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運動部の部活指導から暴言と体罰が無くなるのは不可能







私が興味深く思うのは、運動部の部活でのハラスメントが膨大であるのに対し、文化系部活でのハラスメントが(たぶん)ゼロに近いということだ。暴言や体罰による生徒の自殺もほとんど無いのではないか。つまり、運動部の部活において、暴言や体罰はほとんど不可分のものであると私は見ている。なぜそうなるのか、心理学的には興味深い問題だと思う。
単純に言えば運動というのは反射神経の技能で、理性で行動するものではない、という大前提があると思う。その反射神経を鍛えるのに、暴言や体罰で、動物を調教する感覚で指導するのが運動部の部活だと言えば、言い過ぎだろうが、近い気はする。説得したり論理的に思考する分野ではないわけだ。つまり、これからどのようにしても、運動部の部活から暴言と体罰は無くならないだろう、と予言しておく。ついでに言えば、運動部の部活関係者(生徒の父兄などや部活生本人)もこうした「厳しい指導」を確信的に容認しているのがほとんどだと思う。

(以下引用)








言葉の暴力という目に見えぬ傷を負わせた教員に対する懲戒免職は沖縄が初めてで、これに続いて処分を出した岩手県の姿勢は評価できるだろう。


とはいえこの一件、他府県で起きた運動部活の自死事案とは大きく異なる点がある。A氏は2015年に不来方高校へ赴任する際、前任校だった盛岡一高での暴力指導を元バレー部員に訴えられ係争中だった。それにもかかわらず、そのことを新谷さんら保護者や部員たちが知ったのは翼さんが亡くなってからだ。


つまり、当時A氏を任用した学校側はこの事実がありながら、A氏を体育科もある県内屈指の男子バレー強豪校の顧問にしたのだ。


他にも、その後の県教委の調査で、翼さんが在籍する以前にも、同校で元顧問の指導のまずさがうかがえる別の事実が報告されている。つまり、学校側の対応次第で、翼さんがA氏と出会わずに済むチャンスはいくつもあったのだ。これについて翼さんの父・聡さんは、


「そうした教員だとわかっていれば、指導を任せたりしませんでした。(A氏を)処分しようと思えばできたのに。その機会をことごとくスルーし、彼の過去を僕らに報告しなかったことは大きな罪です」


と憤る。


当時、教育委員会が作った調書。対象はバレー部員や教員など関係者53人。調査書はA4で20ページにわたり、部員や他教員に、顧問による亡くなった生徒に対する言動などを聴き取りしている(写真:筆者撮影)© 東洋経済オンライン 当時、教育委員会が作った調書。対象はバレー部員や教員など関係者53人。調査書はA4で20ページにわたり、部員や他教員に、顧問による亡くなった生徒に対する言動などを聴き取りしている(写真:筆者撮影)

翼さんが亡くなった際、A氏による不適切な指導の様子が書かれた県教育委員会の調書が出された。そこには「おまえのせいで負けた」「部活やめろ」といった数々の暴言、さらに、助言を求めても無視するなど生徒を心理的に追い込む行為があったことが、合わせて44項目も挙げられている。しかし、学校側は遺族らに対し「指導に問題はなかった」と言い続けた。


このように、学校関係者がかばい続けたことも手伝ってか、岩手の件は初動調査が遅々として進まなかった。第三者委員会が開始されるまで半年以上を要し、そこでA氏の不適切な指導が自死の要因と認定されたのが2020年7月。そこからA氏の処分決定までさらに2年を費やした。


ここまで動きが遅いことについて、翼さんの事件を担当してきた草場裕之弁護士は、部活動における暴言について軽視する関係者が少なくなかったことが理由にあるのではないかと指摘する。

「指導に問題はなかった」と繰り返した学校側

翼さんの自死がわかった後、当時の教育長は同事案に対する質問を受けた県議会などの公の場で「指導に問題はなかった。(自死は)翼さんのこころの問題だ」と繰り返し発言している。当時、草場弁護士はそれにも驚いたという。


「A氏は翼君を殴ったり蹴ったりしたわけじゃない。だから問題ないだろうという見方だったと捉えました。私が知る限りでは、教員側から反対意見が出たとは聞いていません。岩手県の教育関係者の上層部が、暴言などパワーハラスメントへの認識が甘かったと言えるのではないでしょうか」


上述した「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」、実は暴力行為の定義について「言葉や態度による人格の否定、脅迫、威圧、いじめや嫌がらせも含める」と通達されている。残念ながら、翼さんの問題ではそれがトップたちに理解されていなかったようだ。


スポーツ指導の現場で暴言やパワハラが容認されるのは、各地で起きている問題ともいえる。


(出所) 日本スポーツ協会ホームページ© 東洋経済オンライン (出所) 日本スポーツ協会ホームページ

日本スポーツ協会が設けた暴力行為等相談窓口へ、2014~2021年度の8年間に寄せられた相談912件のうち、暴力や暴言を除いた「パワーハラスメント行為」が29%、「暴言」28%。合わせて57%にのぼる。3番目に多い暴力は20%。相談を受け持つ弁護士によると「暴力は年々減っているものの、手が出ないぶん言葉の暴力が強くなる傾向」だという。


一般社会で許されない暴力が、ことスポーツや部活動では指導の一環として長く容認されてきた。このため、次の段階である「暴言・パワハラ」を禁忌とする人権感覚には、今もって個人差が大きいようだ。


岩手県内の教育機関でバレー指導にあたっているある男性教員は、「中高とも、バレー部指導者の中には暴言がひどい人は少なくありません」とため息をつく。


「新谷君が亡くなってから第三者委員会で暴言やハラスメントが認定されるまでの1~2年間、Aさんをバレー会場で見かけることもあった。ベンチにこそ入らないがチーム運営はやっていたと思う」


万が一そうでなかったとしても、生徒が亡くなっているにもかかわらずそういったことを許してしまう周囲の甘さを感じたという。

若者が亡くなっても「指導だから」と擁護した周囲

当時、翼さんのチームメイトの保護者からは、A氏を擁護する嘆願書も出されていた。


不来方高校バレーボール部保護者らがA氏救済を求めた嘆願書署名の募集用紙(『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』より)© 東洋経済オンライン 不来方高校バレーボール部保護者らがA氏救済を求めた嘆願書署名の募集用紙(『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』より)

「そうした空気の延長線で、嘆願書も出されたのでしょう。人が亡くなっている中で、なぜ周囲は嘆願書のようなものを許したのか。結果的に、他の指導者に向けて、暴言くらい何でもありませんよと間接的に伝わってしまった気がしてなりません」(男性教員)


日頃、中高の教育現場を取材する筆者も、いまだ「声が大きい人」が管理職から「力のある教員だ」と評価されることがあると感じる。高圧的な指導でまだ人生経験も浅い生徒を萎縮させることで、生徒を強引に統制する。それをよしとする文化が学校現場に残る限り、パワハラの火種は残り続けるのではないか。


翼さんが亡くなった当時、月命日に遺族へ手紙を書き送っていた同校教員もいた。受け取るたび、その思いやりに涙したという父の聡さんだが、A氏の懲戒免職とともにその教員は戒告処分にされた。


「処分決定に時間がかかっている間に定年を迎えた人たちは何も処分されず、現役の教員だったばかりに処分を受けてしまったのです。本来、責めを負わなくてはならないのは誰なのでしょうか」


これらの件について、同県教育委員会教職員課に話を聞いた。筆者の取材に対し「ご遺族の思いは聞き及んでいるが、すでに教職員ではない方には、法的には懲戒というかたちでは処分できない」と答えた。


「それ以外に何があるかということも、申し上げる段階ではない。報道があったので、当時の関係者は承知はしているはず」(同)

遺族への謝罪は行われていない

A氏から遺族への謝罪はいまだにない。


「弁護士の方を通じて、謝罪を求めてきましたが、返事はありません。心の底から悪かったとは思っていない、としか思えません。私たち家族は、彼の考えが変わることはもう諦めています。あとは引き続き、再発防止策定委員会に出て、過去の学校長らの不作為について解明していくよう働きかけていきたい」(聡さん)


教育委員会や管理職などのトップ層が、正しい認識を持つことが重要だ。それは、生徒の命を守ることはもちろん、部活動に熱心にかかわる指導者たちを誤った行為から守ることにもなる。岩手のこの事案が、人の命を奪うほどの暴言が蔓延する日本のスポーツに与える影響は決して小さくない。








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