澁澤龍彦の「フローラ逍遥」という本の中に、実にうまい一節があったので、備忘のために転記しておく。「大正文化を思わせる花」の冒頭である。
コスモスには、一時代前の、大正文化あるいは大正ロマンティシズムを思わせるところがある。なんとなくハイカラで、郊外の文化住宅の庭に植えられていたり、児童雑誌「赤い鳥」の挿絵に描かれていたり、といった感じなのだ。なんとなく弱々しいところまでが大正文化と似ているから妙である。
事実、コスモスは明治の末とくに日露戦争後に、日本全国にさかんに植えられるようになったというから、その花が日本であれほどポピュラーになったのは、まさに大正時代と時期的にぴったり一致していたわけだ。
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