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なぜ日本では子供が不幸なのか

「混沌堂主人雑記」に引用されている記事の一部で、後半は同じような思想の繰り返しになるので省略。現代の人間の「偽善性」の理由として「シツケようとするからだ」というのはあまりに一面的であり、私のような社会主義者は、「それは資本主義が『闘争』を本質としているからだ」と考える。
つまり、あらゆる人間が敵なのだから、偽善でしか自分を守れないわけだ。競争に勝つことを子供のころから求められる以上、子供は敵を倒す、あるいは自分を敵から守ることが生きる条件になり、兵士化するのである。当然、偉い人(親、教師、会社の上司)のご機嫌伺いの卑屈な人生になる。
幕末の日本を訪れた外国人の多くが、「日本の子供は世界で一番幸福だ」と見ていたことを、現代の教育者、教育界の人間は深く考えるべきだろう。


(以下引用)

上記文抜粋
・・・・・・・・・・・・
「しつけ」考。
戦前賛美の人の話を聞くと、「昔は子どもを厳しく訓育し、そのおかげでしつけが行き届いていた。今の子どもは甘やかされてダメだ」と聞かされることが多い。
しかし渡辺京二「逝きし世の面影」なんかを読むと、大人は子どもをしつけようとしてるように思えない。ものすごく可愛がる。
叱ることもほぼない。なのに子どもは大人をよく尊敬し、知らぬ間に大人の立ち居振る舞いを覚え、美しくなっていく。まさに「身が美しい=躾」となっていく。
むしろ戦前、軍国主義が始まるあたりから鉄拳制裁が始まり、妙に厳格な教育が施されるようになってから、屈折した人間が増えてるように思う。
幕末から明治初期あたりまでは西洋文明に汚染されることなく、子どもをよく可愛がる文化であったらしい。その頃は「躾=立ち居振る舞いが美しい」が自然と身についたようだ。しかし時代が下るにつれて西洋文明に影響され、ムチと道徳による指導が入ってくると。
抑圧された、表面上は厳格だが内実はヘナチョコな人間を増産するようになったと感じる。
シツケようとしない時代には「躾=立ち居振る舞いが美しい」が成立し、シツケようとしてからは表面的で、しかし内実は醜い人間像を生み出してしまったのでは?という気がする。シツケようとすると躾を失う皮肉。
欧米では、中世キリスト教の厳格な教育(人間は生まれながらにして罪を背負っているから、自分にムチ打ってそれを償わねばならぬ)の影響を長らく引きずって、大人が「外から」子どもを枠にはめようとする伝統を持っていた。それが変化し始めたのはルソーが「エミール」を著したあたりから。
ルソーが現れる前は、人間は放置しておくと野蛮で凶暴だから、教育によって洗練された教養を授けねばならぬ、と考えていた。しかしルソーは、むしろ子どもは生まれもって善良であり、文明に汚されることによって悪徳を身につける、と考えた。
ルソーの「新説」は、それまでの西洋人が子どもを「小さな大人」とみなし、未熟で愚かな子どもをムチでシバいて立派な大人に教育せねばならぬ、という考えていたのを逆転させ、子どもはありのままで素晴らしく、それをなるべく損なわないまま育てた方がよい、という新たな考え方を生んだ。
しかし、ルソーのこの考え方はなかなか広がりを見せなかったらしい。A.S.ニイル「問題の子ども」は1925年の出版だそうだが、当時の西洋人が、キリスト教の厳格な人間観(人間は生まれつき罪人)に影響され、子どもを厳しく規制するのが普通だったことをうかがわせる。
しかしニイルらの考えが次第に普及し、欧米では子どもをありのまま肯定し、そこから出発して子育てを考えるように再構築が進んだ。幕末の日本に遅れること100年ほどかけて、ようやく西洋は「シツケない方が躾が身につく」ことを知るようになったと言える。
ところが日本では、逆転現象が起きてしまったように思う。なんでも西洋のものはありがたがる戦前戦後の風潮で、子どもを厳格に指導する中世キリスト教のような子育て観を輸入し、取り入れてしまった感じがある。子どもをのびのびと育てていたのが、親の監視下に置く感じが濃厚となってしまった。
戦前賛美派の「躾の行き届いた日本人」は、幕末の、変にシツケようとしていなかった時代の遺産で育てられていた世代の人達のような気がする。その後の、厳しくシツケようと育てられた世代は、むしろ表面だけ取り繕い、内心は屈折してねじ曲がった心を育てていたのではないかと思う。

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