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超訳「踊るドワーフ」#2

だが、こうしたゴタゴタはドワーフには何の問題もないようだった。かかっている曲が何であれ、それで踊ることができれば、彼は満足だった。その時彼が踊っていたのはチャーリー・パーカーのレコードで、そいつは「クラシック・ギター・グレート・セレクション」というジャケットに入っていた。彼の体は竜巻のように回転し、それはまるでチャーリー・パーカーのサキソフォンから注がれる荒々しい音のつむじ風を吸い上げているかのようだった。ブドウを食べながら、私は彼が踊るのを眺めていた。
彼は汗をかいていた。彼の頭がスイングするたびに彼の顔から汗が飛び散り、彼の腕が波打つたびにその指から汗が放射された。だが何者も彼を止められなかった。レコードが終わるたびに私はブドウの入ったボウルを新しいブドウのボウルに取り換えた。そして彼は踊り続けた。

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超訳「踊るドワーフ」#1

一人の(一匹のと言うべきか)ドワーフが私の夢の中に現れて、ダンスを踊ってくれと私に言った。
それがただの夢だと私は知っていたが、その時の私は現実生活と同様、夢の中でも疲れていた。そこで私は非常に丁重にお断りした。ドワーフは気分を害した風もなく、自分ひとりで踊りだした。
彼は地面にポータブル・プレーヤーを置き、音楽に合わせて踊った。レコードはプレーヤーの周りに散乱していた。そのうちの幾つかを私はあちこちの山から拾い上げた。それらはまったくの音楽的ごた混ぜで、まるでドワーフはそれらを目を閉じて手に触れた限り集めたかのようだった。そしてどのレコードもその正しいジャケットの中に入っているものはなかった。ドワーフは演奏半ばのレコードをターンテーブルから取り上げ、ジャケットに入れもしないでレコードの山の上に投げ、その後でいい加減に手あたり次第のジャケットに入れた。グレン・ミラーのジャケットの中にローリング・ストーンズのレコードがあり、ラベルの「ダフニスとクロエ」の中にミッチ・ミラー合唱団があったりした。




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超訳「踊るドワーフ」前置き

別ブログに載せてあった記事だが、せっかくやった作業なので、これからあまりまとまった作業もできないだろうから、死ぬ前にこちらにも載せておく。65回くらいになる予定である。一度に1回にするか、数回分を一度に載せるかは気分次第だ。まあ、最初は一度に1回とする。
各回の文章量は少ないので、「日刊酔生夢人新聞」の小説欄と思ってくれればいい。

(以下自己引用)これ以降はこの「自己引用」という説明は抜きにする。
ちょっと妙な試みをしてみようと思う。昨年イギリスに旅行に行った時に買った「BEDTIME STORIES」という本の中に村上春樹の短編小説が載っていたのだが、同じ本に載っている他の作者を見るとナサニエル・ホーソンとかR・L・スチーブンソンとかモーパッサンとかロード・ダンセイニなどの大物がほとんどで、新しいところではウラジミール・ナボコフとかアーシュラ・K・ル・グインなど、やはり知名度の高い作家ばかりである。その中に入っているのだから、村上春樹も大したものである。
私は実はどちらかと言えば村上春樹の作品は苦手で、あまり読んだことは無いのだが、この中に入っていた「ダンシング・ドワーフ」を少し読んでみると、これがなかなかの傑作であると思われた。そこで、英語からの重訳という形で、この作品を訳してみようと思う。
もちろん、私はこの作品の日本語原作は読んでいない上に英語も不得意なので、誤訳がたくさん出てくると思うし、実は真面目に辞書を引く気もあまり無い。辞書を引くのは必要最低限にして、知らない単語の大半は推測で訳すつもりである。だから、村上作品のまったくのパチモンになるわけだが、それでも村上作品のテイストが少しは出ることになるのか、ひとつの実験である。
とにかく、この作品のファンタジー風味はたいしたもので、村上春樹は短編作家としてのほうが才能はあるような気がする。と言っても、先に書いたように私は彼の作品はほとんど読んでいないのだが。
なお、著作権の問題は、先に書いたように、これは英文からの翻訳であり、村上作品そのものではない、ということで見逃してもらいたい。むしろ、作品の宣伝になる、くらいの広い心を原著者にはお願いしたい。

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酔生夢人
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考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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