https://indeep.jp/victims-of-antipyretics/
<転載開始>
インフルエンザ脳症を生み出すもの
現在、日本では、季節性インフルエンザが結構な流行を見せているようで、モデルナ社のリアルタイム流行情報では、最近の 6年間のシーズンと比較して以下のようになっていまして、確かに(まだ流行が本格化していないということを含めて)やや異様な流行となっているようです。
季節性インフルエンザ患者数の推移
BDW
それと共に、
「インフルエンザ脳症の事例が増加している」
という記事も目にしましたが、それらは具体的な数字に準拠するものではないですので、リンクはしません。しかし、これだけインフルエンザが流行しているのなら、インフルエンザ脳症も増えていることは想像できます。
インフルエンザ脳症になるのは、基本的には子どもであり、国立感染症研究所のデータによると、2023/2024の年齢層は以下のようになっています。
2023/2024シーズンに報告されたインフルエンザ脳症は、年齢中央値がA型、B型でそれぞれ8歳(4~13歳)、7歳(4~10歳)であり、年齢群別の報告数は、いずれの型においても2~12歳で多かった。
要するに、インフルエンザ脳症は、子どもがなるものと言っていいかと思います。
さて、では「何がインフルエンザ脳症を誘発するか」。
これについては、2年以上前の以下の記事からの抜粋を交えて再度繰り返したいと思います。またもインフルエンザが大流行している時期ですので、意味はあると思います。
・子どもがみんな解熱剤でやられてしまう
In Deep 2022年8月27日
実際には何より最も重要なことは、
「子どもの熱は 41℃以下などで下げるのは良い選択ではない」
ということがありますが、それはともかく、日本小児科学会の「インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について」という文書をお読みいただきます。
注意深く読みますと、ここには、
「脳炎による死亡事例の 80%は解熱剤を服用していた子どもたち」
だということが示されていることにお気づきになるはずです。
インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について
平成12年11月12日 日本小児科学会理事会
インフルエンザに関連しておこる脳炎・脳症に対するジクロフェナクナトリウム及びメフェナム酸の使用について、本学会の見解は以下のとおりである。
1999、2000年のインフルエンザ脳炎・脳症研究班(森島恒雄班長)の報告では、解熱剤を使用していない症例でもインフルエンザ脳炎・脳症は発症しており、その死亡者が5分の1を占めているところから非ステロイド系消炎剤が脳炎・脳症を引き起こしていることは証明されていない。
しかし、1999年のデータに比して2000年のデータではインフルエンザ脳炎・脳症が発症した場合の致命率についてはジクロフェナクナトリウムは有意差を持って高くなっている。一方、メフェナム酸に関しては2000年の調査でははっきりした傾向は認められなかった。
また、他の非ステロイド系消炎剤の使用については、調査症例数が少なく、現段階でその関連性が明確になっていないので、さらに調査が必要である。
一般的に頻用されているアセトアミノフェンによる本症の致命率の上昇はなく、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンがよいと考える。
以上より一部の非ステロイド系消炎剤はインフルエンザ脳炎・脳症の発症因子ではないが、その合併に何らかの関与をしている可能性があり、インフルエンザ治療に際しては非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきである。
今後も本症の原因を含めてさらに研究班の継続した調査を要望する。
この中に、
> 解熱剤を使用していない症例でもインフルエンザ脳炎・脳症は発症しており、その死亡者が5分の1を占めている
という部分があります。
翻訳すれば、
「解熱剤を使用していないインフルエンザ脳炎の症例は全体の 5分の1、つまり 20%」
だということになり、「他のインフルエンザ脳炎の症例はすべて、解熱剤を使用した子どもたちの事例」だという解釈となります。
これはどういうことかというと、
「インフルエンザに対して医療介入しなければ、この 80%のインフルエンザ脳炎の症例はなかった」
ともいえます。
インフルエンザ脳症の内訳は以下となります。
解熱剤ごとによる脳炎での死亡率
(注釈)
・アセトアミノフェン → 商品名カロナール
・ジクロフェナクナトリウム → 商品名ボルタレン
・メフェナム酸 → 商品名ポンタール
また、先ほどのブログ記事では、インフルエンザでの解熱剤使用についてのレビュー論文を掲載しており、結論としては、以下のようになっていました。
「解熱剤の投与は、患者の死亡率の上昇に寄与する」
解熱剤を投与すればするほど、患者の死亡率は上がるという結論です。
この論文では、インフルエンザ感染動物における解熱剤の使用によって死亡率が増加したことが示され、それは、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクで、特にリスクの増加が観察されています。
アセトアミノフェンは、カロナールとしては日本でも(大した熱でもないのに関わらず)処方されますが、それは、特に子どもの場合、
「死亡リスクを上げているだけ」
だと親は認識するべきです。
基本的に「熱を下げる」ということには、ほとんど意味がないことだと知るべきです。特に、40℃以下のような熱で、小さな子どもに解熱剤を投与することは、子どもによってはリスクがありすぎます。
インフルエンザ脳症だけではなく、解熱剤は、「肺炎連鎖球菌の死亡リスク」も高めることが知られています。
論文には以下のようにあります。
論文より
解熱剤による治療は、実験動物の肺炎連鎖球菌の死亡リスクを高める可能性があることも実証されている。マウスでは、肺炎連鎖球菌の接種前または接種直後にアスピリンを投与すると、死亡率が 2倍から 3倍に増加した。
さらに、生理的範囲内の高温(高い発熱)は、肺炎連鎖球菌に対する抗生物質の殺菌能力を高める。
ちなみに、この論文には、
> インフルエンザウイルスの熱死点は 40 ~41°C
と書かれていて、つまり、そこまで熱が上がれば、自然とインフルエンザウイルスは死んでいくのです。それを 40℃にも満たない発熱の時点で解熱剤を与えてしまっては、
「いつまで経ってもインフルエンザウイルスが死なない」
ということで、むしろ発熱した子どもをいじめているのですよ。
人間社会には古代から「発熱恐怖症」というのがあり、これは今でも払拭されていない……どころか、昔よりもひどくなっています。
病気を治す最初の手段が発熱だという根本的な考えを私たちの社会が受け入れるまでは、現在も続く不毛なインフルエンザ脳症による子どもの死亡や重大な後遺症が生み出され続けていくだけだと認識します。
国立感染症研究所によれば、毎年、 200人程度の子どものインフルエンザ脳症が報告されています。
結構な大量死です。このうちの 80%などの割合が、解熱剤投与などによる医療介入によるものだったとすれば、これは「医療に関わらない」という態度で完全に防ぐことができたものです。
お医者様のほうも、解熱剤でインフルエンザ脳症が起きることは知っている方が多いでしょうし、いい加減、微熱で解熱剤を処方するのはやめたらどうでしょうか。
そりゃ確かに、処方した解熱剤で子どもたちがインフルエンザ脳症になろうが死亡しようが医師が責任を問われることはないのですけれど、死のリスクを回避させてあげるというのも医師の役割ではないかと。