すでに梅雨入りしたとみられる地域がある。日本列島は、雨期を迎えた。
毎年のように、豪雨による災害が起きている。今年も悲劇が繰り返されないか、心配だ。
記憶に残るのは、2018年7月に起きた西日本豪雨である。
京都、滋賀を含む14府県で、300人以上が濁流にのまれたり、土砂崩れに巻き込まれたりして犠牲となった。
この豪雨では、東海から九州にかけて、停滞した梅雨前線に多量の水蒸気が流れ込み、15個もの「線状降水帯」が、できていたとされる。
いつ、どこに現れるのか、あらかじめ分かっていれば、住民を早めに避難させるなどして、被災を避けやすくなる。
今月から気象庁は、半日前予報を始めた。豪雨被害の低減につなげてもらいたい。
線状降水帯は、積乱雲が線のように連なったもので、同じ地域に大量の雨を降らせる。台風よりも狭い地域で短時間にできるため、発生を予測するのが非常に難しい。
西日本豪雨などを受けて気象庁は、予測体制の強化を図ってきた。
予報は、発生が見込まれる約12時間前~6時間前に、発表される。
例えば、「近畿では、夜に線状降水帯が発生して、大雨災害の危険度が急激に高まる可能性がある」などと、やや大ざっぱな表現になる予定だ。
住民の避難行動を5段階で示す「警戒レベル」とは、連動していない。
発生の予想まで6時間を切っている場合は、高齢者らが避難する「警戒レベル3」相当の警報を出す。
すでに線状降水帯ができていて、激しい雨が降り続くと、避難を指示するレベル4以上に当たる気象情報を発表する。
あらためて警報などで注意を呼び掛けるのなら、予報を出さなくてもよいではないか、との見方があるかもしれない。
しかし、半日前に発生が察知できれば、状況によっては、外が明るいうちに移動することが可能となる。高齢者らの避難には、大いに役立つだろう。
災害リスクを少しでも減らすための情報だと受け止め、注意を払っていきたい。
課題は、なんといっても予報精度の向上である。
気象庁が、線状降水帯の発生時に発表する「顕著な大雨に関する情報」の基準に達した19~21年の事例を検証したところ、実際に予測した地域で発生した「当たり」は4回に1回程度で残りは「空振り」だった。
ほかに、発生を予測できなかった「見逃し」が、3回に2回程度みられた。これでは、あまりに心もとない。
気象庁は先月、全国の大学や研究機関と連携して、予報体制の改善に取り組むと表明した。
人工衛星などを活用し、大気中の水蒸気の量や分布状況を調べる。データをスーパーコンピューターで解析して、新たな予測モデルを開発するという。
着実に成果を積み重ね、半日前予報に対する国民の信頼を高めてほしい。