5連休の初日、東京―箱根間を車で走った。曜日の並びが同じだった5年前の5月2日に大渋滞した東名高速道路は、新型コロナウイルスによる外出自粛の影響で車が消え、宿の予約も困難だった箱根の町はどこも閑散としていた。
午前7時10分すぎ、東京・銀座を車で出発し、約20分後に東京料金所(川崎市)を難なく通過した。2015年の同日同時間帯、東名高速下り車線では、神奈川県伊勢原市から同料金所をまたぐ36.9キロの渋滞が発生していた。
前方の視界から車が消えることもある中、同8時ごろ、海老名サービスエリアに到着。トラック側は満車だが、乗用車側の車は2割ほどで、観光バスは1台もない。子ども連れの姿はなく、フードコートもほぼ空席だった。
愛媛県のトラック運転手稲葉勝さん(44)は「休憩とのめりはりがついて仕事がしやすい。千葉から例年の半分の時間でここまで来られた」と話した。ただ、スピードを出す車も増え、注意が必要だという。
例年のゴールデンウイーク(GW)期間中、1日に12万人が訪れる箱根町。同10時ごろ到着した箱根湯本駅では、運休している特急の券売所や売店が閉まり、10時4分着の電車からは地元の人が2人降りただけだった。
「このまま町が死ななければいいが」。駅前の土産物屋や食堂はシャッターが下り、休業の張り紙が並ぶ。並びに住む菅原知栄子さん(75)は「今は仕方ないが、町の活気が戻るよう早く収束してもらいたい」と話した。
売り上げが740円の日もあったというタクシー運転手の美馬哲さん(62)は、「大涌谷の噴火警戒レベルも下がり、台風被害も落ち着いてきたのに。踏んだり蹴ったりだ」と嘆いた。一方で数少ない観光客の一部に対し、「解放感からマスクを外す人もいる」と苦言を呈した。
箱根神社や芦ノ湖周辺にも人影はまばらで、大涌谷への道は通行止めに。足湯や日帰り入浴施設、美術館も軒並み休業していた。観光協会によると、宿泊施設の8割が臨時休業しているという。