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若者の自己防衛としての政治敬遠

「世に倦む日々」記事から、「若者と政治」の部分に焦点を絞って抜粋転載。
この分析は正確無比だと思う。
政治家に欲しいのはこうした「大衆心理」への洞察力だ。それが自分に無いなら、それのできる「軍師」を身近に置くことである。安倍自民党の世耕などは、その能力があるが、残念ながら野党政治家にはまったくそうした能力が無い。それが野党が敗北し続ける根本の理由である。


(以下引用)


この国では若者ほど甚だしく右傾化している。そして、若者ほど体制に順応的な生き方を身につけている。彼らは、安倍晋三や右翼の方向性を支持しているというよりも、多数の意見や全体の意向に逆らわないのだ。異議を唱えないのである。今の政治における多数が何かはマスコミが教えている。異端が何かもテレビとネットを見れば一目瞭然だ。彼らは、生き抜くために、自身が異端の位置に属することを極端に恐れるのであり、自己防衛に過敏になるのであって、場の空気に合わせて、全体が自分に要請する配役や立場を素早く感知して、それを積極的に引き受けるのだ。その習性と態度をしっかり体得していないと、例えば、就職時の会社面接で脱落してしまう。そこで人生が決まる。われわれの頃と違って、面接は個人ではなくグループでやる。チェックされるのは、どれだけ集団での即興の振る舞いで、面接側の期待に応える役割演技ができるかだ。今はその能力を「コミュ力」と呼ぶらしい。若いときに身につける習性と態度とは、その人間の終生の生き方を意味する。

例えば、こんな場面を想像しよう。ある若者が投票に行ったとする。仲間同士の会話の中で選挙が話題になったとき、「選挙、行った?」という質問に、正直に「言ったよ」と答えたら、残りの者たちは、「えー、行ったの!?」と驚き、「どこに投票したの?」と尋ねてくるだろう。若者は答えなくてはいけないが、「自民に投票した」と答えたら、「どうして?」と続けて訊かれ、動機や理由を説明しなくてはいけない。説明すれば、その内容が他の者たちに話題として伝わってネタにされる。「あいつ、自民に投票したんだって。安倍でいいからだって」という具合に。具体的な場面を少しでも想像すれば分かるが、若者たちの一般的態度は棄権なのだ。それがマジョリティなのだ。投票には行かないのが普通であり、行った者が特殊で、興味を持たれ、面白がられて、その行動の中味の説明を求められる。その説明は、聞いて噂にする方は軽いネタだが、説明した方は個人情報として残り、あとあと厄介でリスクのある不安になる。尾ひれが付いて回る可能性がある。さて、このとき、正直に「共産に投票した」などと言えるだろうか。言えない。口が裂けても言えない。理由を訊かれ、説明を始めたら大変なことになる。だから、仮に投票をしていても、仲間で話題になったときは、「行ってないよ」と答えるのが無難なのであり、「投票したい党がないから」と言っておけば安全に済むのだ。無用なトラブルを引き受ける必要はない。

こうした環境や関係のあり方は、若者たちに、選挙に行かないように意識を方向づける。政治に関心や知識を持たないように仕向けて行く。関心を持たない方がいいという判断と思考になる。関心を持たないことが安全だからであり、将来的に身を守るサバイバルに繋がるからだ。関心を持てば、選挙に行くという行動に必然的に導かれる。コミットの責任を持つ。投票に行けば、リスクを冒してその説明(選択の意義・正当性)を友人たちの前でするか、あるいは、「行ってない」と方便のウソを言わないといけない。友人を騙すことは多少とも苦痛が伴うものだ。だから、テレビで大人たちが言うところの、「選挙に行きなさい」という説教は、若者たちにとっては欺瞞的なタテマエ論なのであり、若者には負担の重い、大人の世界で通用する無責任な原則論なのだ。現実の社会は、就職面接がそうであるように、どこまでも漂白された人間像を求めるのであり、社会的な理念を持たない、言挙げしない、異議申立を決してしない、ただ機械のように働く無色透明な若者像を要求する。TOEICのスコアが700で、ITスキルが万全で、早慶一橋卒の学歴が履歴書にある、「コミュ力」の十分な学生を求める。就職面接の真実こそが大人のホンネ論だ。今の若者たちは、中学で、高校で、大学で、理念の重要性を教育されていない。理想を持つことを教育されていない。むしろ逆で、理念や理想を持たないことを教育されている。場に適応して生きることを教育されている。







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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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