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金儲け主義の食い物にされる被災地

「長周新聞」から転載。
少しお堅い記事だが、こういう真面目な記事で、しかも大マスコミがけっして触れない真実を書いた記事は大事である。「長周新聞」は、貴重なネット媒体だ。
色字部分は私が強調したものである。
記事の中で、海岸を砂浜のままに残すべきだ、というボランティアグループの言い分は、勝手なものだが、一般論としては正しいと私は思うので、何とも判断できない。確かに、よそ者が勝手なことを言っている、という感じはあるのだが、海岸(砂浜)に所有権などあるべきではないだろう。そして、護岸工事などで固められた海岸線の醜さは、大きな問題の一つである。まあ、詳しい状況がこの記事だけでは分からないのだが、住民側の言い分だけを全面的に信じる必要はないだろう。そもそもインタビューに答えた「住民」が漁師なら、漁師としてのポジショントークしかしないだろうし、すべての住民が同じ意見であるということもないだろう。
細部について、そうした疑問も少々あるが、全体としては非常に素晴らしい記事だと思う。なお、これも一般論として言えば、私は環境保護団体とかNPOとかNGOとかボランティアグループという存在については、非常に胡散臭いものと見ている。社会に必要な存在ならば、ボランティアの形ではなく、ちゃんと金銭の出し入れを明確にした利益組織(もちろん、利益ゼロでいいが、働く人間への給与や雇用期限はきちんとするべきだ。)にするか、政府が責任を持った組織にすべきだ、というのが私の基本的な考えだ。


(以下引用)*画面が重なって見にくいので、記事をかなり下に移動してあります。











































































































































3年たっても更地のままの被災地
東北現地取材
             国民守らぬ政治の姿を象徴    2014年3月14日付


 3年前の地震・津波によって、宮城県では人的被害と同時に基幹産業である水産業も壊滅的な被害をこうむった。あれから3年の歳月が流れたが、いまだ厳しい復興の途上にある。当初から建築規制がかけられて住民が戻れないことや、水産業復興特区をはじめとした漁業復興のあり方を巡って大きな矛盾が生じてきたが、今なお多くの漁港が壊れたままの状態で、市街地もまるで復旧が進んでおらず、がれきが撤去されただけにすぎない。復興庁を頂点にして県や基礎自治体がその補助金を受ける形で復興の旗を振ってきたものの、巨大防潮堤や新規の市街地開発など、ゼネコンや住宅メーカー、新規参入企業のビジネスチャンスをつくることばかりが優先的に進められ、肝心な住宅再建や水産業復興が後回しにされた結末をまざまざと突きつけている。誰のためのなんのための復興なのかが転倒し、住民不在できわめて冷酷な放置状態が続いている。


 
 風評被害でワカメの値暴落

 宮城県の沿岸では今月に入ってワカメ漁が始まった。牡鹿半島の小渕浜では、復旧工事の終わらない浜で賑やかに収穫作業がおこなわれていた。沖からとってきたワカメをメカブと葉に分け、さらにボイルして塩蔵ワカメにしていく作業が同時におこなわれ浜は活気に満ちていた。
 しかし、生産者の努力によって漁業生産を再開し、品薄で単価も良かった1年目と比べて、昨年、そして今年と浜値が下がっており、「先を考えたときに喜べない…」と不安が語られていた。福島原発事故による風評被害で、買い手から敬遠されているのも心配の種になっていた。震災前3年間の平均価格と価格下落分の差額を東電が補償することも先月決まったばかりだった。
 生産者の男性は「誰がこんな補償を望むだろうか。問題は生業としてなりたたなくなることだ」と語気を強めていた。震災後、被災地が三陸ワカメの養殖に手がつけられなかった間に、商社を通じて中国産ワカメが大量に国内市場に流入し、シェアを奪った。そのうえ風評被害までが加わって値が戻らない。震災前に1㌔700円台で取引されていたのが現在は600円台まで下がっており、550円が採算ラインといわれている。純利益に換算すると微微たるもので、とても生活再建できるようなものではない。
 今期も仲買から「去年の在庫があるから今年は安い」といわれ、漁がはじまる前から布石を打たれていること、このような現象が来年、再来年に落ち着くとも思えず、見通しがたたないことが漁師たちのなかで語られていた。風評被害だから安いのではなく、むしろ福島事故を逆手にとってメーカーが買い叩いている構造や、取引先の切り替えを指摘する関係者もいる。安く買い叩いておきながら、スーパーの店頭には通常の価格で並んでいくといわれていた

 勝手に「砂浜再生」 ボランティアへ苛立ち

 宮城県の沿岸部では漁港の復旧がほとんど進んでいない。漁港復旧の進捗率を見ても福島県30%、岩手県59%なのに対して、宮城県は12%で遅れが際立っている。沿岸部を回っても、応急で積み上げられた土嚢が海との境界線を仕切っているだけであったり、まるで手つかずの状態だ。
 宮城県は全国でも有数の漁港数を誇り、その多くが被災した。震災後、村井知事が漁港集約を打ち出し、その後反発を受けて4港を除いて残りのすべての漁港は復旧すると方針転換したものの、岩手県側とは明らかに違いが出てきている。自治体関係者に尋ねたところ、業者数も、生コンをはじめとした資材も圧倒的に不足しており、苦労していることが語られていた。石巻市では漁港を一つ一つ入札していては技術者も足りないため、いくつかの浜をまとめて発注し、そのなかで順番に復旧工事がおこなわれているが、円安などによって資材が高騰し、予定価格と実費に大きな差額が生じることとなり、入札不調もあいついでいる語られていた。今後はさらにオリンピック関連の仕事が東京で発注されることが疑いなく、東北の復旧はさらに後回しになると危惧されていた。
 沿岸部でも水産業復興特区の先進地に指定された牡鹿半島の桃浦地区などは、漁港の復旧も早かった。しかし同じように小さな浜である近隣の十八成浜に行くと、まるで放置されている。「選択と集中」によって切り捨てられた浜は、いつになったら元の姿に戻れるのかすらわからない。
 十八成浜は集落の中心部が津波で失われた。住んでいた人人は少し高台にある仮設住宅で3年間住んでいるが、かつての居住地は建築規制がかかったままなにも手が付けられない。人の姿も業者の姿も見えない。近隣の浜や他の地域の宅地造成に向かうダンプが行き交うが、この浜の復旧のために足を止める者はいない。異様な静けさが浜を覆っていた。
 このなかで震災後、十八成浜に乗り込んだボランティアが勝手に復興計画をつくりあげ、現地住民の要望とはかけ離れた砂浜(ビーチ)再生事業を動かし始め、反発が強まっている。ボランティアグループが呼び込んできた「カタールフレンド基金」なる資金の運用は却下されたものの現在でも砂浜再生事業は動いており、津波によって押し寄せた砂浜のまま残すこと、「砂浜のままでいいじゃないか」と身勝手な環境保護活動を展開していることに住民は苛立っていた。
 道路沿いの防波堤も黒い土嚢が積まれたまま放置され、道路も整備されないまま放置。建築規制によって居住空間の再建にも手が出せず、「砂浜再生」のおかげで復興計画が前に進まない。そのうち住む人がいなくなってしまうことが危惧されていた。外来種が乗り込んできて、「東南海地震が起きたときの訓練」をしたり、被災地を弄んでいることについて強烈な批判が出ている。住民が望む復興が否定されて、なぜよそ者が望むビーチにされなければならないのか、である。

 雄勝町 住民のおよそ9割離散

 復旧に手が付けられない現状は雄勝町でも同じだ。雄勝町と女川町を結ぶ道路はほとんど工事も終わって整備されているが、雄勝町の中心部は2年たっても3年たっても変化がなく、広大な更地のままだ。破壊された漁港にもまったく手が付けられていない。震災後多かった県内外からのボランティアやマスコミ、「観光客」の姿もがた減りしており、仮設商店街や仮設診療所がぽつんとあるのみ。地場商店・企業がわずかに建物を建てているだけで、家の基礎を残した更地が広がっている。4000人いた人口のうち、町がおこなった調査で「戻りたい」と応えたのは1割といわれ、放置すればするほど人口流出を招いている。防潮堤の建設も進んでおらず、学校の修復も手つかず。宅地造成の山を切り開く工事もまったく始まっておらず、「今後1、2年ではどうにもならない…」と話されている。若者は他の土地で生活を再建し、故郷への帰還を望んできた高齢者さえ戻れない状態だ。
 仮設商店街で店舗を再開した男性は、「市も大変だというのはわかっているが、それにしても進んでない。年寄りにとっては、生きている間に戻れるだろうか…という感じだ。雄勝はもともと人口も少なく、重要な施設もなかったので後回しになっているのだと感じている」「もとの場所で商売をしてもいいなら戻りたいが、みんながここで暮らさないのなら商売は成り立たない。動くに動けない状態だ」と話した。「人がいて、コミュニティがあって初めてそれを守る防潮堤も道路も必要になってくる。人が住むことを否定して町の再生もあったものではない。26万人がいまだに戻れないという非常時に、あまりに責任がない復興策だ」と語っていた。
 建築規制がかかったままの浸水区域について、石巻市では駅前整備、商業施設用地整備、学校、医療機関の整備、公園の整備が計画されている。公園の整備は市街地では南浜公園、中瀬公園などが計画され、牡鹿半島部にも、鮎川浜地区、雄勝地区、北上地区を拠点にした公園などの整備が復興計画にあげられている。浸水区域は住民を追い出した後、みな公園だらけにする構想で、住宅再建よりも公園作りの方が優先順位が高いという、言葉を失うような「復興」が進められている。
 漁業者を含め、多くの被災者が3年間も仮設住宅や借り上げ住宅で暮らし、先の見えない生活をしているなかで、宙に浮いた復興計画ばかりが出され、住民の意見に聞く耳を持たない。初めは行政に対して意見をあげていた住民のなかでも、あきらめに似たような心境が語られていた。
 ある漁業関係者は、「これまで“町を元気にしよう”“みんなで盛り上げましょう”といわれてきた。しかし“町から出て行かないでください”といいながら何も進まない。国の制度に合わせた復興ではなく、被災地の復興に合わせた制度をつくるべきだ。今後も工事は遅れて、6年、7年、10年かけてコンクリートの立派な漁港ができたとして、そこで誰が漁をするのだろうか。人を住ませないようにして六㍍もの防潮堤をたてて、いったい何を守るのだろうか」と語った。
 「コンクリートから人間へ」どころか、「人間よりもコンクリート」が目前で繰り広げられる。国が責任を持って被災地を立て直すと思ったらまるで被災者には関心がなく、「創造的復興」といって、いつまでも創造や空想、妄想で街作りの夢を思い描き、事態はなんら前に進まない。なぜ産業を復興し、住民が元に戻って生活することをさせないのかという矛盾が極点に達している。

 石巻の水産加工 2年後には借入れ償還

 石巻市の水産加工団地では、以前と比較しても再建した企業は増えているように見える。ただ、自治体関係者によると震災前にあった207社の企業のうち、再建したのは54・1%の112社。あくまでも再建した企業数であって、その経営内容については明らかでない。昨年、政府のおこなった売上高調査では、東北被災地で復興した中小企業の回復率は37%と低く、なかでも回復がもっとも遅れているのが水産・食品加工業で、その回復率は14%にとどまっている。国、県、事業者負担の各種補助金を請けながら、多くの企業が再建してきたが、内実は厳しいことが語られていた。
 従業員を多く雇ってきた企業では、従業員が集まらないことが経営者たちの悩みになっている。津波への恐ろしさが頭から離れず、海の近くでの仕事を嫌う流れもあったり、莫大な補償を手にして働く意欲を失った人たちがいることも話されていた。
 再建し、工場内の機能を100%稼働して、経営的に安定しているところは1割に満たないといわれ、それは津波保険に入っていたからだという。国や県からの補助金を受けて立て直した企業にとっては、2年後から借り入れの償還がはじまるため気が気でない心境が語られていた。過剰投資している企業も複数あり、それらの支払いが困難になることも話題にされていた。
 「3年たった今よりももっと状況は悪くなると思う。水産会社だけでなく、基幹産業がだめになれば石巻市が破綻してしまいかねない。二次災害だ」と危機感を語る経営者もいた。別の経営者は、「テレビでいう復興は表面的なもので、再建といっても箱の部分だけ。みんな内実は大変だ。水揚げがあって市場が動き、加工、資材、トラックが動き、働く人がいてはじめて食堂や出前も成り立つ。今は運送業者も魚が半分、土木が半分で仕事をしていると聞く。とにかくできることをはやくしてほしい。かさ上げ道路も着工は来年で、完成がいつになるのかわからない。町づくり云云といった次元の話ではないんです」と話していた。
 補助率の低い小さな企業や商店、また震災前は賃貸だったことで補助金を受けられず、店舗や土地を抵当に借金をして再建した会社など、業種や規模によってさまざまな困難を抱えながら懸命な営業がやられている。津波がなにもかも奪っていったなかで、被災者の多くが再び起き上がり、郷土の立て直しに全力を注いでいる。「これで潰れたなどといったら、応援してくれる全国の人人に恥ずかしい」「東北は食糧基地。一生懸命おいしいものをつくって、全国の人に食べてもらう。そのために頑張る」と語る食品加工業者もいた。
 市街地では、浸水区域の地価が下落したことで、住宅メーカーや不動産関係者が土地を買いあさってきたことも語られていた。


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