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「葬式」がただの「死体処理」へ移行する社会

「シジフォス」に引用されていた新聞記事を孫引き引用する。
新聞記事の引用はブログ規約違反になるのかどうか知らないが、新聞社は「新聞を学校教育に活用しよう」などと言ったりしているのだからそこまでうるさくは言うまい。ブログ管理会社が気を回しすぎているだけではないか。まあ、著作権の拡大は表現の自由を縛るものだから、マスコミが著作権保護側に回れば、それは自分自身の手足を縛る行為でしかない。
それはともかく、下記記事にあるように、全国的に墓の放棄(無縁化)がどんどん進んでいるようだ。それも当然の話であり、国民全体の貧困化がどんどん進んでいるのだから、死んだ人間のことまで面倒は見られるはずがない。葬式についても、形式性を完全に排除した、まさに「死体処理」だけに特化したような葬式(いや、それはもはや葬式とは言えないだろうが)が広まりつつあるようだ。
で、私は「死」に対して現実的な態度を取るというこの傾向にむしろ賛成なのである。人間は死んだらゴミだ、と言って物議をかもした人がかつていたが、私も同じ意見だ。もちろん、死体を有機肥料として有効利用すればゴミではなく貴重な資源だが、通常の死体は荷厄介なゴミでしかない。どんなに愛した人間だろうが、その死体はただの物体にすぎないのである。しかもゴミ処理に出すこともできない、金がかかる物体だ。火葬などにかかる費用だけでも数十万円はかかるだろう。生活保護を受けている人間や年金だけで生きている人間にはあまりにも過大な負担である。ましてや、通常の葬式費用や墓地購入の費用など、出せるわけがない。
国民生活の二極化、階層化は、社会の底辺にこのような問題をも生み出しつつある、ということだ。



(以下引用)



無縁化、さまよう墓 不法投棄続々、「墓の墓」も(朝日新聞 2014年7月30日)
 先祖代々受け継がれてきた墓が受難の時を迎えている。墓守が絶えた無縁墓から撤去された墓石は、慰霊の場を離れ、さまよう。人里離れた山中に“墓の墓”が現れ、不法投棄も後を絶たない。
 高松市のJR高松駅から車で30分の山中に“墓の墓”がある。約1ヘクタールの空き地にコンクリートで固めた最大幅100メートル、高さ15メートルの扇状の巨大なひな壇が設けられ、壇上に墓石1万基が並ぶ。
 「古石材預り所」と称する管理者(52)によると、中四国や関西の寺から撤去された墓石を石材店などの業者が持ち込んでくる。家庭の事情で墓を引き払い不要になった墓石のほか、無縁墓もある。1基1万円で受け入れ、最近は年300基ほど集まる。クレーン機で石を整然と並べ、定期的に雑草をとる。「ここ数年でどんどん増えている。もうけはないが、やめたくてもやめられない」。まだ9万基収容できるという。
 一方、不法投棄された“墓の山”もある。兵庫県南あわじ市の山中には推定1500トンの墓石が山積みにされ、山の頂は高さ4メートルに達する。6月半ば、県淡路県民局の職員3人が墓石に合掌しながら現場を見て回った。
 「比較的新しい墓もある。墓碑銘から、代々にわたり大切にされてきたんだろうなと思わせる墓もあります」。県民交流室の小塩浩司環境参事は言う。
 2008年に廃棄物処理法違反容疑で逮捕・起訴された石材処理業者は、墓石の処分を安く請け負い、破砕などの適正処理をしないまま淡路島に捨てていた。県は撤去するよう指導するが、ほとんど手つかずのままだ。
 墓石の不法投棄は昨年も広島県、京都府内で見つかり、ここ5年の間に茨城、千葉、兵庫など各県で業者が逮捕されている。
 不要になった墓石は通常、寺や霊園、石材業者が預かるか、処理業者が破砕処分する。だが別の方法をとる業者は少なくない。関東の石材店の社長は「破砕には手間と金がかかる。たたりを恐れて処分しない業者もいる」と話す。
 無縁墓はどれほどあるのか。全国的な調査はないが、熊本県人吉市は昨年、全国でもまれな市内の全墓地995カ所の現況調査をした。
 人口はこの10年で1割減り3万4500人。65歳以上が32%を占める。「墓が雑草に埋もれている」「墓石が転げ落ちている」。近年増え始めた市民の相談を受け、役場はまる1年かけて、明らかに長く人の手が入っていない墓を拾い出した。
 「結果は想像以上でした」。市環境課の隅田節子課長補佐は言う。市内の墓1万5123基の4割超、6474基が無縁墓だった。8割が無縁の墓地もあった。「市として何ができるか。知恵を絞りたい」。妙案はすぐには浮かばない。

少子化、墓守が不在 過疎進み、各地で撤去(朝日新聞 2014年7月30日)
 都市部への人口流入と地方の過疎化、少子高齢化、未婚化。社会の急激な変容が墓の荒廃を加速させる。自治体は無縁墓の撤去を進める一方、血縁に頼らない新たな墓のかたちを模索する。
 大阪市平野区の市設瓜破(うりわり)霊園。雑草に覆われた墓前に「大阪市管理地」の立て札が立つ。市が無縁墓と判断し、市の裁量でいつでも撤去できる墓であることを示す。墓石に刻む被葬者の没年は「平成十三(2001)年 行年九十」とあった。
 市は管理料を滞納している墓の継承者に連絡を試み、死亡などで絶えていれば親類縁者に管理を打診。それでも継ぐ人が現れなければ官報と墓前に「無縁墳墓等改葬公告」を出し、1年間待って“撤去可”の断を下す。
 大阪の市営墓地は管理料の滞納が膨らみ、13年度の滞納額は5年前より4割増の約900万円。1993年から始めた無縁墓の撤去は4095区画に上り、遺骨は敷地内の「無縁塔」に移した。「できるだけ継承者を探す。しかしいつまでも放置するわけにいかない」(市事業管理課)
 東京都も2000年から都立霊園の無縁墓の調査・整理を進めている。12年度は1億3千万円かけて約350基を撤去。この5年で約千基整理した。
 朝日新聞社が東京都と道府県庁所在市の計47自治体にアンケートしたところ、44自治体が公営墓地を持ち、うち32自治体が無縁墓があると回答した。このうち無縁墓を撤去している自治体は19。12年度に盛岡、和歌山、13年度には静岡と奈良の各市が始め、撤去自治体は年々増えている。
 国内の墓地に占める公営墓地は3・5%。大半は民間霊園や寺が管理するが、墓の問題に詳しい第一生命経済研究所の小谷みどり主任研究員は「公営も民営も無縁化の傾向は同じ。需要がある墓地は新たな使用者のために無縁墓の撤去を進める。需要がない墓地はそのまま荒れ果てていく恐れがある」と指摘する。
■継承前提「時代に合わず」
 「墓は社会のありようを映し出す」。墓と社会の関係を研究する京都女子大の槇村(まきむら)久子客員教授(環境デザイン学)は言う。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、人口に占める65歳以上の高齢化率は2025年には3割を占め、団塊の世代は75歳を超え「多死時代」が到来する。一方で未婚化が進み、中高年を中心に35%が単身世帯となる。過疎化も劇的に進む。民間研究機関「日本創成会議」は、40年までに全国896自治体が「消滅可能性都市」になると予測する。
 「つまり墓を継ぐ子がいない独り身の死亡者が増え、特に過疎地では墓を世話する人そのものがいなくなる」(槇村さん)
 日本の墓は長く子孫が守り継いできた。民法は「祖先の祭祀(さいし)を主宰すべき者が承継する」と定める。しかし茨城キリスト教大の森謙二教授(法社会学)は「継承を前提とする墓のシステムは時代に合わなくなり、対応できない事象が起きている」と指摘する。
■永続的管理を研究/血縁離れ合葬も
 親から子へ、子から孫へ受け継ぐ墓のありかたが、見直しを迫られている。
 2012年の熊本県知事選で、蒲島郁夫知事は2期目のマニフェストに「公的な新たな形の霊園のあり方についての研究」を掲げた。
 「それぞれに宗教観や死生観があり、墓は個人の問題」と県議会から反対の声があったが、知事は「死後に墓がどうなるのか、不安を抱く人が増えている」とこだわった。
 6月、熊本県庁に集まった県内45市町村の墓地管理担当者を前に、県の担当者が永続的な墓地管理の仕組みや支え手の創出に取り組む必要を訴えた。「介護と同じように福祉として墓の不安を解消し、熊本らしい墓のあり方を考えたい」
 聖徳大学の長江曜子教授(墓地、葬送研究)は「これまで行政は土葬のなごりで伝染病を防ぐなど、公衆衛生の視点で墓の施策を進めてきた。それを熊本は人間の尊厳を尊重する福祉として捉えようとしている」と評価する。
 血縁の有無にかかわらず不特定多数の人を埋葬する「合葬墓」を設ける自治体も増えている。朝日新聞のアンケートでは東京都と11の道府県庁所在市が公営墓地に整備していた。
 都立小平霊園(東村山市)に11年度整備された合葬墓は、木々の下に1万人の遺骨を埋葬できる。12年度は500人分の募集に16倍の申し込みが、昨年度は1600人分の募集に10倍の申し込みがあった。高まる需要に、13年度には都立八柱霊園(千葉県松戸市)に10万人埋葬できる巨大墳墓を整備した。大阪市も10年度に市設瓜破霊園(平野区)に合葬墓を設置。2万4千人埋葬でき、現在956人が眠る。


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