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言魂のさきはふ国での言魂軽視の言動

市民図書館から借りてきた井上靖の「天平の甍」の最初の部分を読んでいると、遣唐使のひとりに山上憶良が送った歌が載っていて、そこに「言魂のさきはふ国」という言葉があり、そう言えば、私はこの言葉の意味を正確には知らないなあ、と思ってネットで調べると、どれも同じような解説である。そもそも、「さきはふ」という言葉が本当に「幸福をもたらす」意味なのか、たとえば「咲き映える」という意味だったりしないか、と思うのだが、まあ、愚論や妄想を書いても仕方が無いので、一応、辞書群の書いてあるとおりだということにしておく。
なお、「天平の甍」では「言魂」という表記だが、ネットでの解説はすべて「言霊」になっている。「魂」と「霊」は同じとしていいのだろうか。そもそも「霊」とは何なのか。「魂」なら、人間なら一応誰もが持っているだろうが、それは「霊」と同じなのか。

(以下引用)


学研全訳古語辞典

学研教育出版学研教育出版

ことだま-の-さきはふ-くに 【言霊の幸ふ国】


分類連語




「言霊」の霊力が幸福を招く国。

(引用2)「天平の甍」より

神代より言ひ伝(つ)てけらく そらみつ大和の国は 皇神(すめがみ)の いつくしき国 言魂(ことだま)の 幸(さき)はふ国と 語りつぎ 言ひつがひけり

(自己流に語句解釈しておく)
「言ひ伝てけらく」は「言い伝えた事」の意味。この「く」は、「く語法」と言って、活用語を名詞化する用法である。「老いらく」「曰く(言はく)」など。
 「そらみつ」は大和の枕詞だろうが、「空に満つる」意味だろう。つまり、大和の上の空の下全体が大和だから、大和は「空一杯に広がっている」と見ることができる、というレトリックなのではないか。現代のように、他の大国と比べて日本の国土は小さい、という時代ではない。ここでの「大和」は大和地方ではなく「日本全体」だろう。
「いつくしき」は「慈しんだ」意味だと思う。とするとここでの言魂は、公式の行事で天皇やその臣下が詠む歌の内容と精神だろう。まあ、庶民でも「言魂」を軽視した下手な発言は災いを招くのは当然であるが、政治家や官僚ならなおさらだ。ニュースの半分くらいはそうした上級国民(芸能人含む)の舌禍事件だろう。
「言ひつがひけり」は「言い継いできた」意味だろう。「言ひ継ぎけり」としなかったのは音調の問題だと思う。あるいは「言い番(つが)ひけり」で、「言い合っていた」意味か。


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