建設業の現在の苦境(豊作貧乏のような話だ)は、為政者の相続いた近視眼的政策の結果である。建設業界の人減らしは、それをやらないと立ち行かなかったのだから、仕方の無いことだろう。しかし、3.11が起こった時点で、こうなることは予測できたのではないか。政府には、あれから3年の余裕はあったわけである。建設業界自体には金がまだ回ってこなかったのだから、人を雇う余裕などあったはずはない。ならば、政府がやるべきことは、「資金の前渡し」しかないのではないか。米国債を買ったり、外国に多額の援助をやる余裕があるならば、その金を国内の必要な部分への手当てに使うべきだろう。その金は国内に循環する金だから、景気回復にも好影響を与えるはずである。これこそが政府がやるべきことだ。
ところが、安倍政府が自らの「功績」として得々と語っている「円安」はどういう効果をもたらしたか。建設業界での資材高騰は一例でしかない。エネルギーや資材関係を中心に、すべての物価が上昇し、国民をどんどん窮地に追い込んでいるだけである。それに消費税増税が輪をかけて、売る側、買う側、すべてを苦しめているのである。笑いが止まらないのは、輸出戻し税のある輸出業者だけである。
安倍総理という「お子様政治家」は、宗純氏の言葉を借りれば、「全能感細胞」で頭がいっぱいになって、まともな判断ができないのである。彼のお仲間も同様だ。「労働者が足りない? ならば移民すりゃいいじゃない」は、「パンがないならケーキを食べればいいじゃない」と同レベルの「高貴な身分の馬鹿」の発想だ。
私は、安倍総理は悪党だとは思わない。ただ、無知無学で馬鹿なだけだ。行動力はなかなかあるし、ブッシュジュニア同様、他人の台本で動く分には操り人形としても使える素材だと思う。であるから、安倍総理を適切に動かす人間さえいれば問題は無いのだが、もしも彼が自分で判断して行動するならば、日本は最悪な状態になるだろう。もっとも、そういう状態が来ることで、日本国民が、さすがにこれではいけないと行動するならば、それも悪くはない。
(以下引用)
好況なのに苦境 アベノミクス効果ねじれる建設業
カナロコ by 神奈川新聞 4月12日(土)15時0分配信
長らく低迷が続いてきた建設業界に「春」が訪れている。アベノミクスによる公共事業増に不動産市場の回復、2020年の東京五輪開催に向けた特需と好条件が重なった。なのに業界は苦境にあるという。資材高騰と人材不足という二重苦が原因だ。好況なのに苦境-。その内実からは、蛇口を開け閉めするかのような政策に翻弄(ほんろう)される業界の苦悩が浮かび上がってくる。
■二重苦
大量の鉄筋が積み上げられた横浜市港北区の建設現場。10人余りの職人が黙々と溶接や掘削を進めていた。
請負先の市内の建設会社幹部がため息をついた。
「大幅なんてもんじゃない。この鉄筋だって1トン当たり4万円程度だったものが、いまや7万円台だ」
わずか1年余りで1・5倍を超える高騰。「採算ぎりぎりの価格で落札している。資材が高騰し、見込んでいたわずかな利益も消えていく」。増収減益の構図に幹部は「世間で言われているような好況ではない」と表情を曇らせる。
別の県内ゼネコンは人材不足が悩みの種。最近も高齢者施設の完成が職人の手が足りず、3月末の納期に間に合わなくなるところだった。
最終工程の壁紙や床面を仕上げる職人を割高な賃金で大量に雇い入れ、何とか切り抜けた。積算担当者は「赤字こそ避けられたが、見込んでいた利益が大幅に食われた」とこぼす。
人材の奪い合いのリスクを抱え、特にマンション開発では大手不動産の物件しか受注しない方針に切り替えたという。「自転車操業で成り立っている新興デベロッパーは施工費の見通しが甘いケースが多く、見込みを上回っても補填(ほてん)してもらえない可能性が高いからだ」
こうして消費税増税を見据えた駆け込み需要の恩恵も限定的に終わった。
■翻弄
資材高騰と人材不足の原因はアベノミクス-。
現場の悲鳴からは、そんな皮肉な側面も浮き彫りになる。
安倍政権は災害に強い国づくりを目指す「国土強靱(きょうじん)化」を掲げ、削減が続いてきた公共事業の復活に転じた。東日本大震災の復興事業も本格化し、資材の供給は不足気味に。アベノミクスによる円安が輸入材の仕入れ値を押し上げているという二重の皮肉もある。
一方、人材不足には公共事業が減らされてきた経緯が背景にある。
建設投資は1990年代半ばから減り始め、2010年はピーク時から半減の40兆円。仕事が少なくなれば企業も人材を抱え続けていられない。1997年に685万人だった建設業の就業者は2013年に499万人と3割減った。
「コンクリートから人へ」のスローガンを掲げた民主党政権では、一層の削減が進められた代わりに介護分野や農業など異業種への参入までもが奨励された。そこから一転しての「国土強靱化」-。
「つい数年前に55歳以上の有力なベテラン社員をリストラしたばかり。今後数年は投資増が続くだろうが、その先が見通せない以上、おいそれと人を増やすわけにはいかない」
県内ゼネコンの幹部の嘆きは、場当たり的にも映る政策のしわ寄せを食ってきた中小建設業者の思いを代弁している。
■悪循環
人手が足りず、コストに見合った仕事が取れないというひずみは全国で相次ぐ公共事業の入札不調という形でも現れ始めている。
県内の建設業界に詳しい浜銀総合研究所の湯口勉主任研究員は「現場はかなり混乱している。経済は生き物。公共事業は市場を注視し、タイミングを計らなければ奏功しない」と、公共投資による景気浮揚策の空回りを懸念する。
人材不足解消のため、政府は外国人労働者を活用する方針を決めたが、県内のゼネコン幹部は「リスクは大きい。言葉が通じなければ事故の可能性だって高い」と不安を隠さない。
そもそも人材確保の難しさには構造的な問題がある。きつい仕事の割に賃金が安く、社会保障に未加入の下請け業者も少なくない。技術を持ったベテランが減り、厳しい労働条件を敬遠する若手の採用も進まない。特に深刻なのは型枠工や鉄筋工といった技能労働者の不足で、それを外国人で賄うのは難しい。
みずほ総合研究所の大和香織エコノミストは「外国人活用のための緩和策も限定的になる見込みで、不足を補うほどの効果はない。今後想定される建設投資の増加に対応するには単純な人材増だけでなく、下請け構造の整理など労働生産性を高める工夫が欠かせない」と指摘する。
県内自治体の公共建築部門担当者は言う。
「五輪まで増加が続く建設投資に応じて人材を補えば、その後も工事が必要になる。早期に『ポスト五輪事業』の計画を示さないと、いまの人材不足は解決できないだろう」
その先行きにも不透明感がつきまとう。4月からの消費税率アップで消費の冷え込みが見込まれ、短期的には、駆け込みで膨らんだ発注の落ち込みは避けられそうにない。年末には再増税の判断も迫る。アベノミクス「第3の矢」である成長戦略も企業を後押しするだけの具体性を持ったものにはなっていない。
みずほ総研の大和エコノミストは「民間投資は17年くらいから増え、20年以降も続く」との見立てを示す一方で、こう付け加えた。「ただ、アベノミクスが成功した場合に限っての話だ」
最終更新:4月12日(土)15時0分