私はCDが出始めた当時、その音が味気ないと思ったものだが、いつの間にかその音に慣れてしまい、その操作の便利さからCDでもいいと思うようになったわけだ。CDは人間の可聴域を超える音をカットして作られていると言うが、「聞こえない音」が実は音の色合いに風味を与えていたのではないかという仮説を私は持っている。まあ、私はレコードの雑音(針の擦過音)まで音楽の風味だと思う人間だし、音楽マニアでもないし、耳の解像度が悪いことは何度か書いているので、CDの音とレコードの音の違いは耳のいい人や音楽専門家に研究してもらいたいものである。
仮に、レコードの売り上げ増が、「聞こえない音の意義」が理解され始めたせいなら、私としては長年の持論が証明されたようで少し嬉しい。そして、音だけでなく、「見えないものの意義」が分かる人が世界的に増えて、経済合理主義だけの世界が変わってくるといいと思う。
たとえばレコードの上に針を落とす、その操作は面倒だと思うだろうが、レコードが回りだし、その回るレコードの上に針を注意深く持っていき、静かに落とすという作業は「音楽を聴く」心を集中させるという意義があったかもしれない。便利さや効率性によって切り捨てられてきた「見えない」大事なものがたくさんあったのではないか。
(以下引用)
ニューヨーク(CNN Business) 米国で今年上半期(1~6月期)に発売されたレコードの売り上げが1980年代以降で初めてCDを上回ったことがわかった。全米レコード協会(RIAA)が明らかにした。
RIAAによれば、今年上半期のレコードの売り上げは2億3210万ドル(約246億円)とCDの売り上げ1億2990万ドル(約137億円)を上回った。
レコードはカセットテープやCDなどが登場する前はありふれたものだった。カセットテープやCDが音楽を聴くのに最もよく使われるフォーマットとなったが、それでもレコードの復活が止まることはなかった。2005年以降、レコードの売り上げは増え続けている。RIAAによれば、今年上半期、レコードの売り上げは4%増加した。CDの売り上げは48%の減少だった。
レコードに対する関心が高まっても物理媒体による売り上げの減少を食い止めるには不十分のようだ。物理媒体による売り上げは23%減の3億7600万ドルだった。新型コロナウイルスの感染拡大で、コンサートが中止になったり、店舗が閉鎖されたりして音楽業界には打撃となっている。
物理媒体による売り上げが伸びなくても、ストリーミング市場は拡大し続けている。
有料のものや広告付きのものを含んだストリーミングの売り上げは12%増の48億ドルだった。
今年上半期の売り上げの85%以上がストリーミングによるものだったという。