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WHAT IS BLACK? BLACK IS BLACK

研究社のWEBマガジンから転載。
アメリカのBLACK LIVES MATTERを訳すなら、「黒人の生命問題」かなあ、と思ったのだが、黒人をBLACKと呼ぶのは差別語ではないのか、と疑問に思ったので調べたわけである。
下ではBLACKという言葉自体が禁止用語化されている話で、黒人の呼び方については書かれていない。どう呼ばれているのだろうか。
BLACK LIVES MATTERという言葉への私の解釈が間違っている可能性もあるが、意味不明の言葉が意味不明のままで世間に流通する、というのは気になる。






第3回 black market(闇市場)



英語圏では昔から “English is a living breathing thing and words evolve through time.” (英語は生きていて、言葉は時と共に進化する)と言われていますが、ここ最近で特に急激に扱いに変化が起きたのは、‘black’というひと言が入っている言葉でしょう。



黒人をとりまく状況

キング牧師(Martin Luther King, Jr.)やマルコム X(Malcolm X)が公民権運動を起こし、黒人民族主義を主張する Black Panther Party(黒豹党)が結成された1960年代から70年代にかけてのアメリカでは、ほぼすべての黒人が “Black is beautiful!” と叫び、黒人であることを誇りに思っていました。アメリカ近代史では、この時代を the Era of Black Power(ブラックパワー時代)と呼んでいます。



80年代から90年代にかけて、ラップやヒップ・ホップなどの文化が台頭し、ミュージシャンのマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)、プロバスケットボール選手のマジック・ジョンソン(Magic Johnson)、マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)などが、人種の壁を超えて人気を博し、カルチャー面での黒人パワーが力強く開花しました。



しかし、その裏で、スポーツや音楽の才能に恵まれなかった普通の黒人は白人との経済格差を縮めることができず、黒人の犯罪率が増加しました。 1959年から2010年までの人種別貧困率を示したグラフをごらんになるとわかると思いますが、1959年に約55%だった黒人貧困率は、60年代にコンスタントに下がったものの、その後93年まで30%台が続いています(https://www.ssc.wisc.edu/irpweb/faqs/faq3.htm より。Figure 1 を参照)。



また、黒人の失業率も、1970年は8.5%(アメリカ全体の失業率は4.9%)でしたが、1983年には19.5%(アメリカ全体の失業率は9.6%)、1992年は14.2%(アメリカ全体の失業率は7.5%)で、常に他人種より失業率が高い、という状況が続いています。



黒人の犯罪率が高いことに関して、リベラル派は「これはクリントン政権時代に制定された Three-Strikes Law(三振即アウト法:前科2犯の人が3度目に有罪になった場合、軽罪でも“終身刑”になる、という法律)のせいで、貧しさゆえに小さな罪を犯した黒人青年、黒人男性が軒並み投獄されたからだ」としています。



一方、トーマス・ソウェル(Thomas Sowell: ハーヴァード大学出身の黒人経済学者)は、「クリントン政権の自由貿易政策のせいで製造業雇用者数が激減し、特に黒人が被害にあって黒人の失業率が激増したからだ」と言っています。また、クラレンス・トーマス(Clarence Thomas: 保守派の黒人最高裁判事)などは、「民主党のシングルマザー保護政策(結婚せずに子どもを産んだほうが生活保護を多くもらえる)が裏目に出て、父親不在の黒人家庭が増えたせいだ」と主張しています。



理由がどうであれ、90年代以降も、黒人の犯罪率、貧困率が他の人種と比べて高いことは事実です。そして、オバマ政権誕生後は、こうしたアンフェアな現状に対する黒人の怒りが爆発し、黒人に貧困者や犯罪者が多いのは、奴隷制度以降ずっと続いている institutional racism(組織化された人種差別主義)のせいだ、と信じる黒人やリベラル派が急増しました。彼らは、social justice(社会的正義)を求める運動の一環として、「negative connotation(否定的含意)を帯びた black という単語の入った言葉は黒人差別を助長するので禁句にすべし」と主張し、アメリカでは実際に、こうした言葉がマスコミや大学のキャンパスで使用禁止用語となっています。



黒人差別を助長する言葉とは?

以下、politically incorrect(政治的に正しくない)とみなされた単語と、代替表現をいくつかご紹介しましょう。



 



blacklist  [名] ブラックリスト / [動] ブラックリストに載せる



日本でもカタカナ語として定着している「ブラックリスト」は、イギリスの劇作家が17世紀半ばに初めて使った言葉で、奴隷制度とも黒人差別とも本来は無縁なのです。
 しかし、英語圏、特にアメリカの social justice warriors(社会的正義のために戦う人々; 以降 SJWs)は、名詞は deny list、動詞は ban(禁じる)という代替表現を使うべきだと主張しています。



blackmail  [名] 脅迫、恐喝 / [動] 脅迫する、ゆする



この言葉の語源に関してはさまざまな説がありますが、多くの説が16世紀にイングランド北部とスコットランドの略奪者たちが「農民を守ってやる」という名目で取り立てていたみかじめ料のこと、としています。
 つまり、これも特に黒人を差別した用語ではないのですが、SJWs は、名詞は extortion(強要、ゆすり)、動詞は extort(ゆすり取る)を使い、blackmail という単語は死語にすべきだ、と言っています。



black market  闇市場



「暗闇の中での不正取引」という意味であり、black は単に「暗黒(=何も見えない闇)」の象徴なのですが、SJWs は、underground market(地下市場)や illegal market(不法市場)という言葉で置き換えるべきだ、と言っています。
 同様に、black money(黒いカネ、不正所得)も、illegal proceeds(不正収入)、laundered money(資金洗浄をしたカネ)という代替用語が好まれています。



blackout  停電、失神



「停電」という意味で使われる場合は、文字通り明かりが消えて暗闇になるからで、「失神」という意味の場合は、一時的に意識を失った人が真っ暗な世界に落ち込んでしまうからでしょう。
 つまり、この black も決して黒人差別用語ではないのですが、SJWs は「black is bad(ブラックは悪い)というステレオタイプを助長するから禁句にすべし!」と主張し、power outage(停電)、loss of consciousness(意識喪失)という表現をすすめています。



black-hearted  腹黒い



悪魔のいる地獄は暗くて天国は明るい、悪人は闇を好む、というイメージに根ざした表現で、黒人差別とは無縁ですが、wicked(邪悪な)や malicious(悪意のある)などを代わりに使わないと、SJWs から racist(レイシスト:差別主義者)呼ばわりされる恐れがあります。



blackball  [名] 追放 / [動] 追放する



18世紀のイングランド、およびアメリカの社交クラブなどで、メンバーを追放するときに、追放賛成者は黒くぬった木製の玉を、反対者は白い象牙の玉を投票箱に入れたことに由来します。さらに、この風習は、古代ギリシアの貴族で法律制定に関わったクレイステネス(Cleisthenes)が、アテネ市民に白と黒の小石を一つずつ配給し、「法案に賛成の場合は白の小石、反対の場合は黒の小石を投票箱に入れなさい」と指示し、民主主義の基礎を築いたことが始まりです。
 ですから、これも黒人差別とは縁もゆかりもないのですが、名詞は ostracization(追放)、動詞は ostracize(追放する)、という言い方がすすめられています。



black sheep  (家族や組織の中の)厄介者、面汚し



白い羊の群れの中で目立つ黒い羊(白い羊の毛よりも価値が低い)に由来する言葉で、黒人の肌の色を軽蔑した表現ではないのですが、outcast(のけ者)、deviant(変人、逸脱者)などの代替語を使わないと、racist だと思われるでしょう。
 英語圏では、Baa Baa Black Sheep(めぇめぇ、黒羊)という童謡を禁じた幼稚園もあります。



ちなみに、SJWs の中には、blacksmith(蹄鉄工、鍛冶工:錫が白いのに対し、鉄は黒い鉱物だからで、smith は金属細工人のこと)や、black hole(ブラックホール)という言葉も排斥しようとしている人がいるのですが、今のところ代替用語が提示されていないので、この2つは当分使っても大丈夫でしょう。








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