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体罰を容認する日本社会の狂気

「ライブドアニュース」に転載された秋原葉月の「BLOGOS」所載記事の一部である。特に注意したいのは、スポーツ部員や、そのOBによる体罰教師擁護や体罰容認論がなぜ存在するのか、という分析であり、これが自分のアイデンティティを守るための精神メカニズムから来ているという指摘は実に鋭いと思う。自らの過去を否定することは自分の存在価値を否定されることであり、それが耐え難いために、自らの過去の一部を形成していた体罰的指導までも容認するようになるわけだ。
そして、その体罰社会の根底にあるのが「絶対的上下関係」である。特に、スポーツ特待生などは、指導教師への反抗はほとんど自己の全存在を失う結果になるために、反抗は不可能である。指導教師への反抗によってチームから落伍した場合の家族からの非難、周囲の軽蔑を考えれば、精神的に不安定な年齢の青少年が自殺を選択することも当然ありうる。
当人が自殺を選んだことについて、「精神が弱すぎる」という批評をするのは、おそらく体罰容認派や体罰教師擁護派の人間だろう。また、「子供を支えてやれなかった家族に問題がある」という批評も同様の責任転嫁作戦である。こうした一見もっともらしい議論は、世間のB層にはなかなか有効なので、それが結果的にはこの体罰社会を延々と存続させているのである。
後で、元ジャイアンツの桑田による体罰全否定論を追加掲載する予定である。

もっとも、まだ「人間」になっていない幼児が危険な行為をした時に、お尻を叩いて教えるという程度の「体罰」は、これは絶対に必要であり、周囲に危害を与える青少年の不良行為には体罰どころか刑事罰が相当である。教師は、そうした不良行為が教室内で行われた場合には「体罰」よりも「教室からの退去」を命じるべきであり、それは即座にその生徒の親にも通告すべきである。そして、そうした行為が続くようなら退学にするのが当然であり、これによって「教室崩壊」は防止できる。それを社会的合意にすればいいのである。なお、「教室退去」については小田嶋隆の考えを参考にした。




(以下引用)






この事件に関するいくつかの報道を、末尾の[続きを読む]の中に記録しておきますので、よろしければ目をとおしてくださいませ。
顧問の教師は「気合を入れるため」に殴り、ほかの部員にも「発憤させるため」殴ったそうです。
悪いことしてないのに殴られるのが続いたら、心に傷を負って人格歪むのが普通です。
人倫に反する悪行をしたわけでもないのに、些細なことですぐに平手打ちが飛んでくるのが常態になってるって、ホントに70年前の日本軍を想起させます。
こんなのは断じて教育ではありません。「調教」といったほうがいいかも。

しかし、父兄や卒業生の中にも「厳しい指導で手が出るのは当たり前」と、軍隊式のしごき、根性主義を良いことだと肯定する風潮があるのですね。ある意味とても日本的だと思います。


高2自殺 厳しい意見の一方、擁護する声も
日本テレビ系(NNN) 1月10日(木)19時27分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20130110-00000049-nnn-soci

 先月、大阪市立桜宮高校バスケットボール部のキャプテンだった2年の男子生徒(17)が、顧問の男性教諭に体罰を受けた翌日に自殺した問題で、9日夜、保護者説明会が行われた。部活動での指導について、保護者から、疑問や要望など厳しい意見が次々と上がるなど、学校側の対応に不満の声が多くを占める中、擁護する声もあった。

 保護者「僕も卒業生。正直、僕らの頃はもっと厳しかった。先生だけの責任じゃなくて、親の責任だと思う。友達を作ることも大事ですし、そういう友達がいたら、手を差し伸べるように言ってやるのも親の役目。先生はこれからも大変だと思いますけど、頑張ってください。僕は応援します」

 学校側「謝罪するしかありません。今度こそしっかりとやっていきたいと思います」
「自分は理不尽な仕打ちに耐えた、もうこんな仕打ちはなくそう」ではなく「自分は理不尽な仕打ちに耐えた、だからおまえも耐えろ」というのは、日本の社会のありとあらゆる場面で見られる負の思考回路ですね。
それにしても、子どもを自死で失ったのに「親の責任」という言葉を出すのはちょっと酷くないでしょうか。
軍隊的しごき、暴力を肯定する人が被害者である遺族の親御さんを傷つけるような発言をするのは、軍事優先思考な人が沖縄で米兵に女性が暴行されても被害者の女性の方を責める傾向にあるのと共通しているな、と感じます。


「先生は間違っていない」“熱血”指導で全国大会常連校にした顧問 桜宮高2自殺http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130108-00000578-san-soci

桜宮高校の男子バスケットボール部顧問は、高校バスケ部の指導者として全国的に知られる存在で、16歳以下の男子日本代表チームのアシスタントコーチも務めていた。以前から体罰も含めた“熱血”指導で知られ、同部を全国大会の「常連校」に育てたという。
(略)
 顧問は平成6年4月から保健体育科教諭として勤務。学校での評判について、顧問を知る卒業生からは「先生がやってきたことは間違っていない」などと擁護する声も聞かれた。

 ある関係者は、顧問の指導方法について「いいチームをつくることで評価されているが、古いタイプ」と指摘。中高の運動部では「叱られ役」を意図的につくる場合があり、主将がその役になるケースが多いという。「強く叱ったとしてもフォローは絶対に必要。コーチもいたはずで主将がそこまで思い詰めていたことになぜ気付けなかったのか」と残念がった。
(引用ここまで)
全国大会の常連校にまで育て上げることこそ大事、そのためなら暴力だって許されるという教育を私は支持できません。(実際、体罰とチーム強化に因果関係があると思えませんし)
「叱られ役」を意図的につくる場合があり、主将がその役になる~こういう見せしめの生け贄を吊し上げるやりかたもチームが強くなるための必要悪だと納得してしまうようでは、残念ながら教育が失敗した事例だといえるでしょう。

生徒は部活を続けたかったら本当は全否定したい暴力の環境を受け入れざるを得ません。ですからそれをなんとか合理的に肯定しようとしてしまいます。
「先生がやってきたことは間違っていない」と教師を擁護する声が卒業生からあがるのは、そうやって自分が置かれていた環境を肯定しないと自分の三年間が否定されてしまいそうになるからだと思います。
で、その鬼のような先生がたまに優しかったりすると益々「ああ、ホントは良い先生なんだ」と先生を肯定する気持ちが強化されます。
これ、典型的なマインドコントロールですよね
そしてその肯定感をいだいたまま、何の疑問もなく暴力をふるう側に回る大人になる卒業生も出てくるでしょう。
こうして世代を超えて悪しき軍隊精神は伝統として継承されていきます。




中村 真美子@MAAMIK0


「先生は間違っていない」“熱血”指導で全国大会常連校にした顧問 桜宮高2自殺(産経新聞) - Y!ニュース headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130108-… 暴力で支配された者たちは支配されてきたことを間違っていると否定出来ないのです。自己否定に繋がるので認めたくないのです。

2013年1月10日 返信
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ウサギ@nekotausagi


そう言わないと耐えた自分のアイデンティティが崩壊RT @KuroU_Usagi: そう言う卒業生と、現状の認識とのズレは何だろう?〓「先生は間違っていない」“熱血”指導で全国大会常連校にした顧問 桜宮高2自殺(産経新聞) - Y!ニュース headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130108-…

2013年1月9日 返信
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学校は軍隊であってはなりません。自分の三年間を否定されるかも知れない苦痛と向かい合っても、間違っていると認める勇気を持つところから始めなくてはいけないと思います。
子供達個人個人の人格を尊重し民主的な教育をしなければならないはずのこの日本で、いまだに軍隊的スポ根的なしごきが横行する、そんな「悪しき伝統」はいりません。
以前、日本の企業は体育会出身の学生を好む傾向にあるけど、それは上からの命令に従順な傾向があるからだと書きました。
こんな悪しき伝統が生き延びているのも、日本の社会にニーズがあり、パワハラを許容する土壌があるからでしょう。
学校から体罰をなくすには私たち一人一人が、社会が古き悪しき価値観から脱皮する必要があると思います。
そして、もちろん先生一人一人も、子どもを独立した人格として尊重し、教育とは暴力と恐怖による支配ではないという民主的な価値観、教育観をしっかり学んで欲しいと思います。

ちなみに「このような悲劇を繰り返さないために、自分が学校から体罰を無くします!」とは絶対言わないんですよね、橋下市長は。
そりゃ、言わないでしょう、だって体罰の背景にあるものはまさしく「子どもは所詮、恐怖心でしかコントロールできない」「教育は20000%強制」という橋下氏の教育観なんですから。
軍隊しごき式経営のワタミ社長を教育アドバイザーに打診するようなパワハラ市長が条例でもって直接陣頭指揮をとれるようにしても、体罰問題の解決など絶対に無理なのです。


おまけ




ひまわり(^o^)@meimi0814


「君が代条例」なんて作る位なら、「体罰禁止条例」を作る方がまっとうだろうが!!憲法にも学校教育法にも合致している。

2013年1月10日 返信
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げに。







(引用2)




「体罰は自立妨げ成長の芽摘む」桑田真澄さん経験踏まえ

朝日新聞デジタル 1月11日(金)20時51分配信



体罰について語る桑田真澄さん=11日午後、東京都新宿区、越田省吾撮影


 【岡雄一郎】体罰問題について、元プロ野球投手の桑田真澄さん(44)が朝日新聞の取材に応じ、「体罰は不要」と訴えた。殴られた経験を踏まえ、「子どもの自立を妨げ、成長の芽を摘みかねない」と指摘した。








 私は中学まで毎日のように練習で殴られていました。小学3年で6年のチームに入り、中学では1年でエースだったので、上級生のやっかみもあったと思います。殴られるのが嫌で仕方なかったし、グラウンドに行きたくありませんでした。今でも思い出したくない記憶です。

 早大大学院にいた2009年、論文執筆のため、プロ野球選手と東京六大学の野球部員の計約550人にアンケートをしました。

 体罰について尋ねると、「指導者から受けた」は中学で45%、高校で46%。「先輩から受けた」は中学36%、高校51%でした。「意外に少ないな」と思いました。

 ところが、アンケートでは「体罰は必要」「ときとして必要」との回答が83%にのぼりました。「あの指導のおかげで成功した」との思いからかもしれません。でも、肯定派の人に聞きたいのです。指導者や先輩の暴力で、失明したり大けがをしたりして選手生命を失うかもしれない。それでもいいのか、と。

 私は、体罰は必要ないと考えています。「絶対に仕返しをされない」という上下関係の構図で起きるのが体罰です。監督が采配ミスをして選手に殴られますか? スポーツで最も恥ずべきひきょうな行為です。殴られるのが嫌で、あるいは指導者や先輩が嫌いになり、野球を辞めた仲間を何人も見ました。スポーツ界にとって大きな損失です。

 指導者が怠けている証拠でもあります。暴力で脅して子どもを思い通りに動かそうとするのは、最も安易な方法。昔はそれが正しいと思われていました。でも、例えば、野球で三振した子を殴って叱ると、次の打席はどうすると思いますか? 何とかしてバットにボールを当てようと、スイングが縮こまります。それでは、正しい打撃を覚えられません。「タイミングが合ってないよ。どうすればいいか、次の打席まで他の選手のプレーを見て勉強してごらん」。そんなきっかけを与えてやるのが、本当の指導です。

 今はコミュニケーションを大事にした新たな指導法が研究され、多くの本で紹介もされています。子どもが10人いれば、10通りの指導法があっていい。「この子にはどういう声かけをしたら、伸びるか」。時間はかかるかもしれないけど、そう考えた教え方が技術を伸ばせるんです。

 「練習中に水を飲むとバテる」と信じられていたので、私はPL学園時代、先輩たちに隠れて便器の水を飲み、渇きをしのいだことがあります。手洗い所の蛇口は針金で縛られていましたから。でも今、適度な水分補給は常識です。スポーツ医学も、道具も、戦術も進化し、指導者だけが立ち遅れていると感じます。

 体罰を受けた子は、「何をしたら殴られないで済むだろう」という後ろ向きな思考に陥ります。それでは子どもの自立心が育たず、指示されたことしかやらない。自分でプレーの判断ができず、よい選手にはなれません。そして、日常生活でも、スポーツで養うべき判断力や精神力を生かせないでしょう。
.
朝日新聞社








(追記) 以上を一言でまとめた名言を見つけたので、転載する。「笑点」なら「うまい、座布団一枚!」というところだ。これこそ伝統的スポーツ名門校の実態だろう。




殊能将之‏@m_shunou

殴られて指導された奴が殴って指導するんだよなあ






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