22日午前、政府は新国立競技場の見直し計画の関係閣僚会議を開き、安倍首相が応募2案から大成建設と梓設計、建築家の隈研吾氏(61)が手がけたA案の採用決定を発表した。

 その後に会見した遠藤利明五輪担当相は、19日実施の審査委員会の結果を「A案は610点、B案は602点」と説明。委員7人が9項目の評価基準で1人140点満点、計980点で採点したが、評価の細目をすべて公表する予定はない。

 どれだけ厳正な審査を行ったのかオープンにすべきだ。今月14日のデザイン公表以前から「すでにA案で内定済み」と囁かれてきたからだ。その理由も政治的思惑ばかり。大成は旧計画でスタンド工区を受注、下請けの作業員や鉄材業者を継続して確保してきた。受注を逃せば、無数の人材や資材が宙に浮くところだった。

「その補償は巨額に上り、業績に暗雲が垂れ込めるのは必至です。安倍政権の一存で一度受注した計画を白紙にされ、新計画では総工費の上限引き下げにも応じた。もとより採算割れは覚悟しており、そのうえ、受注まで逃せば、大成がどんな反撃に出たか分かりませんでしたよ」(大手ゼネコン関係者)

 菅官房長官の子息が大成に勤務していることも、さまざまな臆測を呼ぶ理由となったようだ。

 審査の評価項目の計140点のうち「コスト・工期」が半分の70点を占める。両案の「技術提案書」によると、完成時期は19年11月と一緒だが、建物本体の工期はA案は丸3年、竹中工務店・清水建設・大林組と日本設計、建築家の伊東豊雄氏(74)のB案は2年10カ月。B案がA案と同じ16年12月に着工できれば、森元首相の悲願であるラグビーW杯の決勝にギリギリ間に合う計算だ。

 さらに新国立の建設予定地はもともと湿地帯で非常に軟弱、旧国立競技場の解体後も建物を支えていた杭が残り、剣山状に5000~1万本ほど刺さっている。その分、地盤改良など基礎工事計画の重要度が増すが、その差も歴然だった。

 既存杭について、B案は早期撤去の具体的計画を掲げていたが、A案は1行も触れていない。加えてB案は建物の底盤を浅くし、土の掘削量を旧計画の70万立方メートルから28万立方メートルまで6割削減を約束。土を搬出するトラックの量が減り、コスト縮減につながる。

 この点もA案は「シンプルな施設計画によるコスト縮減」を強調するだけで、具体策は曖昧なまま。建築エコノミストの森山高至氏は自身のブログで、「どないして低減するんじゃい! という部分が欠けている」とツッコんでいた。

 これだけキメ細かな計画のB案が落選し、A案が選ばれた背景には「談合」の臭いが漂うのだ。