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少年騎士ミゼルの遍歴 32

第三十二章 不死の泉

 疲労から僅かに回復して、立ち上がる気力を取り戻すのに、どれほど休んだだろうか。
(水、水が欲しい……)
ミゼルはやっとのことで立ち上がり、歩き出した。槍を地面から拾い上げ、それを杖代わりにしてよろめきながら歩いていくと、泉の水音は段々と高くなってきた。
 角を曲がると、そこに不死の泉はあった。
 神秘的な青い光とともに地面から溢れ出すその水は、見る者を永遠の安らぎの世界に誘うかのようである。
 ミゼルは、ふらふらと泉に近づいた。喉の渇きは、今では耐え難いものになっていた。体も疲れ、回復を求めている。この泉の水を飲み、体を浸せば、永遠の命が授かるのだ。それが、なぜ悪いのだ?
 泉に差し伸べられたミゼルの手は、しかし途中で止まった。
 ミゼルの心に、祖父シゼルの顔が浮かんでいた。シゼルの悲しみに満ちた顔は、こう言っていた。
「ミゼルよ、マリスを探してくれ。もう一度わしをマリスに会わせてくれ」
 ミゼルは目を閉じて、水の誘惑をこらえた。
 再び目を開いた時、不思議なことに、喉の渇きはおさまっていた。

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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