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日本のポップスは実は演歌と同じ?

まあ、記事自体は中森明菜再売出しの提灯記事だろうが、書かれた内容(マーティ・フリードマンの言葉)の中には非常に面白いものがある。日本のポップスはピアノで指一本で弾けるというのは、成る程、である。西洋の楽曲は昔から多重奏がほとんどだ。クラシックの土壌があるから、ポップスも多重奏的である。しかしまた、その「単調さ」が日本人には安心感を与えるのだろう。
ちなみに私は歌手としての中森明菜にはまったく興味は無かったが、「古畑任三郎」シリーズの最高傑作は彼女がヒロインをやった回だったと思っている。演技がどうこうではなく、彼女の性格がそのまま役柄と一致していた感じだった。

(以下引用)

日本人はなぜか歌謡曲のメロディを捨てられないー中森明菜再始動宣言・マーティがその魅力を読み解く

集英社オンライン9/15(木)17:01


日本人はなぜか歌謡曲のメロディを捨てられないー中森明菜再始動宣言・マーティがその魅力を読み解く

日本人はなぜか歌謡曲のメロディを捨てられないー中森明菜再始動宣言・マーティがその魅力を読み解く



昭和歌謡の人気が急激に高まっている。ブームを牽引するのは、昭和をチラリとも見たことがない平成生まれ世代だ。なぜ、昭和歌謡は令和でも愛されるのか? 中森明菜の復活は受け入れられるのか? 日本の楽曲にも精通する米国人ギタリスト、マーティ・フリードマンに聞く!

昭和歌謡も最新曲も、メロディは同じ!?





80年代アイドルが青春ど真ん中だった親をもつ平成生まれが、昭和歌謡にハマっている





――先日放送された『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日系)に昭和アイドルに詳しい博士ちゃんが登場して深い知識を披露するなど、平成生まれに昭和歌謡好きが増えた印象があります。なぜだと思いますか?

大きいのは昭和生まれの両親からの影響じゃん。家や車の中で親が好きな歌を聴いたり、子供の頃に親とカラオケに行って一緒に歌ったり、そういう形で無意識のうちに耳に入ってきます。その影響は強いですよ。僕も子供の頃に好きだったのは、親が聴いていた曲でした。

――確かに親の影響は大きそうです。

しかも、今は気になったらすぐYouTubeで見られるじゃん。オススメに次々と関連する歌手や曲が出てくるから、昔の曲に接する機会がたくさんあります。

――とはいえ、昭和と今では音楽が全然違うと思うんですよ。曲作りも音作りも格段に進化しています。親の影響下から脱して、「古い!」と離れていくのが自然な流れかと。

メロディラインは最近の曲も昭和歌謡もそんなに変わらないです。AdoもYOASOBIも、メロディのセンスは昭和歌謡とほとんど同じだからね。

――え? どういうことですか?

日本のサウンドプロデュースは本当に素晴らしいです。だからAdoもYOASOBIもパッと聴いたら歌謡曲っぽくない。だけど伴奏をミュートして歌だけ聞いたら、昭和歌謡と変わりません。

――むむ…。ちょっとすぐには想像が…。

別の言い方をすると、歌謡曲のメロディは必ずピアノで、指一本で弾けます。それが歌謡曲の特徴で、ずっと変わりません。

――言われてみれば、昭和歌謡も令和の曲も指一本で弾けそうな気がします。

日本人はなぜか歌謡曲のメロディセンスを捨てられないんですよ。だからポップスでもダンスミュージックでもビジュアル系でもラップでも、売れる曲には歌謡曲のメロディセンスがあります。どんなジャンルでも、歌謡曲のセンスが入らないとあまりウケないですね。最近の曲にもそのセンスが入っているから、若い人が違和感なく昭和歌謡を受け入れられるんです。

――ガワの形が変わっても、芯の部分のメロディは昭和歌謡を引き継いでいたんですか。

そうですね。僕は歌謡曲のメロディセンスが大好きだから、それがずっとキープされている日本は本当にパラダイスです。アメリカだとこうはいきません。テイラー・スウィフトとビートルズに似たメロディは無いじゃん。1950年代や60年代と今の音楽は全く違いますし、どんどん変わります。日本は独特なんですよ。






ハワイに住んでいた幼少期、日系人が聴いていた演歌をきっかけに日本の歌謡曲に興味をもちはじめ、『紅白歌合戦』も観ていたという




マーティを驚かせた明菜の『瑠璃色の地球』。本家・聖子版を超えた!?

――ところで、80年代を代表する歌姫・中森明菜さんが8月30日にTwitterアカウントを開設し、再始動宣言をしました。NHKで放送された1989年に行われたライブのリマスター版の放送も大好評でしたが、明菜さんの曲は聴いたことありますか?

外国人の割に日本の音楽に詳しいけど、知識に変なアナがあるから、明菜ちゃんはあまり聴いたことがないんですよ。(松田)聖子ちゃんが大好きだから、カバーした『瑠璃色の地球』は聴いたんだけど、ビックリしたよ。

――明菜バージョンの『瑠璃色の地球』は2002年に発売されたカバーアルバム『-ZEROalbum- 歌姫2』と2006年に発売された松田聖子トリビュートアルバム『Jewel Songs』に収録されていますね。驚いた理由とは?

明菜ちゃんは声や歌い方が絶妙に優しくて、曲の切なさを綺麗に表現していて感動しました。アレンジも美しい。僕は聖子ちゃんが歌うこの曲が大好きだったんだけど、明菜ちゃんは聖子ちゃんバージョンを超えました。簡単な曲じゃないですよ。まるで自分の曲のように歌いこなしていて、トリビュートアルバムで最も目立った曲です。

――80年代は「二人はライバル関係」が世間の共通認識だったんですが、ご存知ですか?

僕はそのことを知らなかったんですよ。普通はライバルの名曲を歌わないじゃん。そういうところも明菜ちゃんは素晴らしいです。

――その視点での感動もあるんですね! では、ここからは2014年に発売されたベストアルバム『オールタイム・ベスト−オリジナル−』を聴きながら、楽曲レビューとその魅力について探っていきたいと思います。

僕は全然知らないから、リアルタイムを知らない平成世代と同じ感覚で聴けるね。






真剣に明菜さんの曲を聴くマーティ。プロかつ外国人視点からの意見は、日本人には目から鱗の意見も!




令和に通用する明菜ソングNo.1は『サザン・ウインド』

――ベストアルバムをフルで聴いた印象を教えてください。

『スローモーション』(1982年リリース。以下、曲名の後の年号はリリース年)は隣のお姉ちゃんが歌っているようで、アイドルらしい当時の歌謡曲だね。男は歌が上手すぎると癒やされません。セリーヌ・ディオンやビヨンセに全く癒やされないじゃん(笑)。『少女A』(1982年)もそう。癒やし系の声。でも、『セカンド・ラブ』(1982年)は違いますね。

――全て同年リリースの曲ですが、具体的にどう変わったんでしょうか?

溜めながら、演歌歌手みたいにビートより遅く歌っていますね。当時のアイドルは歌がヘタウマだったり、実際に下手な人も多かったじゃん? そうすると子供(若い子)は遅くするセンスがないから急いじゃうんです。ところが彼女は曲をコントロールしているから、どのアイドルより上手です。このサウンドに癒やされて喜ぶファンが多かったと思います。

――分かりやすいのは、どの曲でしょう?

例えば『1/2の神話』(1983年)です。僕の昔の歌謡曲のイメージはこの抑えめでクールな歌い方。これ以降、彼女みたいに歌う歌手が多く出たんじゃない?

――以降の曲の印象を教えてください。

『禁区』(1983年)はフルボイスで強く歌ってます。「歌謡曲とは?」と聞かれたら、「これ!」と言いたくなるお手本みたいな曲(笑)。『飾りじゃないのよ涙は』(1984年)は、幼い部分がなくなった声に大人を感じます。『ミ・アモーレ』(1985年)になると、歌い方がおばちゃんぽいですね。

――まだ19歳ですよ(笑)。ただ、歌い方の変化は、リアルタイム世代は意外と気づいてないかもしれません。

彼女自身が曲によってどういう歌い方がふさわしいかを考えて、曲に合わせて歌い方を変えてますね。そのセンスに加えて、当時のディレクターやプロデューサーも彼女の良さをうまく引き出していたと思います。

――強く印象に残った曲はありますか?

『サザン・ウインド』(1984年)は、ボーカルだけを取り出して、今の時代の楽器の音、音色の伴奏をつけたら、普通に今の時代の曲になります。

――この曲から『TATTOO』(1988年)まで、16曲連続オリコンシングルチャート1位を獲得しました。全盛期を象徴する一曲です。

そうでしたか。これは、リミックスがすぐできそうですね。この前までの曲と比べて、歌謡曲的な色が薄いですから。それと、ひとつ、とても好きな曲ができました!






「アイドルの曲でもギターソロやギターのキメが多いから、うらやましい」とギタリストらしいエピソードも。




世界でも稀有な歌い方をする明菜は現代でも通用する!

――好きになった曲は?

『難破船』(1987年)です。ボーカリストとしての魅力がこれでもかというくらい詰まっています。ささやくような歌い方、ガチセクシーな声、表現力、どれも素晴らしい! これは溶けるね。幸せです。しかも伴奏が80年代っぽくないから、音の古さが気にならず、声に集中して聞けます。

――ベタ褒めじゃないですか!

そうね。この曲の明菜ちゃんみたいな歌い方をする人はアメリカにいないんですよ。1950〜60年代に活躍したジュリー・ロンドンとか、ナイトクラブ歌手が近いと思います。イージーリスニング(1950年代〜1970年にかけて人気があったジャンル。ムード・ミュージックともいわれる)に近いから、大人っぽさがあって、もうアイドルの範疇じゃないよね。普通の歌手になりたかったんじゃないですか。

――どの辺りからその気配を感じましたか?

『十戒』(1984年)からです。彼女は、当時なりのセクシーなアピールで、聖子ちゃんとの違いを打ち出そうとしていたかもしれません。その後の『ジプシー・クイーン』(1986年)は、間違いなく聖子ちゃんよりセクシー。ディープなボイスでセクシーな表現をしようとしてます。

僕が聴いて感じたことですけど、曲そのものは聖子ちゃんの方がワンランク上だと思いますが、表現の引き出しは明菜ちゃんの方が豊富に持っていたかもしれません。

――令和に中森明菜さんは受け入れられそうですか?

今の若い子がイイ!と思う要素はかなりありますね。カッコよさに若い子が憧れて、もっと調べたくなって、レトロファッションを真似しはじめたりして、新しいアイデアが生まれそう。

そう、あとこれ大切なんですが、明菜ちゃんの声は誰もが受け入れやすくて、嫌われないんです。聖子ちゃんは聴いたらすぐ誰かわかるけど、印象が強すぎる分、好き嫌いが分かれますね。

――明菜さんから「プロデュースして欲しい」「ステージでギター弾いて」などの依頼があったら?

ずっとファンだった聖子ちゃんと同じぐらいイイと、今日思いました。だから、プロデュースは本当にやりたいですね。マッシュアップしてモダンにすれば、タイムレスなバージョンはいくらでも作れます。明菜ちゃんの曲は現代の音楽と共通する良いポイントがあるから、けっこう輝けるはずね。新曲が売れるかは曲次第ですから、そこは気にしないで。
明菜ちゃんがやりたければ、絶対に復活していいと思います。その時は、喜んでギターを弾きますよ!

取材・文・撮影/祝夙川はと

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