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「尻尾」考

九井諒子(「ダンジョン飯」の作者)の短編集の中の「現代神話」の中で、馬人(ケンタウロス)である奥さん(旦那は猿人=人間)が、自分の尻尾のことを「尻毛」と言うのだが、成る程、そう言えば尻尾(しっぽ)というのは尻毛だったのだなあ、と思い、逆になぜ「尻尾」という言葉が生まれたのか、という疑問に至った。
というのは「尾」は尻にしか生えないからで、頭や肩に生えたりはしないからだ。それをなぜわざわざ「尻」という言葉につなげる必要があるのか。まあ、「お」という短すぎる言葉は、発音する時に心理的安定感が弱いから、ということもあるだろうが、それでも「尻」と「尾」をつなげるのは無意味である。
で、思いついたのが、これは「尻緒(しりお)」が本来の言葉で、それが発声の便宜上「しっぽ」という発音に変化し、「ぽ」では意味不明の言葉になるので、「緒」を「尾」という漢字表記にして念押ししたのではないか、という推理である。
ちなみに「緒」は「紐」のことで、和歌の「玉の緒よ絶えなば絶えね 長らへば忍ぶることの弱りもぞする」などの「玉の緒」という言葉は、「玉」が「魂」の意味で、「玉の緒」全体は、「生命や精神(魂)と肉体を結ぶ紐」が転化されて魂そのもの、あるいは生命そのものを表すようになったのだろう。

ちなみに「ダンジョン飯」のファリン(主人公?の妹で、気立てが良い少女)が変化するキメラは、上半身が人体で、ある意味「ケンタウロス型」のキメラである。つまり、作者久井は、わりとケンタウロスが好きなようだ。

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