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「グローバル標準の米国式経営」の馬鹿馬鹿しさ

「リテラ」記事から抜粋転載。
「グローバル標準の米国流経営」というものがいかに馬鹿げたものかを如実に示している。
誰が考えても、

ROAを高めるには、経営指標の分母となる手持ちの総資産を圧縮するか(直営店の売却)、分子となる純利益を高めるか(価格の引き上げ、コストカット)のどちらか、もしくはその両方を行うことになる。


とある、このROA(総資産利益率:企業が保有している資産の活用効率を示す財務指標)を高める手段の「直営店の売却」と「価格の引き上げ、コストカット」が経営破綻への道であることは分かるだろう。コストカットとは、冗費のカットという限度を超えた場合、「お客に出す商品の品質を落とす」「従業員の労働条件を悪化させる」ことでしかなくなるものだ。直営店の売却(フランチャイズ制の推進)とは、店舗管理の目が行きとどかなくなることだ。そのどちらも事業そのものの品質低下につながる道であることは少し考えれば分かることである。
だが、原田泳幸は、下の者(社員)には高圧的に命令できても、上の者(株主)に対してはすべてご無理ごもっともでへいこらし、従う人間だった。その結果、現在の日本マクドナルドの凋落の原因を作り、さっさとベネッセに逃げていったわけである。
なお、原田氏が、ファストフードはスピードが大事とか言って、様々な新商品発売や店舗設備その他の改善を行ったのも、従業員にとっては労働強化以外の何物でもない。しかも、それで客が喜ぶのはほんの一時のことである。
人間は食い物には保守的なものだ。ファストフードでもそれは同じであり、原田氏の考え方は、それ自体根本的におかしいのである。本体のベイシックなハンバーガーさえ美味ければ客は来るものであり、奇抜なハンバーガーを作って話題になっても、長続きはしない。マクドナルドのベイシックなハンバーガーは、医学的・健康的には問題はあるにしても、一般大衆の味覚からすれば美味いものであったことは確かだ。その味に自信があれば、ほとんどそれ一本で押し通すのが本来だろう。それがブランドというものではないか。マクドナルドがやたらに新商品を出すのは、自分のブランドを自己否定しているようなものだ。ファストフードはファッション業界ではないのである。
それに、扱う商品の数や業務の種類が少ないほど従業員の負担は減り仕事の事故も減るものだ。仕事の負担が少なければ、給与は低くても仕事に応募する者はいる。低給与で高負担の仕事を喜ぶ人間がどこにいるものか。仕事量を増やして従業員を苦しめること(いわゆる労働強化)は、「すき家」の例などからも分かるように、長期的には経営破綻の要因になるものだ。
彼が「新商品や店舗改善によって業績回復した」と言うのは勘違い(または自画自賛の強弁)であり、彼が就任した直後の業績回復は、まったく別の要因によるものだ、と私は見ている。統計数字の操作と同じことで、数字など、基準変更などの操作でどのようにでも変えられるものである。まあ、業績回復が数字操作によるものだとは言わないが、要するに、「24時間営業」(原田氏がやった、ほとんど唯一の実効的「改革」)にしたら、売上の数字が上がるのは当然の話であり、新商品やくだらないイベント(これは経営責任者が「私は猛烈に働いています」という、株主アピールのためのポーズ。実際に「猛烈に働かされる」のは部下や従業員。)などまったく無関係だ、と私は思っている。営業時間の延長など、どこの阿呆でも考えられる、売上強化のための「業務改善」の初歩の初歩だ。だが、個人商店ではそれがすぐに自分自身の負担となるからやらないだけのことだ。その負担を命令一つで他人が負ってくれるなら、「業務改善」など簡単な話である。




(以下引用)


 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授である著者が、経営学の視点から、日本マクドナルドの失敗の本質に迫っている。著者によれば、日本マクドナルドが凋落しはじめる転機は、2007年だという。04年にCEOに就任した原田氏はそれまでのマクドナルドを日本に輸入した故・藤田田氏の「マクドナルドの日本式ローカルモデル」経営から「グローバル標準の米国流」経営に変更。店舗効率の改善、商品品質の向上(メイド・フォー・ユーの早期導入)、ドライブスルー型の店舗と24時間営業の推進といった改革を矢継ぎ早に繰り出し、メガマックのヒットやマックグリドルの導入もあり、07年は売上高も利益率も急上昇。既存店の売上高は、前年を10.2%も上回り、売上高営業利益率も4.2%に上昇した(前年は2.1%)。ここから、高級アラビカ豆を使用した「プレミアムローストコーヒー」の販売を開始したり、携帯電話やスマートフォンの「eクーポン」を導入し、顧客の囲い込みをするなど、原田改革が絶好調に見えた時期だった。


 しかし、米国流経営の視点から見ると、まだまだ物足りないものだった。
「米国流の経営ではROE(株主資本利益率:自己資本に対してどれだけのリターンが生み出されているかを示す財務指標)を重視する見方が主流になってきている。米国は株主資本主義の国だから、一般的な経営指標としては、売上の伸びよりは収益性が優先される。原田氏がCEOに就任して、売上高は伸びた。経常利益率(4~5%)もまずまずの水準だ。」「ところが(略)ROEは、2005年では、水面下すれすれの水準で0.04%。2006年では1.2%。株主の立場(投下資本に対する収益率)からすれば、日本マクドナルドは残念ながら大きな利益を生み出しているわけではない。」「さらに、もう一つの指標であるROA(総資産利益率:企業が保有している資産の活用効率を示す財務指標)は2006年に3%、2007年に7.9%と、それほど儲かっていなかったのである。」



 世界のマクドナルドの中で、日本の売上高は米国に続いて第2位と、米国マクドナルド本社が海外オペレーションから得ている利益のおよそ3分の1を稼いでいる存在だ。米国本社はこれまではロイヤルティの対象となる売上高を見ていればよかった。


 だが07年には保有株数の約半数を米国本社グループが保有するまでになっており、米国流株主としての視点で、ROAを高めるように、経営に関与をするようになった。


 ROAを高めるには、経営指標の分母となる手持ちの総資産を圧縮するか(直営店の売却)、分子となる純利益を高めるか(価格の引き上げ、コストカット)のどちらか、もしくはその両方を行うことになる。



 米国マクドナルド本社でも、同様に、アクティビスト(物言う株主)と呼ばれる有力なヘッジファンドから、直営店の売却と経営効率の改善を迫られ、直営店の売却(フランチャイズ化)が進んでいた。このため日本マクドナルドでも、直営店の売却とコストカットが吹き荒れることになったのだ。08年から直営店の売却(フランチャイズ化)が加速し、「2年間で、直営店からフランチャイジーに区分移行した店舗は948店舗に及び、売却益は86億円にもなっている。そして、この年、FC店が2010店に対し、直営店が1705店となり、数の上ではFC店が直営店を抜いた」。ROAは08年には9.1%、09年には11.6%と改善する。そして、486店舗(直営店278店、FC店208店)の一斉閉店をした10年には13.5%にまで上昇したのだ。


 その結果はどうなったか。一斉閉店により、不便になった顧客はマクドナルド離れを起こすようになった。

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