ここに書かれた記事冒頭部分だけでも現在の国際情勢に対する田中宇の考えはだいたい分かる。まあ、電車の中吊り広告を見れば週刊誌記事の内容はだいたい分かるのと同様である。特にジャーナリスティックな記事の冒頭部分というのは、その記事のエッセンスを書くのが普通だから、そこだけ読めば、私には十分である。
ウクライナ情勢、日米同盟の今後の方向、世界金融戦争という大きな三つの問題についての情報が、わずか1ページ程度の紙面から得られるわけだ。ただし、ここには田中宇自身の意見が含まれており、そのすべてに納得できるわけではない。たとえば、米国の没落は確実として、中国が新覇権国家になると結論するのはまだ早いのではないか。まあ、覇権国家という考え自体がもはやナンセンスになるのではないか、とも思う。そもそも、国家という概念は経済面ではすでに時代遅れなのだから。つまり、企業活動は国家の垣根を超えるというのはもはやあまりにも当たり前の事実でしかなく、問題はそれを如何にして一般大衆の不利益にならない形で着地させるか、ということにしかないからだ。
国家という概念が経済的にも意味を持つのは戦争だけだろう。つまり、商売としての戦争である。世界の軍産複合体はまだそれで商売をするつもりでいるが、経済面での国家意識の消滅は、あるいは戦争商売をも次第に消滅させるという可能性もあるかもしれない。
ただし、金融戦争のような「見えない戦争」がこれからは激しくなり、それによる一般庶民の被害は本物の戦争に劣るものではない、と私は見ている。
まあ、金融支配社会(金融資本主義)というものへの疑問を多くの人が持つことが、自分や子孫の生活や人生を守り、そして健全な判断をするために、今後は大切になってくるのではないだろうか。たとえばフクシマという悲劇も、いわば拝金主義という怪物の生み出したものなのである。
(以下引用)
【2014年4月28日】 2月のウクライナ危機発生以来、BRICSの中でもロシアが特に、ドルの基軸性低下による米国覇権の崩壊を誘発したがり、BRICSの影響力が強いG20は、ロシアに引っ張られる形で、米国だけでなく日本に対してもQEを縮小するよう圧力をかけ始めた。覇権転換を賭けた世界規模の戦争を世界大戦というが、第三次世界大戦の主戦場は、核などの兵器によるものでなく、金融システムの主導権や金融兵器(愛国法311条)、QEなどドルの延命策をめぐる、金融の問題だ。第三次世界大戦は、金融戦争としてすでに始まっている。日銀がQEをどう縮小するか、日米のQE縮小が債券金融システムの延命にどう影響するかは、金融戦争(第三次世界大戦)の一部である。
ラジオデイズ・田中宇「ニュースの裏側」・・・「没落する米国と新覇権国家中国」というパラダイム
◆時代遅れな日米同盟
【2014年4月23日】 日本も米国も経済が衰退している。米国は、衰退する日本と組むより、何億人もの貧困層が中産階級になって消費が急拡大しつある中国やインドなどBRICSと組んだ方が良い。日本も、衰退する米国に従属し続けるより、BRICS、特に近くにある中国との経済関係を強化するのが良い。オバマが訪日する日本では、日米同盟(対米従属)こそ日本の繁栄の基礎と喧伝するが、世界の現実は全く違う。
内戦になりそうでならないウクライナ
【2014年4月18日】 ウクライナ東部の町では、ウクライナ空軍の戦闘機やヘリコプターが威圧的な低空飛行を続けている。それだけを見ると、今にも本格的な鎮圧が行われて内戦に突入しそうだが、鎮圧行動に不可欠な地上軍は、奪われた装甲車の部隊以外には目撃されていない。空軍は威圧飛行するだけで空爆せず、心理戦に徹している。ウクライナ政府は、本格的な東部襲撃を躊躇しているのでなく、襲撃を試みたものの失敗し、装備や兵士など地上軍の戦力をかなり失い、襲撃を拡大できない状況だ。