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尊敬と信頼

「谷間の百合」さんのブログに載っていた竹原信一氏の文章が面白いので、それを思考素材にして少し考えてみる。

「尊敬」と「信頼」は言うまでもなく別であり、私は本質的に懐疑主義者だから、多くの人を尊敬はしている(たとえ浮浪者だろうが、その人が立派な行動をすれば尊敬する。総理大臣だろうが、愚劣かつ卑劣な言動をすれば軽蔑する。)が、基本的に誰かを信頼することはほとんど無い。
人間世界で生活する以上は、自分の手に及ばない部分は誰かに任せるしかないのは当然であるが、私、もしくは我々は、その誰かを「信じて」いるわけではない。いわば、その都度その都度「この人は、多分私の依頼したこのミッションを無事に果たしてくれるだろう」と賭けているのである。
その人の人間性がどんなに優れていても、やむを得ない事情で、そのミッションを果たせない可能性も常にある。極端な話、突然頭上から爆弾が降ってきて、ミッション貫徹が不可能になっても、あなたはその相手を非難するだろうか。急病、事故、何でもいいが、そういうことの起こる可能性は常にあるし、また、相手がいい加減な人間で、依頼されたミッションを度忘れすることもあるだろう。
簡単に言えば、我々は誰かを、「信頼」はしなくても、「委託」はするし、時には「依存」せざるも得ない、ということだ。竹原信一氏が否定的に言っている「信頼」とは、「依存」の美名(偽称)かと思われる。単なる依存を「信頼」と美化している偽善性を、道徳的潔癖症の竹原氏は不快に思っているのではないか。
と言うわけで、話が長くなったが、基本的に私は他人を尊敬はしても信頼はしない。そもそも誰かに「頼る」なんて、私自身の幼児的な「全能性願望」を踏みにじる不快な行為である。これは誰でもそうだろうから、我々は自分が頼っている相手を、心のどこかで憎むこともあるのではないか。(世間の人間の大半が公務員嫌いである原因も、案外そこにあるかもしれないww)正直に言えば、私は成人するまで親の存在を疎ましく思っていたが、それは自分が親に依存せざるを得ない状態が不快でたまらなかったからだと思う。親自身に悪い点があったわけではない。世の中の、子供が親に向ける反抗心や憎悪の中にはそういう部分があるだろう。


尊敬と信頼は胎児を入れた安心の袋だ。人間が幼いうちは仕方がない。大人は子宮から出ていなければいけない。大人にとって尊敬と信頼は牢獄なのだ。この牢獄は自らの排泄物で汚れている。


という表現は非常に面白い。尊敬と信頼を一緒にすることに同意しないのは先に書いた通りだが、人間社会が「尊敬と信頼の牢獄」であり、その牢獄は「自らの排泄物で汚れた子宮」だ、というのは実に上手い比喩だと思う。ただ、結論部分と見られる

精神の自由が世界を救う力になる。集団的にではなく、たったひとりで自由の愛と秩序に気付いていただきたい。

については、私は懐疑的である。たった一人の力が世界を変えるとはまったく思わないからである。たとえば、何かの思想の提唱者が多くの賛同者を得て世界を変えたとしても、それはたった一人の力ではなく、それに賛同した多くの人々の力によるものだろう。そして、その根底には、その思想への「尊敬」があるはずである。



(以下「谷間の百合」から引用)


以下に、竹原信一さんのブログからの抜粋。

日本では尊敬と信頼をたいへん重く扱う。個人が尊敬し尊敬されるように、組織も常に信頼されるようにと気を使う。 ほとんどの人間は、『尊敬や信頼とは何か』を半分しか理解していない。
「尊敬し信頼すればお互いがお互いのために頑張ることが出来る。裏切ったりしないし、秩序正しく美しい社会が作られる。」 こんな具合に非常に肯定的なキモチで暮らそうとする態度だ。
 尊敬や信頼のもう半分を見なければいけない。
 人を尊敬すればその人の良い点だけを見るようになる。良い方向からしか見ない。間違いに対しても寛容になる。尊敬や信頼されればその状態を継続しようとする。自分の間違いに気付かなくなるし、集団でのかばい合いや隠しあいが起こり、欠陥が拡大し、終いには止める方法がなくなる。間違いの指摘を「誹謗中傷」などとみなすようになる。 これが今の日本であり、日本人の現実だ。

 人間は間違える。自分も間違える。集団も間違える。だから尊敬や信頼をしてはいけない。尊敬と信頼は胎児を入れた安心の袋だ。人間が幼いうちは仕方がない。大人は子宮から出ていなければいけない。大人にとって尊敬と信頼は牢獄なのだ。この牢獄は自らの排泄物で汚れている。日本人は汚れた尊敬と信頼を放棄しなければいけない。尊敬を求めてはいけない。信頼に依存してはいけない。尊敬と信頼の牢獄から自分を解き放たなければいけない。精神の自由が世界を救う力になる。集団的にではなく、たったひとりで自由の愛と秩序に気付いていただきたい。





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