全然タイムリーな話題ではないが、日本の行政の実情を示す、よいエピソードなので、先ほど見つけた記事を転載しておく。「続小児科医のブログ」というところの記事だ。
要するに、米国医薬品会社から米政権を通じて日本政府にこれこれのワクチンをこれだけ買えと命令があり、厚生省のお役人は全国の医療業界に対して下記の記事のような通達を出し、下記の記事のようなドタバタ騒ぎが起こるわけである。患者にとって危険性のあるワクチンで医者が儲けているとかいう非難は無意味で、これは厚生省主導で行われ、全国の医師はそれに従っているだけなのである。
一事が万事であり、これは医療だけの話ではない。
この日本の国難の時期に、農水省が減反政策を継続して日本国民の多くを餓死の危険にさらすことを決めたのも、米国からの命令に決まっている。日本の木ッ端役人や陣笠代議士の一人一人をとがめても、菅総理という阿呆の案山子総理を批判しても何の意味もないのである。
タイトルの権力ピラミッドは一般的な意味での権力の象徴で、べつにあの「目のあるピラミッド」のことではない。
(以下引用)
2011-04-06 新型インフルエンザワクチン契約・最後のエピソード2009年の話になりますが、新型インフルエンザワクチンの接種のために医療機関は契約せよとのお達しがありました。どんな雰囲気だったのかを当時作ったコントで紹介しておきます。
■第5部:委託契約編
厚労省:「委託医療機関の選定と国との契約を行ないなさい」
医師会:「契約書の正式内容は?」
厚労省:「正式の契約書はないが、正式の契約書になる予定の『案』があるから代用せよ」
医師会:「説明は『案』でも可能だが、契約は『案』では無理なのでは?」
厚労省:「届出を出してもらい、それで暫定的に承認とし、正式契約は委任状を出してもらい後日書類処理する」
医師会:「えらい条件ですが、いつまでですか?」
厚労省:「10/9までに完了だ」
医師会:「ヒェ~、今日は10/6ですから『案』の説明も間に合わないのですが?」
厚労省:「10/9は政治主導で決定である」
■第6部:医師会混乱編
医師会幹部A:「こんなんで委託契約を結べとは無茶でんな」
医師会幹部B:「会員から問合せの山が来るやろし、来ても何にも答えられへんし」
医師会幹部A:「でもお国の命令だし・・・問合せの期間が短くなるように、今日Fax、明日返答にしよう」
医師会幹部B:「問合せにはひたすら『詳細は後日説明』で押しきらなしょうがおまへん」
■第7部:医師会員ドタバタ混乱編
職員:「医師会からFaxです」
医師:「どれどれ、新型接種の契約届出をせよみたいやな。こっちが届出書でこっちが委任状か、他は?」
職員:「それだけです」
医師:「つう事は白紙委任状を明日までに提出せよと言う事かいな。そんなアホな!]
その日は患者からのインフルエンザの問い合わせと同じぐらい、医師会員同士の「一体、どうなっているんだ!」「お宅はどうする?」の電話が飛び交ったそうな。
覚えてられている方も多数おられると思いますが、Faxが突然舞い込んで翌日とか、早いところではその日のうちに返答せよという物凄さでした。もちろん、
そもそも契約時に契約書なるものが存在しない
契約内容についての丁寧かつ納得できる説明はほぼ皆無
考慮時間はうちで1日、ひどいところでは2時間と言うところもある(10/6に指示が出て、10/9に契約完了のスケジュールであった)
契約期間は空欄
こんな状態でドタバタと契約を結ばされたわけです。一方で契約書の拘束力は猛烈で、
ワクチン販売は押し売り状態の返品不可
鉄の優先順位の強要
ワクチン販売に関してはかの有名なパーティボトルの大量販売で、悲鳴をあげた医療機関がかなりありました。返品不可については契約書には明記されていませんでしたが、「そうである」と高らかに宣言して既成事実としていました。そう言えば最終的に返品を認めるの話も出ていましたが、どうなったんですかね。
また鉄の優先順位は、余ったものを接種しただけで社会的制裁だけではなく、契約破棄の処分を下されたところもあったと記憶しています。鉄の優先順位は、たとえ余っても「廃棄せよ」との指導を受けた話さえ残っています。
この契約は去年の段階で予防接種法の改正に伴い、一方的に解約させられ、再契約させられました。これもまた2009年に近いようなドタバタ契約でしたが、これもやっと終了のようです。
予防接種委託医療機関各位
神戸市保健所長
新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種に関する委託契約の終了について
時下、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
平素は、予防接種事業に格別のご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
さて、新型インフルエンザ(A/H1N1)の発生に伴うワクチン接種事業については、「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種に関する事業実施要綱」(平成22年9月28日厚生労働省発健0928第6号通知)に基き、新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの接種を希望する医療機関と厚生労働大臣との間で契約を締結し実施してきたところですが、厚生労働事務次官から平成23年3月31日をもって、契約を終了する旨の通知がありました。契約終期は本市の実施要綱等でも明記しているところですが、貴会員の受託医療期間に対する周知をお願いします。
以下略
これは3/31付読売新聞から引用しておきますが、
細川厚生労働相は31日、2009年発生の新型インフルエンザについて、感染症法の「新型」の類型から外し、4月から従来の季節性インフルエンザと同様の扱いにすると公表した。
名称は「新型インフルエンザ(H1N1)」から「インフルエンザ(H1N1)2009」に変更される。
感染症法では、新型インフルエンザについて、国民の多くが免疫を獲得するなどした場合、厚労相の公表をもって「新型」の類型から外す、としている。09年4月に確認された今回の新型インフルエンザは、2シーズン目の流行がほぼ終息し、流行の規模や期間などが従来の季節性インフルエンザと同じ傾向だった。
至極単純には新型インフルエンザから、これまでの季節性インフルエンザに定義を変えたので、厚労省との契約による接種手続きが不要になったとの事です。それにしても名称はなんとかならんかと思いますが、とりあえず新型から「インフルエンザ(H1N1)2009」になったようです。もうちょっと短くならないものですかねえ。通称であっても構いませんから短くならないと実用上不便です。
それでも今回の契約終了はまだマシかもしれません。契約が無効になったから契約を終了するの立派な理由があります。契約を結んだ時に較べると、解約はこれで関係がとにもかくにも無くなる訳ですから、ちょっとだけスッキリした気分です。
事が済んでの感想ですが、世の中には物凄い契約がある事を学んだのは社会勉強になりました。それもブラック企業相手の契約ならまだしも、相手が厚労省であり厚生労働大臣であるところが強烈です。なぜにこんな展開の契約になったかを推測すると、やはり契約相手が厚労省だったからと考える他はないようです。
新型ワクチン接種について契約と言う形態を取らざるを得なかったのは、法的な問題になります。細かい事はともかく、厚労省サイドにすれば契約形態にしないと接種が出来ない事情があったと考えてよいでしょう。しかし厚労官僚の認識の中に、社会通念としてある契約の概念は皆無に近かったと考えています。
むしろ契約を結ばされた医療機関側が「契約」と言う言葉に妙な誤解をしたと考えるべきかもしれません。どういう事かと言えば、厚労省側は名目上は契約としていますが、扱いは通常の通達行政と全く同じであると見れるからです。契約でなく通達と見れば、一連の契約騒動はわかりやすくなります。
ワクチン接種機関の登録を行う通達
登録後に接種に関する細則を通達
細則の解釈、または都合の悪い部分は通達により適宜改変
通達行政ならよくある手順です。契約と言いながら、通達行政と実質同じ手法を厚労省は実践したと考えられます。厚労省側にすれば、契約内容と言っても、通達と一緒で、いつでもどうにでも出来るものとして扱ったとすれば話の筋が通ります。
言ってみれば、新型ワクチン接種に関して厚労省は契約風通達行政を行ったと考えられます。私も含めて、社会通念にある契約を念頭に置いたので解釈に混乱を来たしただけと言っても良いかもしれません。
それでも厚労省側としては、この契約風通達行政の運用を新型インフルエンザ対策として輝かしい成果として記録する様に考えています。解釈や運用に混乱を来たしたのは医療機関側であって、厚労省としては実質として通達行政を堅持出来たからです。きっと今後も、この輝かしい先例を踏襲しての二番煎じ、三番煎じを行われると予想します。
まあ、通達行政に付き合うのも大変ですが、契約風通達行政も当分付き合いたく無いですねぇ・・・。
コメントを書く
元もと保健所長 2011/04/06 08:17
それでも、ほとんどの医療機関はおとなしく白紙委任状を提出して「契約」したのでしょう。
相手が国だったから、ワクチンを待つ患者・住民のためだから、というのは言い訳で、
所詮はワクチン欲しさに目がくらんだ上での行動だったのでしょう。
国はこれで味を占め、2010年度はついに法律の根拠なく「国の事業だけど市町村主体」
というとんでもないことをしでかしました。
これがまかり通るなら、そもそも予防接種法という法律自体が不要になるくらいの
恐ろしい強権政治です。
luckdragon2009 2011/04/06 08:25
うーむ。
微妙に、契約時の「錯誤」ないし、「公序良俗に反する」という内容によって、契約無効の提起を成したら、どうなるんだろうなあ、と思ったりします。
> [PDF] 宅建重要用語集PDF - 資格の総合スクール - LEC東京リーガルマインド
> http://www.lec-jp.com/takken/qa/pdf/tu11054.pdf (「公序良俗に反する」は、12p)
案外、弁護士や、いろんな法務業、公務員の方々に関しても、結構議論の余地のある内容なのかも、と思ったりもしたのですが、まあ、法務業ではないので、時々、関連項目をしらべているだけではありますが。
luckdragon2009 2011/04/06 08:30
株主総会の白紙委任状でも、定款変更や、議案内容、取締役就任内容くらいは告知されますけどねえ...。
しかし、2時間ってのは、すごい短い判断時間ですね。
京都の小児科医 2011/04/06 08:56
日本の(お笑い予防接種)行政の伝家の宝刀の超法的対応ですね。
今回の東日本大地震でも課長クラスの(○ンピラ)官僚が超法的対応を
とられているように思います。
繰り返しますが、東日本大地震では日本は滅びませんが、滅びるのは官僚の暴走です。
日本国においては官僚の課長クラス以上は法を守らなくてもいいというコンセンサスが
できているのは恐ろしいです。緊急時にチーム日本とか・みんなで頑張ろうとか・誰も
公式は逆らえないキャンぺーンをさらにマスコミも増幅してゆきます。
まさに「正義は国を滅ぼす」です。
たぶん、官僚は正しいこと(正義)をおこなっていると思っているのでしょう。
前の戦争も発端は現場の課長クラスの暴走がスタートだったと理解しています。
元ライダー 2011/04/06 09:30
契約風通達行政の間抜けなところは、医療機関が取り敢えず契約しておいて、実際には契約不履行(予防接種を行わない)しても、お咎めなし無しであるところです。ですから、白紙委任と言っても詳細判明後、嫌なら無断で実質的な契約破棄が可能です。
ですから選択肢は2つで
・通達どおりの面倒な予防接種を行う
・予防接種を行わない
裏を返せば、契約を履行するかどうか、契約後にも医療機関に選択の自由がある『契約』です。契約という言葉が気持ち悪いですが、日本語でなく、厚労省用語だと思えば何のことはありません。一見日本語風に見える特殊用語は法律の分野でさんざん学習しました。サーバリックスの時には、当院ではこの手でかわし、『契約』しましたが、接種実績ゼロです。
Seisan 2011/04/06 09:57
>相手が国だったから、ワクチンを待つ患者・住民のためだから、というのは言い訳で、
>所詮はワクチン欲しさに目がくらんだ上での行動
そういわれてしまうと、保険医療機関契約すら、「所詮は健康保険からの金に目がくらんだ上での行動」になってしまいますよ(^_^;)
実際、よそがしているからうちもしないと、という横並び意識はあるでしょうし、それをうまく利用された面も否定しませんが、やはり、医師として「国民の健康な生活を担保する存在」であるという自負がありますから(ええ、言ってて恥ずかしいですよ。確かに)、新型インフルエンザワクチンに関しての契約云々には文句はたくさんあったんですが、受け入れざるを得なかったという思いがあります。
まあ、今回の「子宮頚がんワクチン等・・・」も同じ根っこの話ですけどね。
ポイントは、来年の3月までの話なのに、その後の話が出ていない、ということでしょうか。
子ども手当なんかより、よっぽど大事なものなんですけどね。
10年ドロッポ 2011/04/06 10:31
京都の小児科医様、
>今回の東日本大地震でも課長クラスの(○ンピラ)官僚が超法的対応を
とられているように思います。
新聞やテレビはおろか、最近は気が滅入るのでニュース系のネットも見てないので何の事かさっぱり判りません。ご教示頂ければ幸いです。
*聞きたくないかもw
京都の小児科医 2011/04/06 11:58
10年ドロッポ様
ちょっと勇み足でした。(週刊誌にはあったのですが・・)
この部分は申し訳ありません。
京都の小児科医 2011/04/06 12:04
>所詮はワクチン欲しさに目がくらんだ上での行動だったのでしょう。
これは他のところでも同様の発言をもらったことがあります。
(保健所の先生から)
新型インフルエンザワクチンで(外)車?を買った医師がいたとか・・
luckdragon2009 2011/04/06 12:49
うーむ。
車が買えるほど、本数十分に供給されましたっけ?
まあ、最後は「余るほど」な供給体制でしたけど。(流行自体に間に合わなくて、微妙にキャンセル?な話もありましたよね、確か。)
Yosyan 2011/04/06 12:59
>新型インフルエンザワクチンで(外)車?を買った医師がいたとか・・
机上の計算ですが、成人換算でワクチン卸価格が1468円、接種価格が3600円です。つまり1人接種すれば2132円の粗収益があります。クルマの価格が仮に300万円とすれば、1400人ほど接種すれば300万円になります。もっともここから消費税とか、注射器や針代などが出ますから、1600人程度接種すれば不可能ではありません。
ただしあのワクチン不足と鉄の優先順位のなかで、効率よく、無駄なく1600人も接種できた開業医がどれほどいたかは大いに疑問です。それとあの年のワクチンは季節性と完全に別立てになっています。季節性と別に新型ワクチンを1600人も接種するのは半端な手間ではありません。それこそ3000人とか4000人規模の接種を10月から12月の3ヶ月ほどで接種した事になります。1月には希望者は殆んどいなくなりましたから。
小児科は接種量の関係で卸価格部分は下がりますが、その代わりに2回目接種が大きく絡んできます。それと接種時期に新型の流行がピークに達しましたから、外来もテンヤワンヤでしたから、それこそインフルエンザ患者を診ながら、なおかつ平年の季節性プラス新型接種を行うことになります。これも並大抵の状態ではありません。
そこまで儲けた開業医がいたのは否定しませんが、一般的にそうかと言われると少々疑問です。儲けた開業医は、それこそ倒れるぐらいに働いたような気がします。
京都の小児科医 2011/04/06 13:12
>儲けた開業医は、それこそ倒れるぐらいに働いたような気がします。
私は反論しなかったのですが、正直、仮に事実なら労働による対価であって別にいいのではとその時思いました。
給料決まっている保健所じゃあるまいし・・・
あと、保健所って、色々な方がおられると思いますが、厚生労働省と開業医の間の中間管理職で、結構つらい立場ではとも思いました。
すいません。
第1部~第4部ってどこでしたでしょうか
10年ドロッポ 2011/04/06 14:14
京都の小児科医様、コメント有難うございます。
実際、上がアレですから、中級官僚クラスが自分の判断で動かざるを得ない局面が数多ありそうではありますねえ…。この未曾有の国難の時にミンス政権なんて、神とやら、貴方は残酷だ!<私は共産主義者なんで、神なんか信じてないケドw
>新型インフルエンザワクチンで(外)車?を買った医師がいたとか・・
実在するのであれば厚労省のクソ通達だか契約をも翻弄したボクらのヒーローwですから、賞賛を惜しまないんですが…。
京都の小児科医 2011/04/06 17:40
>とりあえず新型から「インフルエンザ(H1N1)2009」になったようです。もうちょっと短くならないものですかねえ。通称であっても構いませんから短くならないと実用上不便です
通称:メキシコかぜでは
20世紀のスペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜ、ソ連かぜ、そして21世紀になって、最初に世界的に流行したメキシコかぜではどうでしょうか
Seisan 2011/04/06 19:22
「メキシコかぜ」という表現は最初WHOでも使われそうになりましたが、メキシコ政府からの猛烈な抗議があって使えなかったという経緯があります。
豚インフルという表現も動物愛護協会だったかどっかからの抗議があったとのこと。いやまぢで(w
結局H1N1/2009という表現しかないのかな?
しかし、外車が買えるとは、思ってもみませんでした。
ウチはチョイ黒、ただし人件費を考えると、お疲れさま会の宴会費にはなったかなくらいでしたが(w
もし年明けにワクチン受け取り拒否をしなければ、大赤字になってたかもしれません。
霞ヶ関ヒラ官僚 2011/04/06 20:34
あのね、いいことをおしえといたげる。
本省課長以上の官僚っていうのはね、政治家の子分なの。
でね、権力と権限を持ってるけど決して責任を取らない(問われない)政治家先生のために一所懸命働くのよ。
だから、政治主導、という言葉が出てくるの。
あなた、おりこうさんだから、わかるわよね?
え?責任?
もちろん、課長以上の官僚は政治家先生に守られているから責任を取る事もとわれる事も無いわ。
それは、課長未満の官僚とあなたたち国民の皆様がとるのよ。
国民の皆様が望めば、課長未満の官僚をさらし首にして溜飲下げて、はいおしまい。
そんなことあたりまえでしょ。
なんど経験したらわかるのかしら。
ほんと、国民の皆様って、バッカよねぇ……
京都の小児科医 2011/04/06 22:49
>最初WHOでも使われそうになりましたが、メキシコ政府からの猛烈な抗議があって使えなかったという経緯
通称ならメキシコかぜでいいと思います。
スペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜ、ソ連かぜがあるわけですし、
メキシコかぜ(インフルエンザ(H1N1)2009)
トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20110406
要するに、米国医薬品会社から米政権を通じて日本政府にこれこれのワクチンをこれだけ買えと命令があり、厚生省のお役人は全国の医療業界に対して下記の記事のような通達を出し、下記の記事のようなドタバタ騒ぎが起こるわけである。患者にとって危険性のあるワクチンで医者が儲けているとかいう非難は無意味で、これは厚生省主導で行われ、全国の医師はそれに従っているだけなのである。
一事が万事であり、これは医療だけの話ではない。
この日本の国難の時期に、農水省が減反政策を継続して日本国民の多くを餓死の危険にさらすことを決めたのも、米国からの命令に決まっている。日本の木ッ端役人や陣笠代議士の一人一人をとがめても、菅総理という阿呆の案山子総理を批判しても何の意味もないのである。
タイトルの権力ピラミッドは一般的な意味での権力の象徴で、べつにあの「目のあるピラミッド」のことではない。
(以下引用)
2011-04-06 新型インフルエンザワクチン契約・最後のエピソード2009年の話になりますが、新型インフルエンザワクチンの接種のために医療機関は契約せよとのお達しがありました。どんな雰囲気だったのかを当時作ったコントで紹介しておきます。
■第5部:委託契約編
厚労省:「委託医療機関の選定と国との契約を行ないなさい」
医師会:「契約書の正式内容は?」
厚労省:「正式の契約書はないが、正式の契約書になる予定の『案』があるから代用せよ」
医師会:「説明は『案』でも可能だが、契約は『案』では無理なのでは?」
厚労省:「届出を出してもらい、それで暫定的に承認とし、正式契約は委任状を出してもらい後日書類処理する」
医師会:「えらい条件ですが、いつまでですか?」
厚労省:「10/9までに完了だ」
医師会:「ヒェ~、今日は10/6ですから『案』の説明も間に合わないのですが?」
厚労省:「10/9は政治主導で決定である」
■第6部:医師会混乱編
医師会幹部A:「こんなんで委託契約を結べとは無茶でんな」
医師会幹部B:「会員から問合せの山が来るやろし、来ても何にも答えられへんし」
医師会幹部A:「でもお国の命令だし・・・問合せの期間が短くなるように、今日Fax、明日返答にしよう」
医師会幹部B:「問合せにはひたすら『詳細は後日説明』で押しきらなしょうがおまへん」
■第7部:医師会員ドタバタ混乱編
職員:「医師会からFaxです」
医師:「どれどれ、新型接種の契約届出をせよみたいやな。こっちが届出書でこっちが委任状か、他は?」
職員:「それだけです」
医師:「つう事は白紙委任状を明日までに提出せよと言う事かいな。そんなアホな!]
その日は患者からのインフルエンザの問い合わせと同じぐらい、医師会員同士の「一体、どうなっているんだ!」「お宅はどうする?」の電話が飛び交ったそうな。
覚えてられている方も多数おられると思いますが、Faxが突然舞い込んで翌日とか、早いところではその日のうちに返答せよという物凄さでした。もちろん、
そもそも契約時に契約書なるものが存在しない
契約内容についての丁寧かつ納得できる説明はほぼ皆無
考慮時間はうちで1日、ひどいところでは2時間と言うところもある(10/6に指示が出て、10/9に契約完了のスケジュールであった)
契約期間は空欄
こんな状態でドタバタと契約を結ばされたわけです。一方で契約書の拘束力は猛烈で、
ワクチン販売は押し売り状態の返品不可
鉄の優先順位の強要
ワクチン販売に関してはかの有名なパーティボトルの大量販売で、悲鳴をあげた医療機関がかなりありました。返品不可については契約書には明記されていませんでしたが、「そうである」と高らかに宣言して既成事実としていました。そう言えば最終的に返品を認めるの話も出ていましたが、どうなったんですかね。
また鉄の優先順位は、余ったものを接種しただけで社会的制裁だけではなく、契約破棄の処分を下されたところもあったと記憶しています。鉄の優先順位は、たとえ余っても「廃棄せよ」との指導を受けた話さえ残っています。
この契約は去年の段階で予防接種法の改正に伴い、一方的に解約させられ、再契約させられました。これもまた2009年に近いようなドタバタ契約でしたが、これもやっと終了のようです。
予防接種委託医療機関各位
神戸市保健所長
新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種に関する委託契約の終了について
時下、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
平素は、予防接種事業に格別のご協力をいただき、厚くお礼申し上げます。
さて、新型インフルエンザ(A/H1N1)の発生に伴うワクチン接種事業については、「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種に関する事業実施要綱」(平成22年9月28日厚生労働省発健0928第6号通知)に基き、新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの接種を希望する医療機関と厚生労働大臣との間で契約を締結し実施してきたところですが、厚生労働事務次官から平成23年3月31日をもって、契約を終了する旨の通知がありました。契約終期は本市の実施要綱等でも明記しているところですが、貴会員の受託医療期間に対する周知をお願いします。
以下略
これは3/31付読売新聞から引用しておきますが、
細川厚生労働相は31日、2009年発生の新型インフルエンザについて、感染症法の「新型」の類型から外し、4月から従来の季節性インフルエンザと同様の扱いにすると公表した。
名称は「新型インフルエンザ(H1N1)」から「インフルエンザ(H1N1)2009」に変更される。
感染症法では、新型インフルエンザについて、国民の多くが免疫を獲得するなどした場合、厚労相の公表をもって「新型」の類型から外す、としている。09年4月に確認された今回の新型インフルエンザは、2シーズン目の流行がほぼ終息し、流行の規模や期間などが従来の季節性インフルエンザと同じ傾向だった。
至極単純には新型インフルエンザから、これまでの季節性インフルエンザに定義を変えたので、厚労省との契約による接種手続きが不要になったとの事です。それにしても名称はなんとかならんかと思いますが、とりあえず新型から「インフルエンザ(H1N1)2009」になったようです。もうちょっと短くならないものですかねえ。通称であっても構いませんから短くならないと実用上不便です。
それでも今回の契約終了はまだマシかもしれません。契約が無効になったから契約を終了するの立派な理由があります。契約を結んだ時に較べると、解約はこれで関係がとにもかくにも無くなる訳ですから、ちょっとだけスッキリした気分です。
事が済んでの感想ですが、世の中には物凄い契約がある事を学んだのは社会勉強になりました。それもブラック企業相手の契約ならまだしも、相手が厚労省であり厚生労働大臣であるところが強烈です。なぜにこんな展開の契約になったかを推測すると、やはり契約相手が厚労省だったからと考える他はないようです。
新型ワクチン接種について契約と言う形態を取らざるを得なかったのは、法的な問題になります。細かい事はともかく、厚労省サイドにすれば契約形態にしないと接種が出来ない事情があったと考えてよいでしょう。しかし厚労官僚の認識の中に、社会通念としてある契約の概念は皆無に近かったと考えています。
むしろ契約を結ばされた医療機関側が「契約」と言う言葉に妙な誤解をしたと考えるべきかもしれません。どういう事かと言えば、厚労省側は名目上は契約としていますが、扱いは通常の通達行政と全く同じであると見れるからです。契約でなく通達と見れば、一連の契約騒動はわかりやすくなります。
ワクチン接種機関の登録を行う通達
登録後に接種に関する細則を通達
細則の解釈、または都合の悪い部分は通達により適宜改変
通達行政ならよくある手順です。契約と言いながら、通達行政と実質同じ手法を厚労省は実践したと考えられます。厚労省側にすれば、契約内容と言っても、通達と一緒で、いつでもどうにでも出来るものとして扱ったとすれば話の筋が通ります。
言ってみれば、新型ワクチン接種に関して厚労省は契約風通達行政を行ったと考えられます。私も含めて、社会通念にある契約を念頭に置いたので解釈に混乱を来たしただけと言っても良いかもしれません。
それでも厚労省側としては、この契約風通達行政の運用を新型インフルエンザ対策として輝かしい成果として記録する様に考えています。解釈や運用に混乱を来たしたのは医療機関側であって、厚労省としては実質として通達行政を堅持出来たからです。きっと今後も、この輝かしい先例を踏襲しての二番煎じ、三番煎じを行われると予想します。
まあ、通達行政に付き合うのも大変ですが、契約風通達行政も当分付き合いたく無いですねぇ・・・。
コメントを書く
元もと保健所長 2011/04/06 08:17
それでも、ほとんどの医療機関はおとなしく白紙委任状を提出して「契約」したのでしょう。
相手が国だったから、ワクチンを待つ患者・住民のためだから、というのは言い訳で、
所詮はワクチン欲しさに目がくらんだ上での行動だったのでしょう。
国はこれで味を占め、2010年度はついに法律の根拠なく「国の事業だけど市町村主体」
というとんでもないことをしでかしました。
これがまかり通るなら、そもそも予防接種法という法律自体が不要になるくらいの
恐ろしい強権政治です。
luckdragon2009 2011/04/06 08:25
うーむ。
微妙に、契約時の「錯誤」ないし、「公序良俗に反する」という内容によって、契約無効の提起を成したら、どうなるんだろうなあ、と思ったりします。
> [PDF] 宅建重要用語集PDF - 資格の総合スクール - LEC東京リーガルマインド
> http://www.lec-jp.com/takken/qa/pdf/tu11054.pdf (「公序良俗に反する」は、12p)
案外、弁護士や、いろんな法務業、公務員の方々に関しても、結構議論の余地のある内容なのかも、と思ったりもしたのですが、まあ、法務業ではないので、時々、関連項目をしらべているだけではありますが。
luckdragon2009 2011/04/06 08:30
株主総会の白紙委任状でも、定款変更や、議案内容、取締役就任内容くらいは告知されますけどねえ...。
しかし、2時間ってのは、すごい短い判断時間ですね。
京都の小児科医 2011/04/06 08:56
日本の(お笑い予防接種)行政の伝家の宝刀の超法的対応ですね。
今回の東日本大地震でも課長クラスの(○ンピラ)官僚が超法的対応を
とられているように思います。
繰り返しますが、東日本大地震では日本は滅びませんが、滅びるのは官僚の暴走です。
日本国においては官僚の課長クラス以上は法を守らなくてもいいというコンセンサスが
できているのは恐ろしいです。緊急時にチーム日本とか・みんなで頑張ろうとか・誰も
公式は逆らえないキャンぺーンをさらにマスコミも増幅してゆきます。
まさに「正義は国を滅ぼす」です。
たぶん、官僚は正しいこと(正義)をおこなっていると思っているのでしょう。
前の戦争も発端は現場の課長クラスの暴走がスタートだったと理解しています。
元ライダー 2011/04/06 09:30
契約風通達行政の間抜けなところは、医療機関が取り敢えず契約しておいて、実際には契約不履行(予防接種を行わない)しても、お咎めなし無しであるところです。ですから、白紙委任と言っても詳細判明後、嫌なら無断で実質的な契約破棄が可能です。
ですから選択肢は2つで
・通達どおりの面倒な予防接種を行う
・予防接種を行わない
裏を返せば、契約を履行するかどうか、契約後にも医療機関に選択の自由がある『契約』です。契約という言葉が気持ち悪いですが、日本語でなく、厚労省用語だと思えば何のことはありません。一見日本語風に見える特殊用語は法律の分野でさんざん学習しました。サーバリックスの時には、当院ではこの手でかわし、『契約』しましたが、接種実績ゼロです。
Seisan 2011/04/06 09:57
>相手が国だったから、ワクチンを待つ患者・住民のためだから、というのは言い訳で、
>所詮はワクチン欲しさに目がくらんだ上での行動
そういわれてしまうと、保険医療機関契約すら、「所詮は健康保険からの金に目がくらんだ上での行動」になってしまいますよ(^_^;)
実際、よそがしているからうちもしないと、という横並び意識はあるでしょうし、それをうまく利用された面も否定しませんが、やはり、医師として「国民の健康な生活を担保する存在」であるという自負がありますから(ええ、言ってて恥ずかしいですよ。確かに)、新型インフルエンザワクチンに関しての契約云々には文句はたくさんあったんですが、受け入れざるを得なかったという思いがあります。
まあ、今回の「子宮頚がんワクチン等・・・」も同じ根っこの話ですけどね。
ポイントは、来年の3月までの話なのに、その後の話が出ていない、ということでしょうか。
子ども手当なんかより、よっぽど大事なものなんですけどね。
10年ドロッポ 2011/04/06 10:31
京都の小児科医様、
>今回の東日本大地震でも課長クラスの(○ンピラ)官僚が超法的対応を
とられているように思います。
新聞やテレビはおろか、最近は気が滅入るのでニュース系のネットも見てないので何の事かさっぱり判りません。ご教示頂ければ幸いです。
*聞きたくないかもw
京都の小児科医 2011/04/06 11:58
10年ドロッポ様
ちょっと勇み足でした。(週刊誌にはあったのですが・・)
この部分は申し訳ありません。
京都の小児科医 2011/04/06 12:04
>所詮はワクチン欲しさに目がくらんだ上での行動だったのでしょう。
これは他のところでも同様の発言をもらったことがあります。
(保健所の先生から)
新型インフルエンザワクチンで(外)車?を買った医師がいたとか・・
luckdragon2009 2011/04/06 12:49
うーむ。
車が買えるほど、本数十分に供給されましたっけ?
まあ、最後は「余るほど」な供給体制でしたけど。(流行自体に間に合わなくて、微妙にキャンセル?な話もありましたよね、確か。)
Yosyan 2011/04/06 12:59
>新型インフルエンザワクチンで(外)車?を買った医師がいたとか・・
机上の計算ですが、成人換算でワクチン卸価格が1468円、接種価格が3600円です。つまり1人接種すれば2132円の粗収益があります。クルマの価格が仮に300万円とすれば、1400人ほど接種すれば300万円になります。もっともここから消費税とか、注射器や針代などが出ますから、1600人程度接種すれば不可能ではありません。
ただしあのワクチン不足と鉄の優先順位のなかで、効率よく、無駄なく1600人も接種できた開業医がどれほどいたかは大いに疑問です。それとあの年のワクチンは季節性と完全に別立てになっています。季節性と別に新型ワクチンを1600人も接種するのは半端な手間ではありません。それこそ3000人とか4000人規模の接種を10月から12月の3ヶ月ほどで接種した事になります。1月には希望者は殆んどいなくなりましたから。
小児科は接種量の関係で卸価格部分は下がりますが、その代わりに2回目接種が大きく絡んできます。それと接種時期に新型の流行がピークに達しましたから、外来もテンヤワンヤでしたから、それこそインフルエンザ患者を診ながら、なおかつ平年の季節性プラス新型接種を行うことになります。これも並大抵の状態ではありません。
そこまで儲けた開業医がいたのは否定しませんが、一般的にそうかと言われると少々疑問です。儲けた開業医は、それこそ倒れるぐらいに働いたような気がします。
京都の小児科医 2011/04/06 13:12
>儲けた開業医は、それこそ倒れるぐらいに働いたような気がします。
私は反論しなかったのですが、正直、仮に事実なら労働による対価であって別にいいのではとその時思いました。
給料決まっている保健所じゃあるまいし・・・
あと、保健所って、色々な方がおられると思いますが、厚生労働省と開業医の間の中間管理職で、結構つらい立場ではとも思いました。
すいません。
第1部~第4部ってどこでしたでしょうか
10年ドロッポ 2011/04/06 14:14
京都の小児科医様、コメント有難うございます。
実際、上がアレですから、中級官僚クラスが自分の判断で動かざるを得ない局面が数多ありそうではありますねえ…。この未曾有の国難の時にミンス政権なんて、神とやら、貴方は残酷だ!<私は共産主義者なんで、神なんか信じてないケドw
>新型インフルエンザワクチンで(外)車?を買った医師がいたとか・・
実在するのであれば厚労省のクソ通達だか契約をも翻弄したボクらのヒーローwですから、賞賛を惜しまないんですが…。
京都の小児科医 2011/04/06 17:40
>とりあえず新型から「インフルエンザ(H1N1)2009」になったようです。もうちょっと短くならないものですかねえ。通称であっても構いませんから短くならないと実用上不便です
通称:メキシコかぜでは
20世紀のスペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜ、ソ連かぜ、そして21世紀になって、最初に世界的に流行したメキシコかぜではどうでしょうか
Seisan 2011/04/06 19:22
「メキシコかぜ」という表現は最初WHOでも使われそうになりましたが、メキシコ政府からの猛烈な抗議があって使えなかったという経緯があります。
豚インフルという表現も動物愛護協会だったかどっかからの抗議があったとのこと。いやまぢで(w
結局H1N1/2009という表現しかないのかな?
しかし、外車が買えるとは、思ってもみませんでした。
ウチはチョイ黒、ただし人件費を考えると、お疲れさま会の宴会費にはなったかなくらいでしたが(w
もし年明けにワクチン受け取り拒否をしなければ、大赤字になってたかもしれません。
霞ヶ関ヒラ官僚 2011/04/06 20:34
あのね、いいことをおしえといたげる。
本省課長以上の官僚っていうのはね、政治家の子分なの。
でね、権力と権限を持ってるけど決して責任を取らない(問われない)政治家先生のために一所懸命働くのよ。
だから、政治主導、という言葉が出てくるの。
あなた、おりこうさんだから、わかるわよね?
え?責任?
もちろん、課長以上の官僚は政治家先生に守られているから責任を取る事もとわれる事も無いわ。
それは、課長未満の官僚とあなたたち国民の皆様がとるのよ。
国民の皆様が望めば、課長未満の官僚をさらし首にして溜飲下げて、はいおしまい。
そんなことあたりまえでしょ。
なんど経験したらわかるのかしら。
ほんと、国民の皆様って、バッカよねぇ……
京都の小児科医 2011/04/06 22:49
>最初WHOでも使われそうになりましたが、メキシコ政府からの猛烈な抗議があって使えなかったという経緯
通称ならメキシコかぜでいいと思います。
スペインかぜ、アジアかぜ、香港かぜ、ソ連かぜがあるわけですし、
メキシコかぜ(インフルエンザ(H1N1)2009)
トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20110406
PR