009年3月に、TUP内部での対立に愛想がつきて、退会しました。

まずお断りしておきたいのですが、私が管理人だったころのTUPでは、911内部犯行説の立場に立つ記事を発行することは、なんら問題とはされていませんでした。ですから、2度は、そのような主旨の記事を配信しています。
発起人の星川さん、菅原さん、それに私も、陰謀説で有名な木村愛二氏の記事を読んだりしており、菅原さんと私は同氏と知り合いです。その説を全面的に信ずるかどうかは別にして、陰謀説アレルギーはありません。

それでも、私はTUPに戻ってからは、千早さんと他の数人のメンバーの対立については、対立に至った事情をよく知らなかったため、中立の態度を保っていました。
しかし、次第に反陰謀論の人たちの態度に疑問をもつようになりました。
理由のひとつは、陰謀説はアプリオリに排除すると言わんばかりの硬直した姿勢です。私の不在中に日本の国内状況が内部犯行説に不利に推移したとも思えません。彼らの言動は、一言で言えば、小学校のいじめそっくりだったのです。
911内部犯行説を主張するのが私の趣旨ではないので、以下、その問題の詳細にはふれませんが、TUPの今の状況は、市民運動で忘れてはならない原則に抵触していると考えられ、そのほうが内部犯行説の正否そのもの以上に重大です。

■陰謀説を発表するのには抵抗があるというのは、わからないわけではありません。TUPも日本の社会の中で政治的なポジションを考えなければなりません。2000を超す読者の中にも、陰謀説はお断りだ、という人が少なからずいるでしょう。
それならばそう言えばいいのですが、反陰謀説側の人たち(以下「コアメンバー」と呼んでおきます)は、正直にそうは言いませんでした。
ただ自己正当化にはしって、てんでに非論理な言葉をならべていました。どうやら問題になっているのは、論理の是非ではなく、ひとつのタブー、陰謀説タブーに抵触するかどうか、だけなのでした。
一方的に内部犯行説記事ばかりを流して、TUPが偏っていると思われるのが好ましくないのなら、反対の立場の記事を出せばよく、両者の論争が長引くのもまずいと思うなら、適当なところで打ち切りの提案をすることもできます。

反陰謀説の人たちは、理由を明示することなく、内部犯行説を否定しますが、フロリダ州で大統領選挙の票をあれだけ白昼堂々と組織的に盗んだ政権が何をしても、驚くには当たらないのではないでしょうか。あの事件さえ、ブッシュを支持する人間はガセネタだと思っています。あれほど明らかに日本が劣勢だった太平洋戦争でさえ、多くの国民は日本が勝つと思っていたのです。何かがアプリオリに否定できるなどとは言えません。
もちろん、私は、なんらかの特定の勢力がたくらむ陰謀がダイレクトになにかの社会的出来事につながるかのような、あまりに単純にものごとを収斂させる見方には、人並みに用心はしているつもりです。

 私はなぜ千早さんの911陰謀説の記事が配信されなかったのかコアメンバーに聞いてみるのですが、誰もまっすぐに答えません。
 彼女に傷つけられたと言うひとがいました。
記事を配信するかどうかは、感情の問題で決めるものではありません。また、メールのやりとりで、どっちがどっちを傷つけたなどと簡単に言えるはずもないのです。自分だけが一方的に被害者のように言えるでしょうか。

 陰謀説を唱えているのは千早さんひとりで、対立している人は少なくとも4人はいました。しかも論争できつい言い方をすることは、いくらでもあるのに、それでいちいち傷つくようで、メディア業界で生きていられるでしょうか。

 要するに、コアメンバーは自分たちが明確な意志をもって行ったはずの措置について、簡潔明確に説明できないのでした。

 こんなことでは、千早さんに手を焼くのは当然で、それは千早さんのせいだとは言い切れないではありませんか。

 文化人類学者の西江雅之さんが語っていた話では、人と話すときは顔を相手に近づけるのが礼儀だとする文化のなかで育ったひとと、相手から顔を遠ざけるのが礼儀だとする文化で育った人が話をしたら、片方は相手ににじり寄り、他方は後ずさりするので、部屋の中をぐるぐる回ったそうです。千早さんは議論をしようとしたに過ぎません。ところが相手は議論を逃げよう、避けようとする人たちだったので、ぐるぐると堂々巡りをしてしまったのです。

 私は、中立の立場から彼女寄りにシフトしたかもしれません。しかし、仮にも初期からTUPに大いに貢献してきたメンバーで、世間の定説を鵜呑みにはしない姿勢をもつ人間をそれなりに評価したからであって、自分が間違っていたとは今もって思いません。また、彼女には人を傷つけるような趣味もありません。

と同時に、私はコアメンバーに対して、もっと別の疑問も感じていました。むしろこのほうが重大だと思えるし、TUPにいるメンバーの皆さんにも大事なことではないかと思います。以下、それを説明します。査読MLで起きた事柄が主なので、ほかのメンバーの目にふれないのをさいわい、コアメンバーは誤魔化していますが。

■査読班での彼らのやりとりには、千早さん以外の人までおとしめるようなものがありました。一例をあげると、ある女性メンバーについて「あの人には萩谷さんが言って聞かせてほしい、彼女は男に弱いから」と書く人がいました。呆れていると数日後も、彼女は年上の男性には素直だ、と書きました。
また、ある査読者が私を自分の側につけようと画策しているので、それを阻止することができてよかったなどと言っている人もいました。

 いつからTUPでは派閥争いが始まったのでしょう。こんなにこそこそと互いを悪意で見たり、陰口をきくような集団になったのですか。星川さんがいたころには想像もつかなかったことです。

コアメンバーは、「冬の兵士」作業用に作ったMLを、自分たちだけの陰口や裏での連絡の手段として使っていたわけです。

 そのうちに岩波書店の山川良子さんが査読MLに加わりましたが、千早おろしは続きました。私も最初のうち、千早さんを悪く言う者ばかりでは不公平だと思うから反応していましたが、考えてみれば、これはまずいことです。だから、査読MLで千早さんの話をするのはやめようと警告しました。ところが、彼らの誹謗はやみませんでした。

■査読MLの管理人だったSさんは、専用MLは「冬の兵士」の訳文チェックのためであるのに、千早さんのことをくさすために使ったことをどう思っているのでしょう。ついうっかり1度か2度というのではなく、毎日そんなやりとりが続いたのです。

 私がたまりかねてTUP-MLでこのことに他のメンバーの注意を促す発言をすると、彼は、千早さんの話は査読MLでしましょう、と、山川さんが読んでいる査読MLで書きました。私がそれを批判すると、すみません、新しく山川さんの加わらない MLを作りましょうと言いました。これには呆れて、なんのためのMLですかと聞きました。返事はありませんでした。山川さんに対しては、とんだ醜態の恥の上塗りをしたわけだし、千早さんにとっては、名誉毀損で訴えてもおかしくないことです。

 Sさんは、管理人をやる人がほかにいないのをいいことに、一切反省も謝罪もしません。

 私は査読MLのメールを千早さんと菅原さんに転送すると言いました。千早さんは当該、菅原さんはTUP発起人です。当該や発起人に知らせるのは当然です。

 それに対して彼は、「closed な MLでの発言を外に漏らすのは原則違反ではあります。だから、萩谷さんが千早さんにそれを告げるのは原則違反ではありますね。しかしながら、この場合は、僕の方が先に原則違反しているので、僕としてはそれをするなとは申せません」(2009年3月5日)と、自分の非を認めざるを得ず、なるべくならほかのみんなの発言は転載しないでほしい、としか言えなかったのです。人に知られて困ることをしていたのですから、やめろと強く言えないのは当然です。

 しかるにその後、Fさんの援護射撃に元気を取り戻して、私を一方的に非難しました。まるで泥棒が裁判官になったようでした。公害垂れ流し企業が内部告発した社員を首にするのとどうちがうのでしょう。査読MLでのことなど、他のメンバーに対してはいくらでもごまかしがきくと思っているのでしょう。

■Mさんについては、私は、千早さん問題(ほんとはコアメンバー問題と呼ぶべきですが)とはまた別の問題も感じています。

それは、「訳語の問題 sexual orientation」というスレッドで彼女の述べたことについてです。これは、TUP-MLのログが残っているのではないでしょうか。
私はあれを軽い過ちだとは思いません。それは、少なくとも、翻訳者、言論に関わる者としての資質を問われる重大問題だと思います。(後に経過報告を付けます)

 私の知っているフリージャーナリストや映像作家で、いやしくもなんらかのマイノリティに関わりを持つ人たちの間で常識となっていることが、この人には通用しません。

 Mさんは私に、千早さんの「布教活動」のせいで、何も知らない若いメンバーが、「あんなものを真のジャーナリズムだと誤解したら困る」と書いてきたことがありますが、Mさんこそ、TUPの若いメンバーに真のジャーナリズムや翻訳のなんたるかを誤解させる恐れがあります。

 sexual orientationをめぐっての、あの見苦しい言い逃れ、はぐらかしはいったい何でしょうか。あんなものが「ジェンダー問題の専門家」の考え方だなどと思われたら、性的マイノリティが迷惑します。

 こういう人が岩波の「世界」などに翻訳を載せるとき、自分の名前に(TUP)などとつけるのは、TUPの名前を利用しているだけだと思います。

 この人は私がアフリカに行ったことを「TUPに絶望してアフリカに行った」と語ったそうですが、私はそんなことは身に覚えがないし、誰にも言ったことはありません。こういうふうに勝手な脚色をし、論理をねじ曲げることが、この人においては常習的行動となっています。

■訳文チェックで、非常に権威的、強制的なやり方をして、一部のメンバーに不快な思いをさせている人がいました。もうTUPをやめてしまったらしいので、詳しくは言いませんが、ともかくそのせいで少なくとも二人の人がやめています。

その人のチェックは、Aという表現をBに変えろ、までは間違いではないのですが、その理由を説明し始めると、変なことをよく書いていました。たずねてみると、せいぜい大野晋と本多勝一の本を読んだくらいの知識しかもっていないのでした。そんな浅薄な知識にもとづいて、メンバーに、こう書けとか、ああ書くなとか、余計な強制、指図をしていたのでした。
そのため、明らかに不自然な訳文を書くようになった人たちが見られました。

 言葉について語ると、微妙なまちがいや、とんでもない大間違いをすることがあるものです。軽々に扱ってはならないと思います。

 とくに私が強調したいのは、人のことばにはそれなりの尊厳を認めるべきだということ、根拠のないことを語るべきではないということ、そして、言語を機械的に扱ってはならないということです。

■私が以前TUPにいて、人の訳文をチェックしていたときは、匿名で書き換えるなどということはありませんでした。千早さんや池田さんも熱心にチェックをしていましたが、必ず名前を出して、訳者に話しかける態度でした。これは当然のマナーだし、そのほうが健全で嫌みがないと思います。

「冬の兵士」の「査読」は匿名でした。閉鎖的な、高みに立った感じを受けます。
査読より前の段階で、名前を名乗ってメンバー間のチェックが行われてはいましたが、遠慮していたらしく、不十分なものでした。
対等平等なはずのメンバーの訳文をAレベル、Bレベル、Cレベルなどと、根拠も明らかでないままにふるい分けて、それを直す段取りを調整していましたが、いかにも傲慢なことです。
「査読」というのも、なんだか権威じみて、おこがましい名称だと思いました。
天下の岩波から本を出すんだ、世間に認められる売り物になる訳をするんだ、ということが、そういう権威主義、またそれに起因する匿名の横柄なチェックなどにつながったのだと思います。

査読MLで、あるメンバーが自分の中学生のお子さんが書いた訳を、ほんの参考にと言って投稿したら、大人の訳を批評するみたいに大上段に構えて長々と批評した人がいたのには、呆れました。星川さんのいたころなら、ほほえましい雰囲気で出来たことが、まったくできない、ユーモアゼロの集団にTUPはなってしまったようです。

星川さんや私がやっていた頃のTUPでは、もっと誰もが遠慮なく口をきける雰囲気がありました。グループ内で民主的な対等な関係が保証することは、市民運動の生命線です。
私や星川さんや菅原さんを父権的などと言っているようですが、とんでもない話で、唖然とします。

私は、それまで好感をもって見ていたMさんが、自分の立場を正当化するためならどんな嘘でも平気で書くのに強い失望を感じました。Mさんは、TUPの初期からのメンバーではなく、彼女が参加を希望したとき、以前に彼女と同じ運動に参加していたことのある菅原さんが参加に反対し、一番積極的に彼女を擁護したのが私と千早さんだったという、皮肉な経緯があります。

■sexual orientationの訳語のいきさつ

 「冬の兵士」翻訳の途中で、sexual orientationという言葉を「性的嗜好」と訳した例がありました。それについて、私とMさんの間に、「訳語の問題 sexual orientation」というスレッドで、次のようなやりとりがありました(敬称略)。

萩谷:「sexual orientationは『性的指向』である」とコメント。

M:「性的志向」が正しいとコメント。

萩谷:「性的指向」が一般的であることを、Wikipedia およびGoogle検索ヒット数にもとづき指摘。

M:Wikipediaは間違いが多い。

萩谷:国連広報から、国連の決議で性的指向とする慣行だとの情報を得た。

M:国連に連絡し、指向とするという規定はないと確認。(萩谷注 公式の規定はありません。ただしすでに「性的指向」が慣例となっています)。

 M:性的指向は、性対象として異性を求めるか同性を求めるかあるいは両性かということのみにもとづく概念。
その相手との関係を、双方の合意と配慮、愛情にもとづくものにするかという視点を欠く。
そのため、軍などでは、連続少年暴行魔でも、無害な同性愛者でも同列にして変態者として扱うといった不当な待遇が見られる。このことを巡ってゲイ・コミュニティで抗議や議論があり、そのなかで、性的志向という概念が必要とされるようになっている。

 萩谷:性的指向という概念では、倫理的な観点が示されず、無害な同性愛者に対する不当な待遇を排除する根拠が示せないという点には同意。
 ただし、従来、日本では性的志向という言葉はなく、性的指向が一般的であり、これがsexual orientationの訳語とされてきた。
sexual orientationを性的志向と訳すのだとすると、性的指向にあたる英語は何なのか?(この質問は以後再三なされた) 

 M:(この質問に答えなし)

 萩谷:Mは日本と米国のどちらのゲイ・コミュニティに接触して、彼らの上記のような問題意識を知ったのか。

 M:(答えず)

 萩谷:性的少数者の権利推進運動に長年携わる知人に、このことを問い合わせたが、Mのような話は初耳だとの回答を得た。
 したがって、これはMの造語であり、当該の同性愛者の意見にもとづくものではない。

(私とMさんのやりとりは以上)

 これに至るまでの6,7回に及ぶ応答のなかで、Mさんは少なくとも2回は、言葉の意味に関する私の質問に対し、自分はジェンダーの問題で、公的機関や大企業に講師としてレクチャーをしに行ったことがあると、自己の経歴を述べ、私の質問に答えていません。
議論に無関係で、権威主義的で、問題の当事者をないがしろにした態度です。

 Mさんは、性的指向という言葉が使われる以前には、性的志向という言葉のほうが一般的だったと述べていますが、これはさまざまな意味で間違っています。
私も私の知人(性的少数者の権利擁護に取り組んでいる人)も、60年代以降の日本で、性的志向という言葉を見た覚えがありません。性的指向という言葉すら,80年代末かそれ以後のものです。なぜなら、ゲイリブはウーマンリブより後のものであり、ウーマンリブは70年代のものだからです。
 70年代やそれ以前には、性的指向と性的嗜好すら区別されるような状況ではありませんでした。

Mさんは、日本ではゲイ文化の伝統が長いとも言っていますが、それは同性愛者が日陰者扱いされている日本の状況を無視した暴言です。
 なるほど米国には、同性愛者は牢屋に入れろなどというひどい法律が一部の州に残っていますが、そんな米国のホモセクシュアルのほうが、そんな法律などない日本の同性愛者より、それこそgay prideをもって、明るく堂々と生きています。
 もし、Mさんの言うように、性的志向という言葉が久しく以前から使われ、ゲイ文化の伝統もあったというなら、日本ではなにも問題はないことになるでしょう。

 私は、フリージャーナリストやフリー映像作家の集まるMLに加わっていますが、そこでMさんのような発言をしたら轟々たる批判を浴びると思います。社会的弱者と直接に接触して良心的な活動をしている人たちの間では、こんな傲慢で独善的な発言は考えられないことです。

私は、そのMLに、この議論の内容を紹介して、意見を求めてみました。すると次のようなレスをつけてくれた人がいました。

<<そもそも性的オリエンテーションに倫理性なんてものが関係あるんでしょ
うか? また倫理性そのものが、各個人のオリエンテーションに過ぎないように
も思います。それを個人のオリエンテーションを超えた社会規範と考えるところ
に、差別が生じるのではないかとさえ、私は思います。
幼児性愛は犯罪でしょうか?明らかに、幼児に性的指向が向くこと自体は犯罪で
はありません。それは羊や鶏を嗜好するのと変わりないものです。しかしその願
望を現実化してしまうと、人間の幼児には人権がありますから犯罪となります
が、残念ながら羊さんや鶏さんの性的指向を蹂躙しても犯罪にはなりません。
性的オリエンテーションはあくまで個人のオリエンテーションですから、社会規
範や倫理性を含ませる用語法には注意が必要だと思います。その意味から、私は
志向よりはよりニュートラルな指向をとります。でも同様の意味で嗜好も悪くは
ないのでは、と思うのですが、いかがでしょうか>>

 この人は冤罪問題の追及で優れた仕事をしているジャーナリストですが、こういう意見をくれる人に比べて、Mさんは、ある大事なものを裏切っていると言わざるを得ません。TUPというのは、もともと、こういう人やSさんのような人がやる活動ではなかったのです。

 そのMさんが、私や星川さんや菅原さんを権威主義だとか言いふらしているのには、開いた口がふさがりません。

<以上>
2010年9月28日 2011年3月3日加筆


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