ブログに特化したニュースサイト「BLOGOS」が今月31日をもってサービスを終了する。創設は今から13年前の2009年。著名人から一般人まで、思い思いに日々の出来事などを綴ってアップするブログ全盛の時代。BLOGOSは「多様な意見を左右の隔たりなく同列に並べる」を掲げ、長文のテキストでさまざまな記事が公開されていた。
【映像】「スロー系」「ファスト系」ネットメディア分類表(画像あり)※20:42ごろ〜
そんなBLOGOSがなぜ閉鎖するのか。2代目編集長の田野幸伸氏は「SNSや動画プラットフォーム全盛となった今の時代とちょっとマッチしない部分が出てきた。現代人はとにかく忙しい。選択肢が無限に増えていく中で、長文のテキストを読んでくださるユーザーが相対的に減ってしまった。現実に新聞を電車で読んでいる人をほとんど見かけなくなったというのが実感である」と話す。
もう1つの課題が“コメント欄”だ。BLOGOSが取り上げたブログに対し、議論の場として期待していたコメント欄が誹謗中傷で埋め尽くされ、一部で心ないコメントが書き込まれることもあった。コメント欄によってアクセス数が増加する可能性もあったが、田野氏は2020年、アクセス数減少を承知でコメント欄を廃止。田野氏は「思想の自由も言論の自由もあるが、罵詈雑言を人の目に付くところにわざわざ晒しておくことはないという私の考え」と述べた。
また、テキスト中心のニュースサイト「SlowNews(スローニュース)」も定額課金サービス終了を発表。このままブログ文化、テキストによる言論は廃れてしまうのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、ネット言論のファスト化について考えた。
「BLOGOS」の創刊編集長で、現在はABEMA TIMES編集部の大谷広太氏は「創刊は今から12〜13年前なので、ネットの世界ではちょっと古い話になる」とした上で、「いわゆるオピニオン雑誌という月刊誌みたいなものが厳しくなってきて、廃刊したり休刊したりした時期だった」と振り返る。
「一方でブログでは、研究者や専門家がどんどん自分の意見やニュースに対する解説などをかなり発信するようになっていた時期だった。ただ、それらがすごくネット上に散らばっているので、しっかり集めないと探したい人は探せないし、発信したい人もなかなか見つけてもらえない。そういう状況でニーズがあった。あとはやはりニュースサイトというと、今も昔もYahoo!ニュースが一番だ。BLOGOS自体は今LINE社が運営しているが、当時はライブドア社だった。ライブドア社に対してYahoo!はライバルだったので『Yahoo!では読めないものを載せよう』と思ったときに、硬派なブログはニュースソースとしてアリだと。そういった環境はあったと思う」
元経済産業省キャリア官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏も「BLOGOS」によって、一躍注目を集めた一人だ。
「僕が(ブログを)始めた時期は『官僚の給料が高い』と言われた時期で、イラついて『給料を載せるか』と思って、給料明細をパッとブログに載せた。それがバズって、当時大谷さんが『うちのBLOGOSに転載してもいいですか』と聞いてくれて『いいよ』といったら、ますますバズった」
その上でBLOGOSについて、宇佐美氏は「お笑いの世界との比較が分かりやすいかと思う。『爆笑オンエアバトル』(※ 観覧審査員の投票でオンエアが決まるお笑い番組)という番組があったが、本当に漫才1本で勝負できて、プロもアマも競争して、みんなに見てもらえる場が『爆笑オンエアバトル』だ。僕らにとっては、BLOGOSがそれだった。ブログを書いてバズれば、編集長の目に留まってライターになって、読まれればランキングが1位、2位とついていく。まさに、筆一本でのし上がるためのプラットフォームがBLOGOSだった」と説明。
バズったことでテレビや新聞に呼ばれて、コメンテーターになる。ある種「BLOGOSは“登竜門”みたいな部分もあった」と宇佐美氏は話す。
閉鎖について、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「経営が下手なだけだと思う。BLOGOSの場合、ブログに載っているものをコピペすればいいだけ。アルバイトがやれば低コストで回るはずだ。なので、単純に経営が下手なんじゃないかと思った。低コスト運営ができるはずなのに、それができなかったのは経営の問題だ」と指摘。
これに宇佐美氏は「ひろゆきさんがおっしゃったのは半分正解だと思う。違う点は、低コスト構造だからけっこう広がってきて、大手メディアが危機感を持ったことだ」と意見。
「2018年頃はメディア的にも盛り上がっていて、PVも高い時代だった。当時は個人がブログを書いてBLOGOSに載ったら、その後スマートニュースやYahoo!ニュースに載るという3段階構造だった。しかし、その上側のメディアが『転載メディアはもう載せないよ』という方針をとった。だから、ライターが(BLOGOSを経由して)Yahoo!ニュースやスマートニュースに載る道がなくなった。一方で、上側のメディアは『メディアが独自にお金を払って書いた記事だったら載せますよ』と言って、高コスト構造に乗せられて潰されたように僕には見える。BLOGOSが生き残ろうと思えば生き残れたと思う。今でもそんなに赤字は出ない構造だ。拡大する見込みが全くなくなったので『やっていてもしょうがないのでは』というやめ方だと思う」
実際にBLOGOSは今月末でサービス終了が決まったが、なぜそういう形になったのか。大谷氏は「BLOGOSが立ち上がったときからスマートフォンはあったが、メディアの表現方法がかなり多様になってきた。音声や動画といったものをみんなが手軽に発信できるようになった。決してテキストが廃れたとは思わないが『それなら動画で解説したほうがいいよ』という人もいる。ユーザーも気軽に見られるし、オンラインサロンみたいなものも出てきたりした。宇佐美さんの(意見)にプラスして、表現の場が多様になってきた要因もあると思う」と見解を示した。
ひろゆき氏は「結局はただの言い訳で、他のサイトがみんな潰れているかと言ったら潰れてはいない。YouTuberや動画コンテンツが増えても、ニュースサイトを運営しているところはたくさんある。やはり経営が下手だったというのを一生懸命言い訳しているだけではないか」と追及。「僕が役員をやっている、会社でやっている『ガジェット通信』というサイトは一応まだ経営できているので、普通にニュースサイトで経営できているところはある。時代に抗うとかではなくて、別に長文テキストをガジェット通信に載せても、何の問題もなく経営できている。長文のせいではないと思う」と意見を述べた。
その上で、ひろゆき氏は25日にサービス終了を発表したコンテンツ配信サイト「ケイクス(cakes)」に言及。「cakesがなぜやめてしまったのかというと、みんながファンを集めて課金できるnoteに流れて『cakesに書く必要ないよね』となったからだ。なので、メディアに出て本を売って大儲けする人たちだけが儲けるのではなく、100人でもファンがいて月に10〜15万円入るんだったら全然いいよねというモデルが回り始めた。メディア側でうまく大衆に知られて本を売ることが減っただけだ」と答えた。
ネット上の議論については、どのように考えたらいいのか。大谷氏は「コメント欄はかなりのPVになる。たとえば、BLOGOSよりあとに立ち上がった『HuffPost(ハフポスト)』、当時は『Huffington Post(ハフィントンポスト)』にもコメント欄があった。そこでもコメント欄が重視されていたが、途中でこうした(誹謗中傷の)問題があってFacebook連携に切り替えた。ただFacebookに切り替えても、やはり実名でいろいろ言う人は言う。それで、結局コメント欄が閉じられてしまった。コメント欄に関しては、なかなか自治をきかせるというのは難しい。パトロールをするにしても、Yahoo!ニュースさんはかなりコストをかけていると思う。(コメント欄を)残すならかなりの覚悟がいるし、その覚悟がないなら閉じるしかないかなという気がしている」と述べる。
ひろゆき氏は「結局、一番PVがあって人が集まるYahoo!ニュースがコメントを開いているので『Yahoo! ニュースでいいじゃん』となってしまう。(Yahoo! ニュースは)どちらの意見も載せて揉めたら廃止するイデオロギーのなさが今の時代に合っているのではないか」とした上で「頭が悪い人は、実りのある議論のやり方を知らない」と一刀両断。「実りがあっても実りだと思わない受け手の問題じゃないかなと思う。たとえば僕が何かの意見を言って反論が来ると、僕が知らない情報や考え方が手に入るので、僕は面白いなと思う。でも、人によっては議論というのを自分の意見を他人に押しつけることだと思っている。そうすると思い通りにならないし、違う意見が来たときに議論にならない。たぶん、国語の成績が低い人たちだ」と持論を語った。(「ABEMA Prime」より)