現在の日本の労働問題について長い文章を書いたが、投稿の不手際で全部消えてしまった。仕方が無いので、引用予定だった文章だけを転載しておく。
安全のためにはいったんワードで原稿を書いて自分のパソコンに保存しておくべきなのだが、面倒なのでネットのブログ投稿フォーム画面に直接書くことが多い。そこで、投稿する直前に、書いたものが全部消える、というミスをしてしまうのである。
一応、消えた記事の内容の要点だけを書いておく。
1)現在の日本では企業の総ブラック化が進行している。
2)政府(内閣)はそれをむしろ後押ししている。つまり、政府(内閣)自ら労働基準法の形骸化を進めている。
3)憲法上は、内閣は国会の下部組織であるから、国会議員選挙での国民の投票行動でこの状況は変えられる。
4)だから、よく考えて選挙に臨もう。
といったところである。まあ、能天気と言われそうな意見だが、こういうところでこそ、前向きに考えていきたいわけだ。ウォルフレンの言葉ではないが「シカタガナイ」はもうやめようではないか。
(引用1「海を往く者」より)
ノルウェーでは労働時間に対しての規制が厳しいから、サービス残業はもちろん、突然残業を言い渡されることもない(「残業させてはならない」という規制のために残業代を払って金銭解決も不可)。よって、就労時間が過ぎたら家に帰って毎日家族と食事ができる。日本とは別の価値観による豊かさがある。過重労働を強制されない点は、派遣云々やブラック企業勤務とまでいかなくても「羨ましい」と思う。根本的には事前にちゃんとパイロットを手配すればいいだけの話。北欧ではこんな風に雇用が維持されている(残業させるかわりに十分な数の従業員を雇用する)日本でもサービス残業がばれたときに同様の厳しい罰則があれば(たとえば未払い残業代を払わされるばかりでなく、人事担当が懲役くらったり、会社の存続が危うくなるほどの罰金)、サービス残業なんか従業員が希望しても会社が許さなくなるだろう。
(引用2「すくらむ」より)*国家公務員労働組合のサイトである。偏見抜きに読んでほしい。なお、私(酔生夢人)は公務員でも何でもないし、高級官僚は大嫌いである。
ブラック企業とブラック公務の「民事的殺人」が若者を壊し日本を食いつぶす
テーマ:労働相談
私たち国公一般には年間で100件ほどの労働相談があります。基本的に東京所在の国の機関や関連法人で働く非正規・正規職員の方からの労働相談ですので年間100件というのは結構多いと思いますが、最近増えている労働相談がパワハラ問題です。数日前にとある国の関連法人で働いている方から以下のような労働相談がありました。
私の職場の役員はA省のキャリア官僚の天下りばかりです。数日前、その天下り役員らによるパワハラで職場の若い同僚がうつ病を発症して出勤できなくなりました。
その同僚はきちんと病院から診断書をもらい病気休暇の申請をしました。ところが、役員らは同僚に対して「病気休暇は一切認めない、有給休暇で休め」と命令し、いま有給休暇で休みを取る状態になってしまっています。
心配だったので私が同僚に電話したところ、「有給休暇をすべて取ったら退職するしかない」と力無く言っていました。
このまま同僚は泣き寝入りして退職するしかないのでしょうか?
現在の天下り役員らはパワハラの常習者で、これまでにもパワハラで職員を入院に追い込んだこともありますし、また別の職員をパワハラで退職に追い込んだこともあります。
――以上が数日前に国公一般にあった労働相談です。
ちょうど今日、NPO法人POSSE代表 の今野晴貴さんから近著『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書) を私宛に贈呈いただきました。今野さんのブラック企業に対する指摘は、以前にこのすくらむブログでも「ブラック企業が若者をメンタル疾患に追い込み「民事的に殺す」-パワハラ専門部が存在する日本企業」 というエントリーで紹介したことがあります。
それで、今野さんの著作『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』 (112~113ページ)の「第4章 ブラック企業の辞めさせる『技術』」の中に、「『民事的殺人』――権利を行使できないまでに壊される」という一節があり、次のように書かれています。
「民事的殺人」とは、被害者が権利行使の主体としてはあたかも「殺され」てしまっているかのような状態である。職場のことを思い出すだけで、過呼吸になる、涙が止まらなくなる、声が出せなくなる。徹底的に追いつめられた恐怖の経験が、彼らから法的な権利の主体であることを奪い去る。ブラック企業の側からすれば、この状態こそが、「完全にリスクをヘッジした状態」なのである。
実は、私たちに寄せられる相談の一定部分が本人ではなく、両親や恋人など家族や身の周りの方からのものである。当人が精神的に追いつめられている中で、家族が異変を察知し、相談を寄せるということが、増加してきている。
私たちがこの問題を認識したのも、被害者の母親からの相談がきっかけだった。「息子のことで相談がある」と連絡をとってきたのだ。誰もが名前を知っている家電量販店で働いていた息子が、勤務中に救急車で病院に運び込まれたという。どうやら過呼吸が原因だったようで、医師の診断で重いうつ病だとわかった。職場の状況を聞いていた母親は日常的な上司からの暴言に原因があると察し、会社に事情を聞くのだが、上司は「ふざけていただけ」と誠実な対応をしない。困惑と憤りを抱え、POSSEを訪れたのだった。
高卒で一流企業に正社員採用された若者が、たった2年で壊されてしまった。私たちは何とかサポートしようと思ったが、困ったことにパワハラの記録は何も残っていない。何より、本人は当時の状況を思い出すだけで意識を失ってしまうような状況で、何があったのかすらわからない。弁護士や労組とも協力したが、結局手出しすることができなかった。当人が昔を思い出すことも、話すこともできない状態では、裁判も団体交渉もしようがない。
人間の破壊が極限まで進むと、権利行使の主体となりえないほど完全に破壊されてしまうのである。
――以上が今野さんの著作からの引用です。
上記で紹介した私たち国公一般に寄せられた労働相談も本人ではなく職場の同僚からでした。天下り役員からパワハラを受けうつ病になって働けなくなった若者は「有給休暇をすべて取ったら退職するしかない」と今野さん指摘するところの「民事的殺人」に追い込まれているのです。
「ブラック企業」は民間企業だけの話ではありません。国の職場も「ブラック化」しているのです。さらにやっかいなのは「公務員バッシング」でその「ブラック化」が加速していることです。「公務員バッシング」で人件費カットが進んでいるわけですが、結局、人件費カットは職場の一番弱い職員にしわ寄せされているだけなのです。その一方で法外な高給をもらっている天下り役員は安全地帯にいます。なぜって天下り役員が牛耳っているわけですから、人件費カットが来ても平の職員の人件費をカットすればいいだけなのです。なので、公務員バッシングによる人件費カットの職場における実際は、一番弱い職員をパワハラで退職に追い込むという「ブラック化」が加速することになるわけです。
(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)
安全のためにはいったんワードで原稿を書いて自分のパソコンに保存しておくべきなのだが、面倒なのでネットのブログ投稿フォーム画面に直接書くことが多い。そこで、投稿する直前に、書いたものが全部消える、というミスをしてしまうのである。
一応、消えた記事の内容の要点だけを書いておく。
1)現在の日本では企業の総ブラック化が進行している。
2)政府(内閣)はそれをむしろ後押ししている。つまり、政府(内閣)自ら労働基準法の形骸化を進めている。
3)憲法上は、内閣は国会の下部組織であるから、国会議員選挙での国民の投票行動でこの状況は変えられる。
4)だから、よく考えて選挙に臨もう。
といったところである。まあ、能天気と言われそうな意見だが、こういうところでこそ、前向きに考えていきたいわけだ。ウォルフレンの言葉ではないが「シカタガナイ」はもうやめようではないか。
(引用1「海を往く者」より)
ノルウェーでは労働時間に対しての規制が厳しいから、サービス残業はもちろん、突然残業を言い渡されることもない(「残業させてはならない」という規制のために残業代を払って金銭解決も不可)。よって、就労時間が過ぎたら家に帰って毎日家族と食事ができる。日本とは別の価値観による豊かさがある。過重労働を強制されない点は、派遣云々やブラック企業勤務とまでいかなくても「羨ましい」と思う。根本的には事前にちゃんとパイロットを手配すればいいだけの話。北欧ではこんな風に雇用が維持されている(残業させるかわりに十分な数の従業員を雇用する)日本でもサービス残業がばれたときに同様の厳しい罰則があれば(たとえば未払い残業代を払わされるばかりでなく、人事担当が懲役くらったり、会社の存続が危うくなるほどの罰金)、サービス残業なんか従業員が希望しても会社が許さなくなるだろう。
(引用2「すくらむ」より)*国家公務員労働組合のサイトである。偏見抜きに読んでほしい。なお、私(酔生夢人)は公務員でも何でもないし、高級官僚は大嫌いである。
ブラック企業とブラック公務の「民事的殺人」が若者を壊し日本を食いつぶす
テーマ:労働相談
私たち国公一般には年間で100件ほどの労働相談があります。基本的に東京所在の国の機関や関連法人で働く非正規・正規職員の方からの労働相談ですので年間100件というのは結構多いと思いますが、最近増えている労働相談がパワハラ問題です。数日前にとある国の関連法人で働いている方から以下のような労働相談がありました。
私の職場の役員はA省のキャリア官僚の天下りばかりです。数日前、その天下り役員らによるパワハラで職場の若い同僚がうつ病を発症して出勤できなくなりました。
その同僚はきちんと病院から診断書をもらい病気休暇の申請をしました。ところが、役員らは同僚に対して「病気休暇は一切認めない、有給休暇で休め」と命令し、いま有給休暇で休みを取る状態になってしまっています。
心配だったので私が同僚に電話したところ、「有給休暇をすべて取ったら退職するしかない」と力無く言っていました。
このまま同僚は泣き寝入りして退職するしかないのでしょうか?
現在の天下り役員らはパワハラの常習者で、これまでにもパワハラで職員を入院に追い込んだこともありますし、また別の職員をパワハラで退職に追い込んだこともあります。
――以上が数日前に国公一般にあった労働相談です。
ちょうど今日、NPO法人POSSE代表 の今野晴貴さんから近著『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書) を私宛に贈呈いただきました。今野さんのブラック企業に対する指摘は、以前にこのすくらむブログでも「ブラック企業が若者をメンタル疾患に追い込み「民事的に殺す」-パワハラ専門部が存在する日本企業」 というエントリーで紹介したことがあります。
それで、今野さんの著作『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』 (112~113ページ)の「第4章 ブラック企業の辞めさせる『技術』」の中に、「『民事的殺人』――権利を行使できないまでに壊される」という一節があり、次のように書かれています。
「民事的殺人」とは、被害者が権利行使の主体としてはあたかも「殺され」てしまっているかのような状態である。職場のことを思い出すだけで、過呼吸になる、涙が止まらなくなる、声が出せなくなる。徹底的に追いつめられた恐怖の経験が、彼らから法的な権利の主体であることを奪い去る。ブラック企業の側からすれば、この状態こそが、「完全にリスクをヘッジした状態」なのである。
実は、私たちに寄せられる相談の一定部分が本人ではなく、両親や恋人など家族や身の周りの方からのものである。当人が精神的に追いつめられている中で、家族が異変を察知し、相談を寄せるということが、増加してきている。
私たちがこの問題を認識したのも、被害者の母親からの相談がきっかけだった。「息子のことで相談がある」と連絡をとってきたのだ。誰もが名前を知っている家電量販店で働いていた息子が、勤務中に救急車で病院に運び込まれたという。どうやら過呼吸が原因だったようで、医師の診断で重いうつ病だとわかった。職場の状況を聞いていた母親は日常的な上司からの暴言に原因があると察し、会社に事情を聞くのだが、上司は「ふざけていただけ」と誠実な対応をしない。困惑と憤りを抱え、POSSEを訪れたのだった。
高卒で一流企業に正社員採用された若者が、たった2年で壊されてしまった。私たちは何とかサポートしようと思ったが、困ったことにパワハラの記録は何も残っていない。何より、本人は当時の状況を思い出すだけで意識を失ってしまうような状況で、何があったのかすらわからない。弁護士や労組とも協力したが、結局手出しすることができなかった。当人が昔を思い出すことも、話すこともできない状態では、裁判も団体交渉もしようがない。
人間の破壊が極限まで進むと、権利行使の主体となりえないほど完全に破壊されてしまうのである。
――以上が今野さんの著作からの引用です。
上記で紹介した私たち国公一般に寄せられた労働相談も本人ではなく職場の同僚からでした。天下り役員からパワハラを受けうつ病になって働けなくなった若者は「有給休暇をすべて取ったら退職するしかない」と今野さん指摘するところの「民事的殺人」に追い込まれているのです。
「ブラック企業」は民間企業だけの話ではありません。国の職場も「ブラック化」しているのです。さらにやっかいなのは「公務員バッシング」でその「ブラック化」が加速していることです。「公務員バッシング」で人件費カットが進んでいるわけですが、結局、人件費カットは職場の一番弱い職員にしわ寄せされているだけなのです。その一方で法外な高給をもらっている天下り役員は安全地帯にいます。なぜって天下り役員が牛耳っているわけですから、人件費カットが来ても平の職員の人件費をカットすればいいだけなのです。なので、公務員バッシングによる人件費カットの職場における実際は、一番弱い職員をパワハラで退職に追い込むという「ブラック化」が加速することになるわけです。
(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)
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