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「ライオンハート」と「そして二人だけになった」

恩田陸の「ライオンハート」と森博嗣の「そして二人だけになった」を続けて読んだが、どちらも筆力は凄いと思う。前者はタイムトラベルSFの一種だが、「ジェニーの肖像」や「たんぽぽ娘」のようなラブロマンスSFで、どのようにしてタイムトラベルするのかという理屈はない。(肉体ではなく)同じ魂が異なる時空を彷徨う話であり、歴史SFという面もある。幾つかの話が長編を作って、話によって出来不出来もある。初代エリザベス女王の話などは、「同じ魂の彷徨」という点では場違い感もある。最大の難点は、恩田陸の作品には多いが、作品タイトルが作品内容にまったく合わないことである。ラブロマンスに「ライオンハート」という題名ほど似合わないものもないだろう。ライオンハートとは「勇猛心」のことであり、「リチャード獅子心王」の「獅子心」をたいていの人は連想するはずである。まあ、ブリティッシュロックの曲名から取ったらしい。歌い手はケイト・ブッシュとか何とか言うらしいが、私はまったく知らない。そして、この小説を読む読者の多くも知らないだろう。しかし、繰り返すが、作品世界を徹底的に作り上げる恩田陸の才能は凄いし、作品自体は傑作だと言っていい。
森博嗣の「そして二人だけになった」は、推理小説としてはかなり問題作で、悪い意味での問題作だろう。「犯人は宇宙人でした」というアレよりもひどい、「推理小説の根本を否定する推理小説」である。そもそも、謎の解明がまったくされない。いや、それらしき事は書かれているが、作中のさまざまな謎のほとんどは放り出しの投げ捨てである。あれだけ長い話を読ませるだけの筆力は凄いと思うが、推理小説としては最高に最低だろう。まあ、推理小説を単なる時間つぶし程度に思っている人には最適な時間つぶしにはなるだろうが、読んだ後の徒労感(時間を無駄にした感)が凄いので、あまりお勧めはしない。一言言っておけば、「超人思想」の話、詳しく言えば「科学者は最高に偉い。だから、凡人を全員殺す権利がある」というような話で、そういう話が好きなら読むといい。話と無関係に出て来る作中の科学者の思想は、作者森博嗣の思想そのものだと思う。単純化すれば、偏差値70(IQ150)以下の人間(女には稀に「恩赦」があるがwww)には生きる価値が無い、みたいな思想である。人類の進歩のためには人類の9割は死んでもいい、みたいな思想とも言える。


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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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