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一滴の露の中にも宇宙はある

一昨日図書館から借りた本のうちの「悲しみよこんにちわ」がなかなか面白くて読書継続中だが、昨日は同じ日に借りた恩田陸の「チョコレートコスモス」という500ページもの長編小説を何の気なしに読んでみたら、あまりに面白くて、昨日から今朝にかけて(寝ている時間を除いてだが)読破してしまった。実は、私は恩田陸という作家はさほど好みの作家ではない。ホラー系統の作品が多いイメージだからだが、作家的力量は現役作家の中でも最高級のレベルだろうとは思っている。
サガンの200ページ足らずの小説を読むのに数日かけているのに、恩田陸の500ページの小説を6時間くらいで読んでしまうのは、両者の小説的性質が違うからだろう。サガンのものは、映画的詩情を味わいながら読むもので、恩田陸のこれは、「ガラスの仮面」を一気読みするようなものだ。つまり、後者は「小説エンジン」(読者を先へ先へと引っ張る力)が強烈なのである。
なぜ「ガラスの仮面」を引き合いに出したかというと、これが演劇の世界を扱い、演劇世界でのライバルとの戦いと友情を描いているからである。正直言うと、作中での演劇的課題の難問性は、解答不可能であり、それへの回答(正解)も私のようなひねくれものには「はたして、それが本当に正解と言えるのか」という疑問を持たされはするが、まあ、演劇にはまったく無知な素人なのだから、細部細部の描写の面白さを楽しめばよい。演劇的難問とその解答・回答というのは「ガラスの仮面」でも何度も出てきて、その回答(正解)に読者が首をひねるのも、同じだろう。
まあ、要するに、面白さ抜群の小説であるが、個人で買う資力の無い人は、近くの図書館で探してみることをお勧めする。欠点は「チョコレートコスモス」というタイトルが意味不明(最後に説明される)で、たいていの人は魅力を感じないだろうということと、装丁が「ホラー小説」的であることだ。内容と完全に乖離した装丁で、これは装丁者が小説内容を知らないで作ったか、あるいは出版社が「恩田陸=ホラー小説」という定番扱いで売ろうとした出版戦略のミスだろう。正直言って、手元に置きたくない装丁である。装丁者は平野甲賀という、有名な人だ。

(以下引用)書評を見てみると、「ガラスの仮面」を引き合いに出している人が多かった。やはりそう思う人がほとんどなのだろう。演劇の世界の話だからではなく、「演劇バトル」の話だからではないか。なお、「蜜蜂と遠雷」という作品のことを言っている人も多い。


『蜜蜂と遠雷』の演劇版というイメージ。でも出版されたのはこの本が先なので、『蜜蜂と遠雷』は『チョコレートコスモス』の進化版といったところでしょうか。演劇は殆ど観たことはなく、全くの素人なので理解しづらいところはありましたが、オーディションで初心者の飛鳥が人気俳優の響子と共演する場面は感動ものでした。やっぱり恩田さんは表現が上手い…物語に吸い込まれてしまいます。オーディションの演題となった『開いた窓』や『欲望という名の電車』の内容を知っていればもっと楽しめたのかな。飛鳥のその後がとても気になりました。


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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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