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浮かれ女盛衰記

作者名も詩題も知らないが、おそらく森鴎外主宰の新声社の翻訳で、七五調の音声が快くて覚えている詩がある。ただしうろ覚えである。


流れの岸のひともと(一本)は
御空の色の水浅黄
波ことごとく口づけし
はたことごとく忘れゆく


「はた」は「また」と同じ。もちろん、これはある種の女性と男たちの関係を描いたものだろう。
これで思い出すのが、大島弓子の「海にいるのは」で、主人公(あるいは副主人公)の母親が娼婦で、その女性が窓辺で椅子にかけて時折口ずさむ詩である。「海にいるのは」というフレーズ自体は中原中也の詩の一節だろう。

海にいるのは男たち
寄せる偽り
返す真実
寄せる真実
返す偽り

これもうろ覚えで、最後の2行は私が作ったかもしれない。
で、このふたつの詩で私が連想するのはバルザックの「浮かれ女盛衰記」という小説のタイトルで、私はその小説自体は読んでいないが、男女関係においてある種華やかな生き方をしてきた女性の幸福と悲哀を表す題名だな、とは思う。もちろん、娼婦と単なる「浮かれ女」を同一視はできないが、男女関係という点では同一だ。まさに、男たちは彼女に一時期だけ近づいて消えていくのである。川岸や海岸に寄せる波と同じである。もちろん、男たちの中には彼女を「忘れ得ぬ人々」のひとりとして一生記憶に残している男もいるだろう。



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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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