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現実を知らずにイメージで語ることへの戒め

nico氏の「書に触れ街に出よう」の過去記事から転載。
我々は世界の現実の姿を知らず、マスコミなどの報道のイメージで、知らず知らずのうちに幻想的世界像を作っている。どんなにマスコミの偏向や洗脳に注意していても、やはりステレオタイプの幻想を刷り込まれているのである。その洗脳の強力さは凄いものがある。
下記記事にある「共産党支配の牢獄国家」旧ソ連から資本主義ソ連への変化、そして「IT大国」インドの現実など、現地に行った人間の実感と、我々が持っているイメージとの違いの大きさを我々は考える必要がある。
自分自身が洗脳されていることに、まず気づかねばならないのである。



(以下引用)




私が貧富の差の激しい途上国に住んでいる間に、日本も貧富の差の激しい国になってしまった。このままいくと、貧富の差というものは世界的な日常風景となるのかも知れない。 旧ソ連から独立した国に10年程前行ったことがある。市場には物があふれているのだが、活気がない。売り手ばかりで客が見当たらないのだ。奇妙な光景だなと思って歩いていると、英語の達者な中年女性が話しかけてきた。ジャーナリストだという。独立後共産主義から資本主義に移行したものの、一部の人たちだけが成功を収めていて、大多数の人々に仕事がなく現金収入が入らない。公務員の給料も数ヶ月支給が滞った状態で、その結果腐敗しているのだという。明らかに共産主義時代の方がみんなに仕事があってよかったというのである。日雇いの仕事を求めて人々が公園に集まっていたが、ごくわずかな人のみがマイクロバスに乗せられていた。市バスに乗ったが、信号で止まるたびにエンジンを切って、青になったら再びエンジンをかけていた。資本主義とは一体何なのかと考え込まざるをえなかった。 90年代後半、日本ではインドはIT先進国だと言ってもてはやしていた。こういった経済記事を書く人たちは実際にインドに足を運んだことがあるのだろうか? 私はこの時期にインドを旅した。ムンバイの空港に着く間際、飛行機の窓から巨大なスラム街が見えた。どこに行ってもこじきが群がってくる。これがインドの現実であり日常風景である。厳然と存在するカーストが経済格差を固定化している。時々インターネットカフェに行ってEメールをチェックするのだが、スピードは非常に遅い。極端な例だが1時間かけてやっとメールを1通開くことができたということもあった。街を歩き回るにつれ、日本で読んでいたインドに関する経済ニュースがハッタリに近いものであることを思い知らされた。バンガロールに半導体工場があるからインドはIT先進国であるといった言い方は、トヨタが儲かっているから日本の景気はいいというような類の誤解に近い。ある国の産業の勃興する一分野のみに気を奪われては、その国の実像を見誤ることになりかねない。 インドの中で印象的な場所があった。南部にあるケーララ州だ。ケーララ州に入った途端、こじきを見かけなくなったのだ。これには驚いた。他の地域に比べ人も穏やかで、明らかに豊かであった。この理由は何だろうかと考えていたが、短いケーララ滞在中に3回も目撃した労働者のデモと無関係ではなさそうな気がする。彼らが持っていた旗には”Revolutionary Socialist Party”(革命社会党)と書かれていた。左翼運動が強い土地柄のようだった。私はインドをほぼ1周したが、このような場所は他になかった。 私は経済のことはわからないが、世界ではカネがあまっているのだそうだ。全世界のカネの7割から8割は投機市場というバーチャルリアリティのごとき世界で回り、実際の市場で回るのはごく一部なのだという。カネが実体経済の市場に回らないため各国の中央銀行はせっせと紙幣を印刷しているという。どこか狂ってはいないだろうか。共産主義が良いとは決して思わないものの、弱肉強食の資本主義が人々を幸せにするとは到底思えない。特に新自由主義と呼ばれるものは決して「新しい自由」などではなく、むしろ人から自由を奪うものであると言える。このような酷い資本主義はいずれ人の手で終焉させなければならないと思う。共産主義とも資本主義とも全体主義とも異なる、共生を基にした思想はすでに芽生えつつある。私はその可能性を信じたい。グローバルなことを考える上で、ローカルな事柄は重要なことを我々に教えてくれると思う。

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