忍者ブログ

「民主主義」が「巨大戦争を生む」原理

私は山本七平の「ユダヤ思想への肩入れ」に反発する者だが、氏の書いた文章の中には有益な思想の引用も多い。たとえば、『小林秀雄の流儀』の中に引用された文章を知らない人が多いのは残念なことである。その幾つかを孫引き引用する。

(以下引用)冒頭の文章の「一世紀も経たぬうちに」とは「フランス革命から一世紀も経たぬうちに」ということ。「道徳の根本の基礎」はキリスト教信仰、「社会的理想に関する抽象的公式」は、たとえばフランス革命の「自由、平等、友愛」など。


「ヨーロッパは、外的現象に救いを求める人に満ちている。道徳の根本の基礎が、もう崩壊しているのだから、社会的理想に関する抽象的公式が、幾つも叫ばれれば叫ばれるほど、事態は悪化するのだ。一世紀も経たぬうちに、彼らはもう二十回も憲法を変え、十回近くも革命を起こしたではないか。総決算の時は必ず来る。誰も想像できないような大戦争が起こるであろう。私は断言してはばからないが、それはもう直ぐ扉の外まで迫っている。君は私の予言を笑うか。笑う人は幸福である。神よ、彼らに長命を与えたまえ。彼らは自分の眼で見て驚くだろう。」(小林秀雄「政治と文学」に引用されたドストエフスキーの文章。文語表記は私が口語表記に直してある。以下同じ。)

私(夢人)の感想だが、世界的大戦争は二度とも「民主主義の時代」になってから起こったのが面白い。なぜか。それは、次のヒトラーの思想で分かる。同じく小林秀雄の文章中のものだ。

「彼の人生観を要約することは要らない。要約不可能なほど簡単なのが、その特色だからだ。人性の根本は獣性にあり、人生の根本は闘争にある。これは議論ではない。事実である。それだけだ。(中略)獣たちにとって、他に勝とうとする邪念ほど強いものはない。それなら、勝つ見込みがない者が、勝つ見込みのある者に、どうして屈従し味方しないはずがあるか。」
「大衆は理論を好まぬ。自由はもっと嫌いだ。何もかも君自身の自由な判断、自由な選択にまかすと言われれば、そんな厄介な重荷に誰が耐えられよう。」(小林秀雄「ヒットラーと悪魔」より)

なお、小林秀雄は、日本中がヒトラー賛美に浮かされていた頃(日独伊協定の頃か)に、ヒトラーの「我が闘争」を読んで、彼の精神を見抜いていたことが、(引用は略すが)同書の中に書かれている。

「民主主義」は「国民主権」なのだから「戦争はほぼ国家総動員になる」わけだ。戦争に国民が賛成するなら国民全員が戦うのが当然だろう。(多数決なのだから、戦争反対派も動員される。)ところが、現実には主権者であるはずの国民の中の下層国民が戦わされ、上級国民は後方で金儲けをし、人生を楽しんでいる。相手国も同じである。それが二度の世界大戦である。

ついでに、山本七平氏自身の証言も書いておく。これが軍隊の実相である。

「日本にはヒットラーはいなかったが、民衆はいた。昭和十七年、私が軍隊に入って何よりも驚いたのは軍人の地方人(民間人)蔑視であった。流行のナチスばりに似せようとした軍服の青年将校が音頭をとって歌わせる『昭和維新の歌』には『盲目(めしい)たる民、世に踊る』という一句があった。」
さて、盲目(めしい)て、世に踊っていたのはどちらだろうか。軍人のおおはしゃぎ、夜郎自大が日本を地獄へ連れていったのではなかったか? 
そしていまだに、西田某のような大馬鹿発言をする政治家は絶えない。高市もその同類だ。彼らには、戦争が起こったら、銃を取って最前線で戦ってもらおう。年齢も性別も関係ない。銃後でも無数の幼児や子供や老人が死ぬのである。

拍手

PR

この記事にコメントする

Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass
Pictgram
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

04 2025/05 06
S M T W T F S
31

カテゴリー

最新CM

プロフィール

HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

ブログ内検索

アーカイブ

カウンター

アクセス解析