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学校の「お勉強」と「現実生活」の出会い

インターネットの素晴らしさは、一流の学者(特に科学者)の書いた文章に容易に、そして気軽に接することができることで、私のように怠け者の学生だった人間でも、現在の新コロ騒動の中で下の荒川央氏のような学者の文章を読めば、生物学に興味を持ったかもしれない。
私は医者にはなりたかった人間だが、医者など、「症状から病名を判断する」「その病気に対して適切な治療法を判断する」ことさえできればいい、つまり、江戸時代の医者のようなものでいいという考えだったから、高校や大学(医学部ではなく歯学部に進んだが中退した)の生物の授業などまったく興味も無かったのだ。化学や物理も同様で、何で小難しい「原理」などを覚える必要があるのか、と思っていた。そもそも原理を知っていることと、その原理を使ったものを道具として使用できることはまったく別の話で、人類の中の天才たちが何百年もかかって獲得した知識を凡才が「理解する」など僭越だ、くらいの考えだったのである。
下の記事の中の細胞の核分裂の話など、高校生物の教科書を思い出して、なかなか懐かしい。それが、新コロ問題の中の「ウィルスやワクチンによるゲノム書き換え」とこうして関係するとは、意外でもある。

(以下引用)


まず、一人の人間を構成する細胞数は何十兆個というレベルになります。またRNAワクチンに含まれる脂質ナノ粒子の数も膨大です。それぞれがすでに天文学的数字です。スパイクタンパクのRNAが逆転写されたものが、その天文学的な数の中のたった数個の細胞のゲノムにでも取り込まれて、その細胞が免疫の監視を免れて生き残るとすれば、大きな問題となる可能性があります。「すべての細胞でRNAワクチンが効率よく逆転写されゲノムに取り込まれる」といったような極端な事を言いたいのではありません。すでに世界中で数十億人が接種しているRNAワクチンです。その中で実際どれほどの人数にどの程度の頻度でRNAワクチンがゲノムに取り込まれる事態が起き得るのか、という話です。



逆転写されてゲノムに取り込まれる代表的なウィルスがレトロウィルスです。ゲノムへの遺伝子導入にしばしば使われるレトロウィルスベクターはレトロウィルス由来のものです。ベクターは外来遺伝物質を別の細胞に人為的に運ぶために利用されるDNA (またはRNA) で、分子生物学や細胞生物学で汎用されます。レンチウィルスはHIV (human immunodeficiency virus、ヒト免疫不全ウィルス)  を代表とするレトロウィルスの一種で、レンチウィルスベクターはHIVゲノムから作られています。HIVは核膜を越えるための特別なタンパクの tatを持っており、レンチウィルスベクターはtatを使って核膜を乗り越えてゲノムに感染します。レトロウィルスベクターは核膜を乗り越えるタンパクを持ってはいませんが、ゲノムに感染できます。それはなぜでしょうか?ヒントはレンチウィルスベクターは増殖しない細胞にも感染できるが、レトロウィルススベクターは増殖中の細胞にしか感染できないという事です。


実は細胞増殖の途中に「核膜が無くなるタイミング」があるのです。細胞周期とは1つの細胞が2つの娘細胞を生み出す周期の事です。1つの細胞周期の間にゲノムDNAの複製と娘細胞への分配が起こります。細胞周期は、G1期 (間期1) -> S期 (染色体複製期) -> G2期 (間期2) -> M期 (分裂期) というように進行します。M期に染色体が凝縮し、反対側の極に引っ張られ、半分ずつ2つの娘細胞に受け継がれます。このM期には核膜が崩壊し、一時的に消失します。レトロウィルスベクターはこの核膜消失時に核に侵入し、そしてゲノムに挿入されます。M期に核膜が消失するという事は生物学の基礎知識でもあります。

RNAワクチンが逆転写されてゲノムに取り込まれる事はあり得るのでしょうか。ワクチンではないのですが、コロナウィルス自体のRNAゲノムがヒト細胞由来の逆転写酵素によって逆転写されてゲノムに挿入される事はあるようなのです。


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