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風が吹いて、揺り籠が落ちて…

「長周新聞」記者座談会より転載。

「若い世代がまだ戻ってきていない。除染が進んでいないこともあるが、生活する基盤がないから戻ってこれない。」

というのは、当然と言えば当然のことで、現在の福島の最大の問題は「生活の基盤がない」ということなのである。もちろん、他府県から移入してきた物を売ることはできても、福島県民が生活の資を稼ぐ手段が無いのである。特に、農業は壊滅状態だろう。作っても売れるはずはないのだから。
本当なら、農産物はすべて東電が買い取るか、政府が買い取るべきであるに決まっているが、それをやらないのだから、農民は金を稼ぐ手段が無い。窮死を待つだけである。避難所にいれば、まだ食糧の配布はあるだろうが、これから先、寒さが厳しくなっていくと、避難所での老人の健康状態の悪化と死亡は激増するだろう。乳幼児も同様だし、若い人にだって耐え難いはずだ。かと言って、避難所を出れば、食糧の支給が受けられなくなる。まさに生き地獄ではないか。
福島県民が原発を受け入れたのだから、これは当然の報いだとするのか? 原発で潤ったのは町長や知事やその関係者だけだろう。後は、不要な公共施設が乱立しただけのことだ。庶民が潤ったわけではない。そして、原発事故の悪影響は庶民が主に受けるのである。
まあ、これが日本の現実である。

(以下引用)


諦めさせ核処分場と農地奪う意図
東北取材・記者座談会
              放射能より政治災害が深刻   2011年11月25日付

 東日本大震災から8カ月以上が経過した。本紙は震災後、毎月東北の被災地に行き現地取材をおこなってきたが、11月の取材をへて現地がどうなっているか、何が問題になっているか記者座談会を持ってまとめた。
 
 東北突破口にTPP具体化

 司会 まず今度の取材をしての概括的な感想からどうか。
 A 今回福島県内をおもに回ってみて一番感じたことは、避難している人たちが今後の見通しが立たないので、生活のめどがなく、精神的にも追い込まれた状態に置かれていることと、放射能汚染の少ないところも風評被害で福島県全体の経済が疲弊していくのが切実になってきていることだった。農家はもちろんだし、いろんな面で今後福島県がどうなっていくのか見通しが立たないと語られていた。
 飯舘村は、2年後に帰りたいということで除染を進めようとしているが、必要な予算も含めて国の動きが遅いことへの苛立ちがあった。避難生活が長引くなかで農作業をしないからうつ病が広がったり、高齢者に認知症が出たり、足腰が弱って介護が必要になったりしている。「早く村に帰りたい」という思いがあるが、村に戻ってもコメも野菜も牛も再開できるめどがない。また店も学校も病院もないことへの不安がある。
 南相馬市では、緊急時避難準備区域が解除されて4万人まで人口が戻り、学校も再開されているが、もともと4クラスのところが2クラスになったりという状況で、若い世代がまだ戻ってきていない。除染が進んでいないこともあるが、生活する基盤がないから戻ってこれない。以前の復興するぞという意気込みから、重苦しい空気を感じた。
 民間病院も医師不足で、正式な再開ができないままの状態。入院患者をおけないから手術は他の病院に行ってもらうしかなく、どこがつぶれてもおかしくないといわれていた。製造業も風評被害の影響で、取引先から断られるため市外に移転するところが出始めている。もともと雇用が厳しかった浜通りでさらに働く場所がなくなっている。双葉郡内の高校もなくなってしまったから、中学生を持つ世帯は子どもの将来のことを考えると戻ってこれない。「生活基盤を立て直さなければ戻ってこれないし、生活できない」といわれていた。「3月に帰る」と宣言した川内村も同じ問題を抱えていて、長引けば長引くほど地域の再建が困難になる状況があった。
 B 南相馬市は一番の馬力があった。本紙が夏に「広島、長崎の経験から見て福島が復興できぬわけがない」という号外を配布に行ったときには、ちょうど盆踊りをやっていて復興の空気が強かった。
 A その後「広島・長崎は復興できたんだから福島も大丈夫だ」とすごく世論になったそうだがそこに「原爆の成分と原発の成分は違うから、やっぱり難しい」という論調が出てきたそうだ。見通しがないからだんだん暗い面が出ていた。コミュニティーも崩壊し始めている。病院経営がやっていけなくなっているのに、それに対する国や東電の対応がない。農産物対策でも、国なり東電が徹底して検査して出荷させるとか、「これは大丈夫だ」というのを責任でやらない。この前のコメからセシウムが出たのも農協の検査だった。他人事のような顔をしている国と東電に対する怒りは強かった。

 就職も進学もメドない 仮設に定住できず

 C 避難生活を送っている人たちは、いつ帰れるかわからないが、仮設に定住もできないから仕事も見つけられず失業したままだ。子どもたちも避難生活で学校に行ったり行かなかったりしているから、進学も難しくなっている。さまざまなことで見通しが立たず、最初は気が張っていたが、だんだん暗くなっているといっていた。
 東電の賠償も、個人に対する仮払いは出ているが、病院などはもらっていない。1回目は1人暮らし75万円、2人暮らし以上が100万円。2回目は1人30万円という形で出た。6人家族のお母さんは、「280万円もらったけど、避難生活の5カ月で100万円吹っ飛んだ。本払いはその分をさっ引かれるから、あとどれくらい来るかもわからない」といっていた。
 B ひき続き帰るめどがないようにしているし、意図的にあきらめさせようとしている。みんながくたびれ果てて、精神的にも肉体的にもダメージを受けるように放置されている。放射能で死んだ人は一人もいないが、自殺も含めてそっちの方のダメージで死んでいる。放射能より経済災害・政治災害の方が深刻な問題になっている。
 A 中通りの福島市内でも風評被害でモモ、サクランボ、ナシ、リンゴなどの値が暴落して農業が困難になっていたり、商店も物が売れない。土地の評価が下がったことで不動産の動きが止まり、不動産業者が泣いている。最近になって、文科省が発注した放射線量測定器が低く数値を示していたから、全部返却して注文しなおし、設置されるのが来年2月くらいと報道されている。福島市内では今から避難しようかという話が出るほど、混乱しているといわれていた。福島市は夕張に移転するかという話も聞いた。しかし中通りの130万人がどこに避難するというのか。
 B みんな帰るめどはなくなり、土地の値段は二束三文になって「手放せ」となっている。土地囲い込みだ。農地を強制的に取り上げて、無一物の労働者をつくっていく。いわば資本の本源的蓄積というものだ。やはり当初の意図通り核廃棄物の処分場にするというのと、残った土地は外来資本が買い占めて好きなようにするということだ。いずれ農地は回復するし、大規模農業で企業が乗り込んでやるようにするという算段ではないか。

 放射能騒ぎ農地取上げ 宮城に続き福島も

 C 宮城は津波にあった沿岸の土地は取れても内陸は津波被害を受けていないから取ることができない。福島を放射能で騒ぎあげて断念させておいて、中通りから会津地方は大規模農業で奪い取るというなら、今中通りまで追い立てているのが納得がいく。どっちみち放射能はしばらくすれば減っていく。ヨウ素の半減期は1週間くらいだからもうなくなっているし、セシウムの半減期は2年と30年で、なにもしなくても2年経てば半分になる。広島、長崎は知らぬ間になくなった。農地が回復するのはわかり切った話だ。それまでに手放させて、そのあと核廃棄物処分場だけでなく大規模農地で取り上げようとしているのは間違いない。TPP態勢をやろうとしている。
 A 石巻市の水産加工団地でも、大きいところが数社再開し始めていたが、ほとんどはまだめどが立っていない。冷蔵庫が比較的早くに再開していたが、まわりの加工屋も再開して利用するようにならなければ経営は厳しいといっていた。10月から再開した加工会社も、社長とアルバイトの3人で仕事をしていて、今求人を出しても失業保険より低い給料になってしまうので、「もう少し頑張ってから」と話していた。だが1社だけが再開してもだめで、他の加工屋も一緒に復活しないと回らないといっていた。
 大きい水産会社が再開の準備をしていたが、従業員は「じっとしていたら人間が腐る」といってボランティアで冷蔵庫の修理をしていた。そこの工場長が、今大きな水産会社がつぶれていないのは支払いが半年間止まっているからで、何千万円単位の支払いが発生し始めればつぶれるところが出てくると話していた。
 日本製紙の工場と比べて、水産加工団地はわざとかと思うくらい遅れていて、10月にやっと電話が通った。NTTは東北電力の電柱がないからできないといい、東北電力は縦はできるけど横はできないとかいって進まなかったそうだ。地元選出の安住財務大臣が石巻全体で300億円引っ張ってきたと威張っているけど、「水産加工会社だけで100社くらいあるから、15、6社に回ればいい方。週に1回でも現場に足を運べといいたい」と怒っていた。水産が復活していないから職がない。
 C ロックフェラーが宮城に来たりしているが、石巻や東松島など平地がある場所にばかり「慰問します」とかいって来た。被災地を「更地」としか見ていない。仙台平野から石巻までを「ああいい土地だ」と思って見ているのだろう。松島の観光地から石巻にかけてはかなり広大な平野だ。「松島の観光リゾートも行けるぞ」とか。国の方は大震災、原発事故を利用してTPP路線をやるチャンスにしようとしている。東北はその突破口だ。だから住民を守る気は全然ない。経団連の米倉もモンサント(米農業大手)と住友化学が提携しているという話で、そういう連中が乗り込んで来るということだ。この間東北を大企業やアメリカのファンドなどが物色している。
 B 福島にしても帰るめどがないし、岩手なり宮城にしてもめどがない。仕事がない、職はないし、政府が金をくれるわけでもない。それでロックフェラーが来たり、GEが工場型農業をやるとかいって来たりして、そっちに国を売り飛ばそうとしている。住民はどうやって食っていけというのかだ。住民はいないのと同じで、まったく無視だ。アフリカの難民と同じ扱いだ。許し難い棄民政治だ。「国民の生命・財産を守るために国がある」という建前で税金を取っているが、そういう信頼ができない政府になっている。それは東北だけの話ではなく、日本中一緒だ。統治能力がなくなっているし、支配者の資格を喪失している。

 食料生産潰せば国崩壊 日本中の問題

 C 広島・長崎は芋も野菜も魚も食べ水も飲んで復興させた。放射能を吸っても30年後にガンになる確率が数%高まるという話だが、物を食わなければ人間はすぐに死ぬ。人間生活をする上では食べることが第一義的に大事なのだ。福島の農産物の大部分は安全なことは明らかだ。国の責任で出荷前の検査を厳重にやって、大丈夫だという安心をさせる責任がある。それをしないのは「もう農漁業はなくてもいい」という政策をやっているからだ。これは福島だけの問題ではなく、日本中の問題だ。日本民族が存立する根本的な条件である食料を放棄することになる。食料危機の実感がなく、なにを呑気なことをいっているのかということだ。
 B とにかくもうかるかもうからないかのバカげた基準一本槍で、農業も漁業も、地場産業もつぶしてしまうというけど、食料生産がなくなったら国がつぶれる。国がつぶれたらもうけるヤツもいなくなる。なにがなんでも食料生産を守らなければならないのであり、食料生産が成り立たないようにしている政治、制度の方を変える以外にないのだ。
 食料危機というような極限の場に立ったとき、食料生産がつぶれて一番困るのは都会の人間だ。田舎は自分たちが食べるものは自分たちがつくれば生きていける。日本の立て直しは生産活動の再建からであり、中でも農漁業という食料生産からだ。都会で食えなくなり、退職者も年金は削られる。田舎に戻って農業をやるなら、贅沢はできなくても食べてはいける。農漁業生産を守るという側からそれをつぶす政治をひっくり返す。そういう開き直った構えがいるということではないか。
 C 「金融恐慌が大変だ」という。金融詐欺証券が世界中にまき散らされ、国債も暴落で、資産が吹っ飛ぶといっている。それは富裕層というか小金持ちの話で、大多数の金のない者は「預金封鎖」といってもどうってことない。倒産、失業が増えて大変になるが、しかしこれ以上失う物は何もない。最後には働く者がいないとなにもできないのだから、究極のところ働く者が勝ちだ。もうかるかもうからないかの限度を超えて社会がつぶれている。しかし最後にはやっぱり物づくりをするところが一番強い。
 B 財政危機で重税にするというが、ないものは払えない。消費税を上げて、消費購買力を減らし、デフレの上にデフレをやり景気をさらに悪くして、税収も減って何をやっているのかわからなくなることは明らかだ。働く国民を食えないようにさせて、結局困るのはそれに寄生する財界とアメリカだ。そういう開き直りの時代になっている。
 C 先月岩手、宮城を回ったときにも、開き直った人は開き直っている。もう取られる物はなにもないし、笑い飛ばしていた。そういう強さはあると思う。官僚的な対応で国が金を出さないとか、書類がどうだとか難癖つけるとか、そういうのが具体的にどう阻害しているのかというのを知ったら現地は火がつくのではないかという感じがある。

 全国的に立直しの機運 売国政治との対決

 A 避難している人たちも、「警戒区域が解除になったら私らすぐに帰るよ」という感じがあった。30代以下はやっぱり心配という人もいるようだが、年配の人や40代、50代の人は関係ない。南相馬市では20代の女性も「まわりでは騒がれているけど、浜通りの人は浜通りを離れたくないし、少少リスクを背負ってでも、私たちはここに住んで立て直していきたい」といっていた。東北は農漁業を基本にした独自の歴史、地域共同体の歴史を持っていて、祭りも多いところだが、その地の歴史や文化も壊滅させてしまい、日本でなくしてしまうことに黙って従うわけにはいかない。
 C こっちの人間でも福島のモモを見たら食べたくなる。女川であがった新鮮なサンマを目の前に見たら食べたくなる。全生活を地元で送っている人たちは、少少放射能があっても住むという人は多いのは当たり前だ。それを規制をかけて復興できないようにしている。わざと嫌がらせして更地を奪い取ろうとしているということだ。
 東北復興、福島復興を阻害している力はアメリカに日本の主権も市場も完全に明け渡してしまおうというTPPの具体化としてあらわれている。それは東北だけの問題ではなく日本全体の共通課題だ。大震災を機会に東北をつぶしてしまおうという政治は、東北を突破口に日本全国をつぶしてしまおうという売国政治としてあらわれている。
 B 金融機関や大企業がもうけさえすればいいというのでは社会はつぶされるだけだ。社会を成り立たせることで個人の生活がある。社会は農漁業生産と工業生産があって流通があり、その上に政治とか文化とかがある。そして社会の基本を担う生産活動の根本原理は、もうけを競う競争原理ではなくて、みんなが助けあい協力しあって人の役に立つ製品を作るというものだ。地域生活も一人では生きていくことはできず、みんなが助けあい依存しあった共同体として生活している。これは大震災をへて全国が改めて確認した精神だ。全国の働く人たちは黙って見ているわけにはいかないし、事実ものすごい行動が始まってきている。この力を大きくする努力が求められている。


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