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一神教の本質

知人から貰った本の中に小谷野敦(「あつし」とも「とん」とも読ませているようだ)の新書がいくつかあって、どれもなかなか面白いので、今、最後の「日本人のための世界史入門」を序論だけ読んだところだ。
彼は論争的(カタカナ語があるが、失念)な精神的体質の人間で、やたらに他人というか他論者を批判し食ってかかっているが、だいたいにおいて他者(他論者)を非論理的だと思っているらしい。特に、途中で持論を適当に変えている人間や、その議論の中の矛盾には我慢がならないようで、私から見ればゴリゴリのリゴリズム(rigorism:厳格主義)人間だが、その自分の論説自体、途中で内容がズレたりしているようだ。まあ、論理への過信だろう。そもそも人文系の議論に論理がどれほど有効か、分かったものではない。一部では通用しても、その一部以外には通用しない論である場合も多いだろうが、それを「論理的一貫性がない」と批判するのは、攻撃自体が愚かなのではないか。世のあらゆる事象は多岐に渡っており、それぞれの境界も曖昧なのである。
だが、小谷野の書く文章は面白いし痛快だから読む価値はある。しかし、その主張をすべて信じるのはお勧めしない。まあ、7割か8割くらいは妥当、という感じか。その主張自体、それほど意義があるようにも見えない。わりとマスコミ論者同志や人文系学問内部の問題なのである。やや右派的思想が感じられるが、「軽評論」と言うべきだろう。根が正直に思えるので、意図的に世間を騙す意図は無いと思う。
要は、「高校教科書や大学教養課程レベルの知識も無い人間が多すぎる」ということへの苛立ちが、彼の論争的体質の中心なのだろう。まあ、それでいくつも本を出せたのだから結構なことではないか。

さて、本題に入る。前書きに小谷野のことを書いたのは、彼が「民主主義」に否定的で、また「民衆史観」にも否定的なようなので、「民主主義」と「民衆をどう見るか」の問題を論じ、ひいては政治体制としての民主主義の是非を考えてみようか、ということだ。

と思ったが、先ほど、「日本人のための世界史」を読み進めて、もっと興味深い問題に出会ったので、そちらを紹介する。この引用だけでもかなり物議をかもしそうな文章である。論争屋小谷野の面目躍如だ。これ(下記引用内容)を言った人を私はほかに知らない。だが、同じ思想を持つユダヤ教については東海アマ氏が何度も書いていて、それは何も「タルムード」を読まなくても、「旧約聖書」を読めば、その思想は明白なのだから、この思想は一神教の本質だと私は思っている。その中でキリスト教だけが異質と言えば異質なのである。だからキリストは十字架で処刑されたのだ。
さてその思想とは何か。前掲の書から引用する。


「『クルアーン』を読んで驚くのは、それが『旧約聖書』とほとんど内容が同じということで、(中略)だからイスラム教は、本来キリスト教徒とユダヤ教徒は『啓典の民』として特別扱いし、言葉をもってイスラム教に改宗するよう説得すべきだとしているが、それ以外の民、つまり仏教徒(無神論)などは、問答無用で殺していいことになっている。


これは大問題の発言で、私は「クルアーン(コーラン)」を読んだことは無いので、この言葉が事実かどうかは分からない。しかし、イスラエルという国の軍隊やイスラム系テロリストの強さや残忍さ、あるいは殺しても死なないようなしぶとさ、執念深さの根底には、この思想があるのではないか、と思われる。日本で言えば信仰をバックボーンとした一向一揆のようなものだ。「厭離穢土欣求浄土」の思想が、戦国最強の織田信長の軍隊をもっとも悩ませたのである。

ちなみに、この文章を読む前に、私は娯楽記事中心の別ブログでこんなことを書いている。

(以下自己引用)注記すれば、キリスト教は「汝の敵を愛せよ」(あるいは「良きサマリア人」のエピソード)に見られるように革命的一神教であるので、ユダヤ教やイスラム教と同列ではないが、そのキリスト教国家が異民族を虐殺し、奴隷化したのは言うまでもない。つまり、キリスト教は彼らに根付いていないのである。これを「偽善的キリスト教」とでも言っておく。「偽キリスト教」でもいい。キリスト教の変質については詳しくは「革命者キリスト」参照。


前に「詩情と笑い」という一文で「ナルニア国ものがたり」をつまらないと批判したが、その理由を作者が詩人でありユーモアが欠如しているから、とした。その部分を後で自己引用するが、その前に、少し考えが深化した気がするので、それを先に書く。それは「一神教には反戦思想は無い」というものだ。
これは当たり前の話で、一神教というのは、その神を信じている者は善、信じない者は悪であるという思想であり、つまり、その神を信じない相手がどういう国や民族であろうと、それは悪なのであり、戦争して国土を奪ってもいいし、その国民を皆殺しにしても奴隷にしてもいい、となる。つまり「帝国主義は一神教文化圏の必然」なのである。




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