・藤田に「承認」を与えた翌日。晴れた日の午前。
・自分のベッドで横になって天井を見ながら考え事をしている銀三郎。
銀三郎(忌々し気な顔で呟く)「ええい、くそっ。あんな連中がどうなろうと知ったことか!」
ベッドの上で身を起こす銀三郎。窓辺に歩み寄り、何か考えながら親指の爪を噛む。
銀三郎「畜生、自分でつけた火を自分で消しに行くとは、俺もよほどの阿呆だ」
そう呟きながら外出の身支度をする。
・家から馬で出る銀三郎。
・馬上から見る街中の風景の描写。
・その風景の中に、工場労働者のデモ隊の姿が見える。(ほんの点景でいい)
・郊外の野を行く馬上の銀三郎。馬を軽速歩で走らせる。
・道の傍だが、林の中に隠れるような田端兄妹の家の前に岩野家の自家用車が止まっている。その車は今出発しようとしていたが、停止して中から理伊子が出てくる。
理伊子(運転手に)「お前は先に帰りなさい。私は歩いて帰るから遅くなるとでも言っておいて。ここで起こったことは口外無用です」
・初老の運転手うなずく。
・運転手の視点で、ずっと離れたところで馬上の銀三郎に何か必死で訴える理伊子。
・銀三郎が理伊子を拾い上げて自分の後ろに乗せ、来た方向に馬の首をターンさせて走らせる。
・「困ったお嬢様だ」という感じで首を横に振り、車を出発させる運転手。
・ほんの暫く後、田端兄妹の家の横から懲役人藤田が姿を現し、車の去っていった方角を見送る。そして、玄関の前に立つ。凶兆のような野鳥の声。
(このシーン終わり)
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