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本を読むことと本を理解すること

「日々平安録」から転載。
私も「罪と罰」は一度しか読んでいないし、それも高校時代か浪人時代のことだから、今読めばもっと深い理解ができるかもしれない。完全に暇になったら(と言うより、自由になったら、つまり経済的問題から完全に解放され、働く必要が無くなったら)、昔読んで感銘を受けた本や観た映画などをもう一度読み直し、観直したい、というのが私の願いだ。
どんな作品でも、それを理解できる年齢というものがあるので、「日々平安録」筆者のように、中学生で「罪と罰」を読んでもそれが理解できるはずはない。面白さは分かっても完全な理解はとうてい無理だろう。私が高校一年の時に習った先生は詩人で、文学に造詣の深い人だったが、「ドストエフスキーが理解できたら死んでもいい」と言っていたくらいだ。
本を読んで大筋が分かることと理解できることはまったく別なのである。まあ、それでもまったく読まないよりはマシだが。
たとえば、私は小学生の時にメルヴィルの「白鯨」(これも下記記事にあるモームの選んだ「世界の十大小説」のひとつだ。)の分厚い本を読んで、書かれている言葉の10分の1くらいしか理解できなかったが、それでも「面白い」と思ったのである。言葉にはならなかったが、イメージを作ることは十分にできたのだ。イシュマエル、クィークェグ、エイハブ、スタッブ、フラスク、スターバック、おそらくその時に映画の「白鯨」を見たら、「こんなのは『白鯨』ではない」と文句を言っただろう。特に、グレゴリー・ペック(好きな俳優ではあるが)のエイハブ船長など最悪である。なぜ、スペンサー・トレイシーあたりにしなかったのか。有名俳優でなくても、エイハブの風貌を持つ俳優は探せたはずだ。(イシュマエル役の俳優だけは良かった。ええと、リチャード・ベイスハートか。あの名作「道」でも好演した俳優だ。ジェルソミナたちが旅の途中で出会う綱渡り芸人の役の人。)
興奮して話が脱線した。
要するに、「書かれた言葉の10分の1しか理解できなくても、本のエッセンスを読み取ることは十分に可能だ」ということを言いたいのである。だから、幼いころ、若いころの読書は大事だ。だが、それが「本物の理解」ではないことを十分に知る必要もある。
だから、優れた本は何度でも読むべきなのである。(映画も同様だ。)幼いころ、若いころ、とは違った理解が年を取れば得られるだろう。それが年を取ることのほとんど唯一の利点である。


(以下引用)

2015-12-11

[]今日入手した本 岸本佐知子ら 「『罪と罰』を読まない」Add Star

 


 実は、今日入手してもう読み終わってしまったのだが、何とも奇妙な本で、岸本佐知子氏、三浦しをん氏ら、小説を書いていたり、文学に関する仕事をしていたりする人たち4人が、実は「罪と罰」を読んでいないといって、しかし有名な作品であるので、何らか噂をきいたことがあって、青年がおばあさんを殺す話というくらいは知っていて、それでそれぞれが断片的な知識を持ち寄って話し合いながら、「罪と罰」がどんな小説であるか推理していくというものである。結局、この4人ともにその推理会議の後にはじめて「罪と罰」を読み、「げっ、違っていた! 凄い作だ! 脱帽した!」といって終わるというものである。


 まあ面白いのは三浦氏のような小説の実作者が、この長さの小説なら、この辺りで一度山場をもってこないともたないといった「書く人間」でないと持たない感想を述べているあたりなのだが、驚くのが、みなドストエフスキーの思想傾向といったものについてもあまり知らないように思える点で、ドストエフスキーが分類すれば「保守反動」のほうに属するといった方向についても知識がないようなのである。それでラスコリニコフ(本書ではラスコさん)が老婆を殺す理由についても「革命の大義」のためというような想像を展開している。


 それでわたくしはといえば、たぶん中学三年くらいで読んだのではあるが、もうきれいさっぱり何も覚えていない。ラスコさんが殺したのが一人ではなく、二人だったというのも、本書を読んでそうだったのかなという程度なのだから酷い話である。それでわたくしはラスコさんが人を殺すのは「超人」思想のような観念によってであったように思っているのだが、これもまた違っているかもしれない。


 中三くらいで「罪と罰」は読んだのだが、その後、「罪と罰」について、あるいはドストエフスキーについていろいろなひとが様々に書いているものをかなりたくさん読んできたため、それからの影響のほうがずっと強く残っていて、自分が読んで印象などどこかにいってしまっている。


 たとえば、モームの「世界の十大小説」ではドストエフスキーは作品は「カラマゾフの兄弟」が取りあげられているのだが、その前に40ページほどのドストエフスキーについてのモームの評が収められている。その程度の知識があるだけでも、本書でいわれていることのかなりはでてこないのではないかと思うのだが、もう「世界の十大小説」などはあまり読まれなくなっているのだろうか?


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