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「証明しろなんてこれまで言ったことないじゃない。そんなの、優しくないわ」 「君は面白い子だね」 「あなたは違うわ。あなたは立派な人で、私の心を粉々にし、あなたから離れてしまいたくさせる」 「ぜひ、そうすべきだな。当然だ」 「ええ」彼女は言った。「そうすべきね。あなたの言う通り」 彼は何も言わなかった。彼女は彼を見て、また相手を求めて腕を差し出した。バーテンはバーの中のずっと離れた隅にいた。彼の顔は白く、ジャケットも白かった。彼はこの二人を知っていて、若いきれいなカップルだと思っていた。そして、そうした若いきれいなカップルが別れ、新たな、さほどきれいでもないカップルが誕生するのを何度も見てきた。彼はこのカップルのことは考えておらず、ある競走馬のことを考えていた。もう半時間も、彼は前の通りを横切って、その馬がレースに勝ったかどうか見に行きたいと思っていた。 「私に優しくして、あそこに行かせてくれることはできないの?」 「君は、俺がどうするつもりだと思う?」 二人連れの客がドアから入ってきて、バーの方に行った。 「いらっしゃい」バーテンはオーダーを取った。 「すべてが分かっても、あなたは私を許さないの?」少女は尋ねた。 「いやだね」 「あなたと私のこれまでのすべての事も、お互いの理解に何も役立たないの?」 「『売淫は恐るべき容貌をした醜悪な怪物である』」若い男は苦い口調で言った。「『それは必要に応じて何者かに形を変えるが、目には見えない。そしてその何者かを、何者かを、我々は抱擁する』」彼はその後の言葉を思い出せない。「引用できないや」 「売淫なんて言わないで」彼女は言った。「不潔な言葉よ」 「売春」彼は言った。「ジェームズ」客の一人がバーテンに言った。 「とても元気そうにみえるね」 「あなたもとてもお元気そうです」バーテンは言った。 「古い顔なじみのジェームズ」もう一人の客が言った。「あなた太ったわね」 「それはヤバイですね」バーテンは言った。「なんで脂肪がついたやら」 「ブランデーのこと、無視しないでくれよ」(訳者注:ここは意味不明)最初の客が言った。 「はい」バーテンは言った。「大丈夫ですよ」 バーの二人はテーブルの二人を見やって、再びバーテンに視線を戻した。バーテンに向かう姿勢の方が心地よかった。 「そんな風な言葉を使わないほうが私は好きだわ」少女が言った。「そんな言葉を使う必要など無いじゃない」 「君は、それをどんな言葉で言ってほしいんだ?」 「言う必要など無いわ。どんな名前も付ける必要など無いわ」 「さっきのあれが、そいつの名前さ」 「いいえ」彼女は言った。「私たちはいろんな関わりがある。あなたも知っているでしょ。自分でもたくさんあるでしょ」 「そのことは繰り返して言う必要は無いよ」 「あなたに説明するために言ってるの」 「分かった」彼は言った。「分かった」 「あなたの考えているのは全部間違い。私には分かる。全部間違い。でも、私は戻ってくるから。戻ってくると言ったでしょ。すぐに戻るから」 「いや、戻らないね」 「戻るわ」 「いや、戻らない。俺のところにはな」 「後で分かるわ」 「そうさ」彼は言った。「それが最悪なところだ。君は思う通りに行動するだろう」 「もちろんよ」 「それなら、行きな」 「本当?」彼女はその言葉を信じられなかったが、彼女の声は幸福そうだった。
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