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天国の鍵22

その二十二 危ない会話

あんまり関係のない話が続いたもので、ハンスたちがどこへ行ってしまったのかわからなくなりそうです。
ハンスたちは、いま、中央グリセリードの西側にいます。のんびり旅をしているうちに、グリセリードの首都セリアドもあと数日で見えてきそうなところまで来ました。
見ていると、街道は軍馬や兵隊の行き来が多いようです。もちろん、各地から首都セリアドに産物を運ぶ商人たちの荷馬車も多く行き来してにぎやかです。
街道のそばには、そうした旅人をめあての茶店がたくさんならんでいます。
「腹がへったな。なにか食べていこう」
ピエールの言葉に、アリーナが真っ先に賛成します。
 茶店で手軽に食べられるのは肉饅頭です。餅などもあります。アスカルファンではあまり見られない食べ物ですが、けっこういけます。
「そろそろセリアドだな。セリアドを一目見たら、おれたちはパーリに向かうつもりなんだが、お前たちはどうしたいんだ?」
「ぼくは、南グリセリードに行ってみたい。そこのどこかに、ブッダルタという賢者がいるそうだから、その人をさがしたいんだ」
ピエールとヤクシーは顔を見合わせました。
「そいつに付き合ってやりたいんだが、おれたちはあんまりここで長い時間はつかえないんだ」
ピエールがこまったように言いました。きっと、パーリの独立とやらが頭にあるのでしょう。
「おれは女王に会えば、それで旅は終わりだ」
アリーナが言いました。あくまで、自分はこの国の女王の娘だと言い張るつもりのようです。
「女王に会うったって、かんたんじゃねえぞ。下手をすりゃあ、門番にとがめられて、打ち首だ」
ピエールがおどします。
「女王の娘をだれが打ち首にするもんか」
とアリーナ。
 ハンスは、さきほどから自分たちの後ろの席に、こちらに背を向けてすわっていた先客が、こちらの会話に聞き耳をたてているのに気づいていました。その客は、急にこちらに体を半分向けて、低い声でおどすように言いました。
「だれが女王の娘だと? 世間をさわがすような嘘をつくと、役所に引っ張られるぞ」
 ピエールとヤクシーは、話を聞かれたと知って青ざめました。ピエールがどなります。
「だれだ、あんたは。おれたちの話をこっそり聞きやがって!」

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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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