一月中旬に入って昇進任命などにあった士官とともに、奥のお目見えを許され、正服を着て宮廷に参り、人々と輪になって一間に立って臨御を待つうちに、老いて体のゆがんだ式部官に案内されて妃が出ていらして、式部官に名を言わせて、ひとりびとり言葉をかけ、手袋を外した右の手の甲に接吻させなさる。妃は髪は黒く、背は低く、褐色の御召し物があまり見栄えがしない代わり、声音がとてもやさしい。「あなたはフランスとの戦いに功績のあった誰それの親族か」など懇ろに話しかけなさるので、いずれの者も嬉しいと思っているだろう。従ってきた式典の女官は奥の入り口の敷居の上まで出て、右手に畳んだ扇を持ったまま直立している、その姿がとても気高く、鴨居柱を額縁にした一枚の油絵に似ていた。私は何気なくその顔を見たら、この女官はイイダ姫であった。ここに、そもそもどうして。
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