この作家は、推理小説の書き手としてではなく、「小説」の書き手として巨大な才能を持っていると思う。つまり、ジャンルに限定される才能ではない。
とある「SFアンソロジー」(「百合SFアンソロジー」という副題があるwww)の中の彼の作品「色のない緑」を読んで、その頭脳の緻密さと表現力に驚嘆したので、ここにメモしておく。
なお、「色のない緑」とは
colorless green ideas sleep furiously
(色のない緑の思考が猛烈に眠る)
という、文法としてはまったく正しいが、意味をなさない文に由来するらしく、言語学や、特に人工知能を使った翻訳の大きな問題であるようだ。
(以下引用)
「女の子の青春描く」中国発・本格ミステリー
- 文化往来
- 2019/10/21 2:00
昨年、前漢時代の中国を舞台にした本格ミステリー「元年春之祭」(稲村文吾訳、早川書房)で話題をさらった金沢在住の中国人作家・陸秋槎(りく・しゅうさ)。このほど邦訳長編第2弾となる「雪が白いとき、かつそのときに限り」(同)を刊行した。本作は現代中国の学生寮で起きた殺人事件がテーマだ。
「探偵役とワトソン役を女の子にすることで、独自の作風がつくれる」と語る陸秋槎
設定はがらりと異なる2作だが「10代の女の子の青春物語である点は同じ」と陸。1988年北京生まれの作家は中学時代から、日本のアニメが描き出す終わらない青春物語に親しんだ。さらに2004年には「マリア様がみてる」をはじめ、女性同士の恋愛を題材とする「百合作品」が中国で人気を博したという。「私の世代のアニメファンは、このブームと一緒に成長したんです」
女の子の青春。好きなものを自らも書きたい、という自然な動機とともに「作家としての計算もある」と語る。「ミステリーの歴史を振り返ると、探偵役とワトソン役は男性の2人組が圧倒的に多い。両者を女の子にすることで、独自の作風がつくれるのではと考えた」。ミステリーを読み始めたのは「これまで海外文学ばかり読んでいたから」と、上海の名門・復旦大で漢詩と書誌学を学んだ大学生のころだ。綾辻行人、有栖川有栖、法月綸太郎……、日本の「新本格ミステリー」の作家たちが生み出す世界に魅了された。「自作の構想は、先行作品を読んでいる時に生まれる。謎について考え、自分の読み解きと異なれば、よし、書いてみようと」
中国では本格ミステリーの書き手が少なく、ほとんどが同世代だという。「それも吹雪の山荘や孤島など定番の設定がほとんど。私は同じパターンは書きたくない。その分、筆は遅いけれど……」。多岐にわたる知識と関心に裏付けられた気鋭の作者が次に何を生み出すか、目が離せない。
(桂星子)

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