◆2年前の記事のまえおきとして、ちょっと長めの付記:2014年12月01日23:31

30行ほど下にあるブログ記事をアップして2年以上になり、
その間この記事へのアクセス数は安定していて、
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生活保護費の自治体の負担は、大学で使う教科書でも、4分の1と書かれている。
下記で引用している新聞記事では、その部分を地方交付税で手当てするため、
「本来、自治体の懐は痛まない」としたうえで、実際にはそれでは不足していて、
自治体が持ち出していると指摘する。
そしてこれには、地方交付税の基準財政需要額というものを
どのように算出しているかという点が関わるとされる。

で、このたび、この付記を掲載しようと思った理由は、生活保護費そのものではなくて、
来年4月に施行される生活困窮者自立支援法にかかる地方自治体の負担について、
注意してみておく必要があると考えるから。

例えば、来年4月に生活困窮者自立支援法が施行されると、
全国で福祉事務所を設置するすべての自治体(901団体)において、
つまり、まさに津々浦々まで、生活困窮者の支援を行う諸事業が実施されることとなる。
そのうち、自立相談支援事業については必須事業とされているため、
すべての自治体で必ず実施する必要がある。
この自立相談支援事業については、自治体の負担は4分の1とされている。

法の施行に向けた説明会やシンポジウムの場で、厚生労働省の担当者は、
この自治体負担分について、地方交付税を手当てする、と述べる。
つい先日のパネルディスカッションで一緒に登壇した方も、そのように発言していた。
この説明を聞くと、「自治体の懐は痛まない」と素直に受け取ってしまうと思う。

けれど、実際にはどうか。
生活困窮者自立支援法にかかる費用についても、地方交付税を算出する際に、
はたして生活保護と同様の項目や計算が用いられるのかどうか、
そして、それをふまえて、生活困窮者自立支援法にかかる自治体負担について、
結局どの程度、地方交付税で手当てされることになるのか。

来年4月の施行を控えて、これからもまだまだ、説明会やシンポジウム等が開催されると思う。
というわけで、自治体の負担や地方交付税の算出について、疑問や不明に思う場合は、
地方交付税を打つ、とか、地方交付税を手当てする、といった説明や文言の中身について、
ぜひ立ち入って質問して、いまの時点でちゃんと回答を得て、事態を把握しておくのがよいと思う。
(付記は以上)

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◆当初の記事:2012年10月10日16:03

生活保護支給額の負担は、国が4分の3で自治体が4分の1とされていて、
新聞や、福祉関連の教科書などにもそのように書かれていて、
このしばらく、自治体サイドは、負担の軽減(例えば全額国庫負担)を
いろんな場で求めている。

で、生活保護支給額が3兆円を超えるようになり
(それが高いか低いかは、ここではおいといて)、
その4分の1にあたる額をそのまま自治体が負担しているかというと、
そういう単純な計算でもないことが、実は意外と知られていないような気もする。

そういうわけで、そのあたりの解説がなされている記事を以下に転載。

 ・「生活保護費、国が手当のはずが… 大阪市、3年で536億円負担 交付税が不足 構造問題浮き彫り」
  『日本経済新聞』電子版、2012年9月12日。

 生活保護の支給が大阪市など一部自治体の財政に重荷となっている。生活保護は国の法定受託事務で国庫負担と地方交付税で手当てする。本来、自治体の懐は痛まない。実際は足りず、大阪市は2009~11年度で計536億円を一般財源からの支出で補っていたことが、日本経済新聞の調べで判明した。実情にそぐわない地方交付税と生活保護制度の構造的問題が浮き彫りになった。

 生活保護支給額の4分の3は国庫負担金で賄われ、残りの4分の1と事務費などは地方負担。だが地方負担分も必要経費として交付税の基準財政需要額に算入される。受給者数に国庫負担金と交付税が連動するため自治体財政には影響しない設計になっている。ところが大阪市の場合は10年度に241億円、11年度も104億円が不足し、09~11年度の3年間で支出に比べて受け取った交付税が計536億円少なかった。ケースワーカーの人件費などを除く支給額に限っても計434億円足りなかった。大阪市のような大都市は単身の高齢者が多く、医療費の単価が高くなりがちだからだ。自己負担がなく、不正受給を誘引しやすい面もある。交付税は「(国庫負担金のような)実費精算ではなく、標準的な経費を見積もって交付する」(総務省交付税課)。1人当たりの医療費がかさむ大阪は標準の枠を超え、持ち出しが続いた。逆に地元に大きな病院がない自治体は医療費が安くなり、結果として支出を抑制できる。すべての市の決算額と交付税の内訳を分析したところ、10年度は神戸市が45億円、京都市が38億円持ち出しになっていた。半面、岐阜市は12億円、新潟市は6億円ほど支出より余分に交付税を受け取っていた。全国では交付税の交付団体の74%に当たる550市が受け取り超過。超過額が1億円以上の市も86あった。過不足をなくすにはかかった経費を全額国庫負担とする手もあるが、地方分権に逆行する。国の負担総額も増えることから国民の賛同は得にくい。