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医療崩壊の一報告

現在の医療の実態のレポートとして転載しておく。後半には筆者の政治的主張が書かれていたが、与謝野の増税路線賛成の論説であり、えらそうな「ポピュリズム批判」の文章なので省略する。
ポピュリズムとは「大衆迎合」であり、視点を変えれば民意を尊重することである。現在の政治は「民意無視」の政治であるにもかかわらず、ポピュリズムを批判してどうするというのか。増税によって苦しむ無数の貧民を無視して、「俺は増税という苦い薬や痛みにだって堪えてみせる。なぜなら俺は愚かな民衆の一人ではないからだ」、と言わんばかりのエリート臭の漂う文章だ。
「我々は皆、他人の痛みに平然と耐えきれるくらいの勇者である」とはラ・ロシュフーコーの言葉だったと思うが、まったくである。
だが、それでも掲載するのは、前半部分は現場からの事実報告なので、貴重だと思うからである。


(以下「阿修羅」記事より引用)


■from MRIC  □ 与謝野馨氏の死処  ■亀田総合病院 副院長 小松秀樹
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 正月明けの1月13日、かねて予想されていたが、亀田総合病院(千葉県鴨川市)が
パンクした。考えうる限りの調整をしてきたが、入院病床が足りなくなり、救急患者
がこれまで通り受け入れられなくなった。正確には入院病床の不足ではなく、看護師
不足のためである。建物・設備としての病床はあるが、看護師不足のために、数十床
閉鎖している。平均在院日数も12日間と10対1看護体制としては限界まで短くなった。
これ以上労働負荷をかけるのが不可能なので、7対1看護体制を達成することを優先課
題にしている。このため、しばらく、増床できる見込みはない。

 亀田総合病院の入院患者の53%は安房医療圏外に在住している。北東側の山武長生
夷隅医療圏の医療はほぼ崩壊状態にある。北側の君津医療圏も、医師不足のため中核
病院の機能が低下し、あふれた患者が亀田総合病院に押し掛けてきている。

 国立社会保障・人口問題研究所の都道府県別将来推計人口によると、2010年から20
25年(団塊世代の全員が75歳を超える)までの15年間で、65歳以上の高齢者人口が日
本全体で694万人増加する。現役世代の医療需要は小さく、大半の医療需要は高齢者
による。今後医療需要の大幅増加が見込まれる。

 特に首都圏の高齢者人口の増加は著しい。全国の増加の3分の1は首都圏の増加であ
る。厚労省の基準病床数の計算方法を用いて試算すると、東京、神奈川、埼玉、千葉
で、15年間で、基準病床+介護施設対応可能数を26万床増やす必要がある。これは現
在の千葉県全体で必要とされる数の3倍である。さらに、埼玉県、千葉県は人口当た
りの医師数・看護師数が日本で最も少ない。亀田総合病院のパンクの原因は人口問題
に起因するので、今後、悪化することはあっても、改善する可能性はほとんどない。

 2008年度に、国の指示で、各都道府県で一斉に地域医療計画が改定された。この改
定は、従来の病床数抑制政策に則って立案された。当時、多くの自治体病院は、2004
年頃から目立ってきた医師の立ち去り現象のため疲弊していた。加えて、総務省が20
07年12月に出した自治体病院改革ガイドラインで、民営化、独立採算化が求められた。
具体的には、経費と定員の削減圧力が強まった。民営化の受け皿はほとんど現れなか
った。経費削減圧力のために、病院設立者と管理者の溝が広がり、一部で病院管理者
が立ち去った。この間、日本全体で、病床数が密かに減少し、一方で、増床はストッ
プした。千葉県の既存病床数は名目上2007年3月31日45,537から、2010年4月1日45,65
9とほとんど変化していない。その間に基準病床数は、2008年44,241から、2010年48,
482(千葉県健康福祉部試算)と増加し、病床数は1,296の過剰から、2,823の不足に
なった。既存病床数には、利用されていない、あるいは、存在しない病床が含まれて
いる。許可病床が既得権として病院で保持されているからである。千葉県に問い合わ
せても実態を把握していないという。ある専門家は、千葉県では、実際に稼働してい
る病床数は既存病床数の70%程度ではないかと推定している。

 どう対応するのか。これから医師や看護師を養成しても間に合わない。必要な費用
も膨大になる。これまでと同様の方法で医療サービスを提供しようとする限り、サー
ビス水準を大幅に下げざるを得ない。

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雇用問題に解決策はあるか

日本あるいは世界的な雇用問題は、今後の最大の問題である。つまり、生きるための食糧をどう自給するかというのが第一の問題であり、次に、その食糧を手に入れるための金をどう手に入れるかというのが第二の問題だ。もちろん、食糧だけではなく、住居・医療・教育など問題はいろいろあるが、まず基本はこの二点だ。そこで、問題提起のために、「阿修羅」投稿とそのコメントをまず転載しておく。次回はこれについて考えてみたい。


(以下引用)



雇用問題は、ロボット自動化電子化による人減らし競争激化時代、景気では解決できない
http://www.asyura2.com/11/senkyo105/msg/630.html
投稿者 heiwatarou 日時 2011 年 1 月 26 日 23:26:27: Bioiw4SmLoqDQ


国民は政治家もエコノミストもマスコミも全てが雇用問題は景気が良くなれば解決できると信じているようだが不思議でならない。
解決できないとの反対意見はないのか。
景気対策としての金融緩和も合理化投資、すなわち人件費削減投資となり、投資が終われば人減らしとなる。
十数年にも及ぶ預金金利ゼロ、なのにさらなる金融緩和が必要だとは、預金者を馬鹿にしている。
そもそも金融緩和による景気対策が仇となり、人減らし、雇用減、消費減、の原因にもなり失われた15年というのが現実ではないのか。
製造部門ばかりでなく自動改札ATMネット販売それに飲み屋まで人減らし競争、紙まで必要なくなる時代、
人減らしの上手い企業は優良企業で下手な企業は潰れる。今後ますます人減らし技術は向上するはず。

▼1994年以来大企業ですら人件費が下がることがあっても上がることはない、
株の配当は3~4倍になっているにもかかわらず。こんな時代になったのです。
http://www.garbagenews.net/archives/990472.html

▼人減らしは人間努力の結果で快適な社会が作れるはず、労働者の地位を高める社会構造改革が必要
http://www002.upp.so-net.ne.jp/HATTORI-n/001.htm  

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コメント
01. 健奘 2011年1月27日 00:20:51: xbDm84QDmOFmc : rYd4I1Qido

投稿の通りです。
以下に、見方を変えて、その見方はあまり良くないかもしれませんが、話をしてみたいと思います。

古代ギリシャ、畑仕事は奴隷にやらせていました。市民は、兵役、奴隷の管理、そして、劇、スポーツ、哲学、数学などをやっていました。

古代エジプト、やはり奴隷に畑仕事をやらせました。農閑期には、平民は、ピラミッド建設をやって、麦をもらったのです。

現代、ロボットも工作機械も、農業機械も、奴隷と見なせば、平民は、劇、スポーツ、ピラミッド建設、数学など、様々なことをやって、日常品をもらえるはずです。実際、日常品は、機械が作ってくれます。そして、あふれています。

時代が変わったのだと思っています。思いたくないのは、奴隷を集中的に所有している資本家、そして、経済学者ではないでしょうか。





02. 2011年1月27日 06:24:48: hQoskZtVx2
景気政策ってのは、金融対策と所得再分配の2面政策ですから。一面的なら失敗するのは当然でしょ?

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ニュアンスのニュアンスによる視聴者誘導

今日の朝のテレビで、カツラ疑惑で有名な司会者が「ドラッグ・ラグ」のニュースを解説していた。
若くして乳がんのために死んだ女性が、欧米で承認されている治療薬が日本で早く認可されていたら「治ったかもしれない」というような解説だが、正確に言うと「治る」とも言っていなかった。とにかく、その認可を待ち望みながら死んでいったというニュアンスの話だった。
その後は、この「治療薬」が日本でも開発されているという話で、ここでもその認可が待ち望まれるというニュアンス(ニュアンスばかりなのである。)だった。とにかく、こうしたぼやかした話で、印象だけを聞き手に伝えることにかけては日本のマスコミは名人芸だ。
言うまでもないが、こういった治療薬で「治る」などとは絶対に言わないのである。言えるはずがない。ただ、患者はそれを待ち望んでいる、という情報を視聴者に与え、その薬が福音であるという期待感を醸成するのが、こうした「報道番組」「情報番組」の役割だ。
死んだ女性も、自分の死がダシにされて他の患者を誤った方向に導き、無数の薬害被害者を出すことになったら、往生できないだろう。

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トカゲのしっぽ切り

イレッサ問題について、製薬会社の現場医者への責任転嫁というのもなかなか大きな問題かと思うので、関連記事を転載する。

(以下「阿修羅」記事より転載)


何でも医者のせいにする薬害報道 (イレッサ薬害)NHKニュース9の報道は酷かった
http://www.asyura2.com/10/hihyo11/msg/477.html
投稿者 虹の仙人 日時 2011 年 1 月 20 日 13:02:24: ZmDTMI6bcHXKo


これは大昔からづっと続いている事であるが、薬害が起ったときは常に医者への責任転嫁報道をして、製薬会社を護る。それはナゼか。報道で触れてはいけない3つの掟があり、そのうちの一つが製薬会社についてである。
今回のNHKニュース9の報道が問題なのは
1.訴訟されている製薬会社の名前が一切出てこない点。厚労省の責任論も論じられない。薬害報道では製薬会社の名前は極力出さない掟がある。

 下にNHKの「イレッサ訴訟“話し合いを”」という記事を上げておいたが製薬会社の名前は出てこない。
 聞き漏らしたのでなければ、ニュース9でも製薬会社の名前は一切出てこなかった。

2. 医者に対する責任のすり替え。製薬会社ではなく、現場の医者を矢面に上げる。
 下のNHKの記事にはないが、NHKニュース9では、大越、青山キャスターとスタッフによる医者への責任転嫁が行われた。どういう事かというと、医者がチャンと診ていないといういつもの報道陣の主張である。多くの日本人は医者がチャンと診ないから薬害が起るという意識を何十年と植え付けられてきた。しかしそうではないのである。薬が悪いから薬害が起きるのである。
 今回のイレッサも「副作用が少ない夢の新薬」として、(いつも遅すぎる薬事審査が批判される機関としては珍しく)世界で初めて日本の厚労省が承認した薬である。夢の薬であれば使わないほうがおかしいのであるが、実際は悪夢の新薬であった。
“夢の新薬”ともてはやされたイレッサの「薬害」を裁判で問うを
下に上げておく。
 今回のニュース9の報道で際立っていたのはすり替え方法が進化した点にある。抗がん剤の専門医がいないということに終始していた。専門医の不足をこの薬害が起った根源としていたのである。大越、青山キャスターは、医者がチャンしてないからと軽く誘導し、専門医がいないのが一番の課題と断罪した。薬の害=医者のせい という長年にわたる刷り込みで条件反射の域に達した方程式で多くの日本人はだまされているのである。 製薬会社は報道機関にとってアンタッチャブルな存在なのである。
 小泉政権の時、今もそうであろうが、製薬会社が史上最大の利益を計上したとき、取りあえずNHKはニュースで報道したが、その次のニュースは、日本の製薬会社が国際競争に打ち勝つためには多額の資金が必要というニュースであった。
 古い話であるが、大腿四頭筋短縮症も薬害である。生理食塩水以外のどの薬を注射しても起るという研究報道が有り、科学的に薬害であるという事を証明したにも関わらず、わざわざ医者がチャンとしていないからとアナウンサーが非科学的なコメントした。これの繰り返しである。医者は神様でもなんでもなく、その時々の情報が間違ったり不足していたりすればどうしようもないのである。人が仕事をしているのである。
NHKに良心があるなら、科学的スピリッツがあるならこのようなニュースキャスターとスタッフを総入れ替えすべきだある。医者と患者の信頼関係を損なう報道をした責任は重大である。

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水田にかかる労力と金

食糧自給の障害は「水田」にある、という話。「阿修羅」から転載。その対策部分には疑問符がつくので転載しないが、日本農業は「水田」依存を変えるべきだというのは重要なヒントである。


(以下引用)


その最初の食い物の問題

現在職業農家に依存していますが、ホントに作っているのは自然の摂理です。
それは種という精妙なプログラム、虫や鳥による交配、微生物による分解、地球と太陽という巨大施設がもたらす気象というインフラです。
これらの提供は全て無償となっています。空気も水も。何もかも。
なのに何故、人はお金を払って食糧を購入しなければならないのでしょう?
精妙で巨大なインフラや資源が全くタダで使えるというのに...。
其処に、ばからしくアホくさい余計なインフラとそのために付随して生まれた弊害を、あえて打ち消す労力を付け足しているからです。
しかもそれが食糧生産には欠かせない要素だと思い込んでしまった。

この解決は実は至極簡単です。
付け足されたその無意味なインフラを捨て去れば、殆ど自動システムの自然まかせ農法で労力も掛からず、毎年タダで収穫し、しかもそれは無限循環するのです。その年間労働時間は十日ほど。後の355日が自由時間(故福岡正信翁曰く)。
つまり天国の舞台は既に整っていたというわけです。

その為の障害に焦点を絞ります。

主食は米とか麦ですね。飽きが来ない素晴らしい食べ物です。日本では米。
では何故水田で作るか?
一粒の実が小さいという問題がまずはそこには有りそうです。
これが主食がかぼちゃだというのならば、雑草に埋もれていても収穫収集は容易ですが、米は雑草に紛れると、その雑草の種や茎枝との選別が大変になり、従って出来る限り広範囲で雑草を生やさない工夫が必要となります。それは麦も然り。
苗床を別に作るのも鳥害を避けたり、一度田を耕して雑草をリセットするため。
そして田に水を張り、田植えとなります。この労力は大変です。
更に水田は水源となる河川や沼が近い土地に限定され、水路や水門という個人負担では不可能なインフラを必要としますので、集団管理と協力体制が必要。ここで集団を束ねる権力機構が発生し、諸悪の根源がスタートします。

人が等しく平等であるための根本がここから失われてしまっています。
ならばまずは其処から改める為には、その水田に変わる手法を生み出す必要があります。

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自給自足農業のガイドブック

「がま仙人のブログ」より備忘のため転載

(以下引用)


2007年11月04日22:55 カテゴリ晴耕雨読(121-130)
[晴耕雨読-0121] 農家が教える自給農業のはじめ方―自然卵・イネ・ムギ・野菜・果樹・農産加工農家が教える自給農業のはじめ方―自然卵・イネ・ムギ・野菜・果樹・農産加工
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すばらしい!

たった100ページなのに、自給農業に関するノウハウがてんこ盛りである。著者は農業60年の経験をもつ超ベテランであるが、なにがすばらしいかというと、自分が食べられる程度の自給農をするうえで機械も農薬も化学肥料も必要なしと断言している点である。そしてなるべく手をかけない農法を勧める。福岡正信の自然農法に近いものがあるが、さすがに熟練の農家であるだけにきめこまかい技術論がある。かといって、実現不可能なものではない。たとえば、虫の駆除などは自分の手を使い丁寧にとり、鶏の餌にするという、なんともスローな方法を提示する。これは利益主導型のプロの農家ではできないことだが、自給であればもちろんアリなわけで、循環型農業が可能なのである。基本的に耕すこともせず、手をかけず、小力栽培で自給農をすれば楽しく生きることができるという哲学がある。生き方そのものである。

しかも、米といえば水田で作る水穂が一般的であり、それ以外にないと思えるが、なんと著者は陸稲を勧めている。驚きである。陸稲なら水田のように手間はかからず放置に近い状態でもある程度収穫できる。陸稲なら急勾配の土手でも栽培可能である。彼は、陸稲と小麦の輪作によって主食を得るという提案をする。玄米とコムギをまぜて食べるわけだ。普通ならありえないことかもしれないが、著者の言い分を聞くと、とても納得できる。

この素朴な食生活は6000年の平和を続けた縄文の再現を味わい、やがてくるべき石油欠乏の一大事にも対処しうる唯一の生き残り方策となる。さらには後代の人々が、地球温暖化による海水上昇に追われて山間地へ避難しなければならないとき、辛うじて命をつなぐ方法の見本を示すことにもなるのである。

水田から米を得るためにはそれなりのコストがかかる。素人には無理と思ったほうがよい。それなら陸稲でという方法も十分アリだと思う。自給農に慣れてくれば水田で水穂をつくることに挑戦すればいいだろう。ともかくまずは自分で作って食べるということを楽しむということが大切ではないだろうか。

とりあえず、この本一冊あれば自給農業は始められるだろう。
自給自足の田舎ぐらしが夢という人には断然お勧めのガイドブックである
.

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自由貿易など不要。すべては自給自足できる。

「がま仙人のブログ」書評欄から、備忘のために転載。
日本が今後生き残り、幸せな国になるためのヒントがここにある。私は沖縄に住んでいるが、かつて宮古島をそういう自給自足の島にするプロジェクトを考えたことがある。現在でもそれは100%可能だと思っているが、問題はそれをやる為政者がいないということだ。



(以下引用)




2007年08月19日19:48 カテゴリ晴耕雨読(111-120)
[晴耕雨読-0116] 200万都市が有機野菜で自給できるわけ / 吉田太郎200万都市が有機野菜で自給できるわけ―都市農業大国キューバ・リポート
posted with amazlet on 07.08.19
吉田 太郎
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 いつこの本の紹介をしようかと思っていたが、今日マイミクさんのところでこの著者のページを紹介したのでよい機会だからこの本について書く。

 とにかく必読書。農業や代替エネルギーに興味があってもなくても一度は読んでいただきたい。カリブの小さな国キューバがとてつもなく示唆に富んだ国であるかを思い知る。自給自足農業先進国であり環境先進国であり代替エネルギーと代替医療を実社会に生かしている国である。

 ソ連崩壊が起こったときキューバは壊滅的なダメージを受ける。当時は食料の57%を輸入に頼っていたのだ。いまの日本とたいして変わらなかった。農業はサトウキビに集中していた。そのため野菜を育てるなどという習慣もなかった。穀物類などはほとんどが輸入。そして、機械化農業が主体だったので当然石油も多く使っていた。そんな国がソ連崩壊によって食料と石油の補給路が断たれてしまう。また、当然ながら近隣国はキューバに対して経済封鎖を強めていたため事実上キューバは孤立してしまう。かつて日本が経験したABCD包囲網よりきつかったはずである。
 放置すれば当然餓死者がでてしまう。当時のカストロはこの超絶対絶命状態を乗り切るため「食料確保」を最優先として政治を動かした。で、やったことは首都ハバナ全体を有機菜園にしたのだ。国有の空き地を人々に解放しコミュニティをつくり自主的に運営させた。アスファルトしかないようなビルの谷間では、「オルガノポニコ」と呼ばれる人工の畑を有機菜園にした。
 こうして都市=農園でとれた野菜は都市内部で消費される地産地消が実現する。野菜を遠くまで運ぶ必要はない。輸送のために膨大な石油は必要としないのである。都市と農業を一体化することで超効率化された生産=消費体制ができあがった。そして数年後200万都市は食料の自給自足を実現させるのである。

 この本にはそのプロセスがこと細かくまとめられている。本当に驚くばかりの事実がそこにある。
 
 関心するのはカストロが目指したのは食料の自給自足だけではなかった。エネルギーと医療も想定の内であった。石油から太陽光・風力・バイオマス・水力などの自然エナルギーに国策として切り替えている。山間部などでは太陽光や風力で電気を作り実際に学校などを運営しているということである。世界がもたもたしているうちにキューバではとっくにそれらを使いこなしているのである。

 それと、代替医療。経済封鎖によって薬の供給が絶たれたため、キューバでは急速に代替医療が必要になった。驚くことに彼らは東洋医学を取り入れたのである。鍼灸などの専門化を育て、薬による麻酔に変わって鍼麻酔を取り入れた。さらにそれだけではなくハーブやアロマセラピーも同時に取り入れたのである。これによってキューバの代替医療の技術がおそろしく向上した。皮肉なものである日本ではあまり重要視されない東洋医学がカリブの海の国で主要な医療技術の一つになったのである。

 ところで北朝鮮はキューバと同じくソ連崩壊のダメージと経済封鎖を経験した。だが北朝鮮は多くの餓死者を出した。この違いは天と地ほどの差がある。

 とりあえずこの本には、世界が今後経験する未曾有のエネルギー危機と食料危機と環境危機、それを乗り越える一つの道が浮き彫りにされている。

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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