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英語の社内公用語化は社員の大半の沈黙しか生まない

「泉の波立ち」から転載。
南堂氏は独断や偏見も多いが、ツボにはまるとホームラン級のいい記事を書く。これはそのホームランだろう。長いので、もしかしたら「余談」部分はカットするかもしれないが、その「余談」部分も面白い。

(以下引用)

2013年12月15日

◆ 英語の社内公用語化は?

 英語の社内公用語化を進めた企業は、どうなったか? 特に、日産自動車は? ──

 「グローバル経済の環境では、企業のグローバル化のために英語の社内公用語化を進めるべきだ」という動きがあった。
 では、そのてんまつは? この件は、前に下記項目で論じた。(前半は冗談で、後半は真面目。)
  → TOEFL で日本を弱体化 (2013年05月05日)

 そこでは、次のような例を示した。(いずれも外部の記事)
  → ユニクロ・楽天・グーグルほか 急増中!「英語ができて、仕事ができない」若手社員たち
  → 富士通で TOEFL 推進
  → 富士通、9500人削減 13年3月期最終赤字950億円
  → パナソニックで TOEFL 推進
  → パナソニックの巨額損失

 別項では、次のリンクも示した。
  → 楽天『kobo Touch』不具合の裏に社内公用語英語化の影響が!?

 ──

 さて。ここでは抜けている企業が一つある。それは日産自動車だ。日産自動車は、どうか? 
 まず、最近の経営実績を見ると、日産は特に悪いというほどではないが、自動車会社のなかでは1社だけ落後している感じだ。
  ・ トヨタはハイブリッド車が絶好調。
  ・ ホンダは新型ハイブリッドが絶好調。ガソリン車も。
  ・ 富士通は米国で新型車が絶好調。
  ・ マツダはスカイアクティブなどで好調。
  ・ スズキとダイハツも軽自動車が好調。
  ・ 三菱も負債の完済などで、回復。


 このように各社は好調なのだが、日産だけは例外だ。中国市場では新型車の売上げが好調だが、これはモデルチェンジがそろっているからにすぎない。(シルフィ、ティーダ、サニー、ティアナ、中国専用車……というふうに新型車がいっせいに出たから、売上げも好調。)一方、中国市場以外の世界販売を見ると、日産の売上げはホンダにかなり後れを取っている。
 特にひどいのは電気自動車だ。これがちっとも売れない。その一方で、ハイブリッド技術の開発はほったらかしにしたため、ハイブリッド車では世界レベルの大メーカーでは1社だけ落後している感じである。(韓国メーカーにも負けているかもね。)
 
 ──

 日産は、ひところはゴーン社長の経営方針で、かなり復活した。しかしその後の成長速度が鈍化している。本来ならば(落ち込んだ分)他社よりも成長していいはずだが、他社にかなり負けている。それを如実に示すのが株価で、トヨタやホンダに比べて、株価は低迷している。
 ではどうして、日産だけが駄目なのか? 私はちょっと不思議に思っていたのだが、その理由となることがわかった(推定できた)。社内の英語公用語化だ。
 日産は、社内の英語公用語化を推進した。それで社員は英語をぺらぺらと話している……というふうに聞いていたが、実はそうではなかった、という記事がある。引用しよう。
 社内で会議をしたら、外国人はどんどん発言するが、日本人は端の方でもじもじ。
 経営会議の半数が外国人だから、放っておくと社員の評価も外国人の方が良くなる。
( → 朝日新聞 2013-12-15
 つまり、英語の社内公用語化を推進したら、社員は英語がペラペラになったのではなく、英語ができないまま口を噤んでしまったのだ。

 これは前項で述べたことに似てる。
  ・ 「魚が陸に上がっても、魚に足は生えない。魚が干からびるだけだ」

 この比喩と同様のことが、日産にも起こった。日産の社員は、新たな環境に適するように進化するのではなくて、新たな環境に適応できないまま、干からびてしまった。ちょうど、陸にほうりだされた魚が、足を生やす代わりに、干からびてしまうように。

 もう一度繰り返す。
 英語の社内公用語化を推進したら、社員は英語がペラペラになったのではなく、英語ができないまま口を噤んでしまった。……これが日産で起こったことだ。
 一方、他社ではどうだったか? 英語でなく日本語で社内連絡をしたから、社員は日本語で連絡し合って、盛んに情報を交換した。そのせいで、社内は活性化していた。
 日産で活性化したのは、上級職に当たる経営会議の外国人だけだった。日本人社員は口を閉じてしまったし、それ以下の専門技術者も蚊帳の外になってしまった。
 たとえば、何かエンジンのトラブルが起こったとして、それを報告するには、英語で報告しなくてはならない。

 例。
 「 The trouble of this engine are ~ 
 ええと。 are じゃなくて is だったか。冠詞はどうだっけ? 前置詞はどうするんだったかな?」


 なんてことばかりを考えていると、肝心のエンジンのことに割く時間は大幅に減ってしまう。こんなことじゃ、まともな技術開発はできません。

 ──

 さらに記事から引用しよう。
 11月下旬に都内で開かれたグローバル人材を育成するためのフォーラム。大学生ら500人近くが集まった。
 日産自動車の志賀俊之副会長は「ガラパゴス人材になるな」と大学生を挑発した。
 「日本でしか役立たない人はガラパゴス人材。日本ではとっても貴重だが、残念ながら海外では役に立たない」
 同世代の外国人と戦える力を備えよ、という学生への強いメッセージだった。
 アホじゃなかろうか? 学生に向かって「ガラパゴス人材になるな」と語ったところで、今さら英語がぺらぺらになるわけじゃない。そういうことは、大学生に語るべきことじゃなくて、それ以前のずっと若い人材に語るべきことだ。というか、むしろ、英語教育を推進する政府に語るべきことだ。今さら学生に向かって英語力を高めよと訴えても、ほぼ手遅れだ。

 そもそも大切なのは、英語力じゃなくて、技術開発力だ。英語力なんて、二の次だ。そんなこともわからないバカ社長だから、英語でゴーン CEO と会話することばかりに熱中して、日本人の優秀な技術者と会話することができない。そのせいで、日産の技術開発力は大幅に低下してしまった。ホンダやマツダが素晴らしい技術開発力を発揮しているのに比べて、最近の日産は目を覆いたくなるほどひどい。それというのも、技術開発より、英語力アップなんかに熱中しているからだ。
 「日本でしか役立たない人はガラパゴス人材。日本ではとっても貴重だが、残念ながら海外では役に立たない」
 それでいいのだ。ガラパゴス人材でいいのだ。社員に求められることは、技術開発であって、英語力ではないからだ。
 「海外では役に立たない」って、いったい、何を考えているんだ? 日本で研究開発をすることをやめて、アメリカや欧州で研究開発をする気なのか? それも、現地の社員でなくて、日本人社員で? これは狂気の沙汰だろう。
 日本人なら日本で研究開発をすればいい。米国人なら米国で。イギリス人ならイギリスで。それぞれの現地で研究開発をすればいい。なのに何だって日本人が外国で研究開発をする必要があるんだ? あまりにも馬鹿げている。
 つまり、「海外では役に立たない」なんていう発想をすること自体が、根本的に狂っているのだ。それはいわば、「魚は木の上では役に立たない」と言っているのと同じだ。「魚は水中で泳げばいい」ということを理解できず、「魚は空を飛ぶべきだ」とか、「魚は木登りをするべきだ」とか思い込んで、魚を空中や樹上に放り出そうとする。
 これこそ狂気の方針だ。それが日産の社長(現・副会長)のやっていることだ。
 志賀副会長は「グローバル化を進めれば進めるほど日本人が埋没する。とても優秀で勤勉なのに残念だ」と嘆く。
 残念だって、何言っているんですか。「グローバル化を進めれば進めるほど日本人が埋没する」とわかっているんでしょ? 自分の経営のせいで、そうなるんでしょ? だったらそれを改めるのが経営というものだ。
 経営が間違っていたら、「残念だ」と語るべきではなくて、経営を改めるべきなのだ。なのに大学生に向かって、「英語力をアップしてくれ」と頼む。自分の経営のせいで会社が傾いているのに、大学生に「英語力と技術力の双方を兼ね備えてくれ」と頼む。あまりにも他力本願だ。
 日産の社長(現・副会長)は、自分で経営を改善しようという意思がない。というか、それ以前に、自分の誤りを理解する能力すらない。あまりにも愚かすぎる。
 
 日産の社長に進言しよう。それほど英語力が大切ならば、文学部・英文科か、外国語学部・英語学科から、社員を採用すればいいのだ。そして、技術力なんかは無視すればいいのだ。日産で出世するために必要なのは、技術開発力ではなくて、英語力なのだから、英語力の高い社員ばかりを採用すればいいのだ。そうすれば、企業はどんどんグローバル化する。
 最終的には? 日産は、倒産して、外国企業に買収される。あげく、日本人社員はみんな追い出されて、外国人社員ばかりになるだろう。植民地になるようなものだ。そして、そのときこそ、「100%外国人社員になったから、グローバル化は完成した」と宣言できる。これこそ、社長の望むことだろう。



 [ 余談1 ]
 実は、英語の人口なんて、たいしたことはない。世界人口で最大の言語は、中国だ。だから、英語よりも中国語を推進して、社員も中国人ばかりにするといいだろう。日産を中国に占領されてしまえ。……そのときこそ、日産の「グローバル化」という理想はまさしく実現するのである。(そこをめざしているんだから。)

 [ 余談2 ]
 それにしても、ユニクロの社長 にせよ、日産の社長にせよ、「グローバル化」を口にする経営者というのは、どうしてこうもバカがそろっているんだろう? 「グローバル化」とは、つまり、「愚脳馬鹿化」のことなんだろうね。

 [ 余談3 ]
 楽天の事情として、求人広告の文書が転載されていた。下記。
 「カナダのKoboチームと時折コミュニケーションを行い、グローバルなベストプラクティスを実践していただくグローバルなオポチュニティです。」
( → ガジェット通信
 英語力がアップしたのではなくて、単に日本語力が低下しただけだった、ということかな。日本語でおk

 [ 補足1 ]
 志賀俊之は、2005年にCOO・代表取締役(つまり社長)に就任した。2013年11月に代表取締役副会長に就任した。
 本項では便宜上、「社長」と示しているが、正確には上記の通り。
 
 なお、この人が社長になったのは、有能だったからではなくて、英語が得意だっただけから、というような話がある。引用しよう。
 志賀氏は英語が得意でコミュニケーション能力に優れていることも今日までゴーン社長の女房役を続けられる重要なスキルである。日産はかつて役員の半数以上を東大卒が占めていた時代もあったが、ルノーと提携後は学閥などによる優劣は通用しなくなった。もっとも、彼らが日常業務で大きな功績を挙げても、「英語はペラペラ」でなければ、役員どころか、部長職にも昇進できない。語学の壁にぶつかり不本意ながら会社を辞めた有能な幹部社員は多い。
( → 分析「無能でも役員になれる人、やり手でも躓く人」
 この記事のタイトルの通り。英語さえできれば、無能でも役員になれる。英語ができないというだけで、やり手でも躓く。……それが日産という会社だ。実力主義とは正反対。単に英語だけに従属する。まるで語学スクールだね。

 [ 補足2 ]
 日産の社長について、こう記した。(上記)
 「そんなこともわからないバカ社長だから、英語でゴーン CEO と会話することばかりに熱中して、日本人の優秀な技術者と会話することができない」

 一方、これと逆のことをした人がいる。
   → 専門家と対等に話ができるようになる
 サンリオの米国子会社を経営した人がいる。彼は圧倒的な業績を上げたが、そこでは単に「専門家に任せる」というような方針を取らず、専門家と対等に話ができるように知識を習得していった。

 ひるがえって、技術のことを何もわからない社長が、会社の技術開発の方針を勝手にあれこれと決めたのが、日産だ。
 では、どうしてこういうことになったのか? 私の推測は、こうだ。
 「ゴーン社長が部下に意見を求めたとき、部下は英語ができないので、社長の方針に反論できなかった」
 要するに、英語の社内公用語化のせいで、まともな技術的な議論ができなくなってしまったのである。英語力のできる文系の人の意見ばかりがまかり通って、英語のできない技術者の意見は通らなくなってしまったのだろう。技術よりも英語力を評価基準にしたため、技術面では素人の意見ばかりが通ってしまったのだろう。
 これが「英語の社内公用語化」のもたらした結果だ。
 
 [ 補足3 ]
 志賀社長は、大阪府立大学経済学部卒。(国立大阪大の方ではない。)
 これじゃ、技術のことはとてもわからないだろう。歴任してきた職も、技術とは関係のない分野だ。
 思えば、ゴーン CEO も、文系の人だ。頭のいい人ではあるが、技術のことはわからない。そのせいで、「電気自動車に専念して、ハイブリッドを切り捨てる」という致命的な戦略ミスをしてしまった。

 さらに言えば、ゴーン CEO は、デザインのこともわからない。そのせいで、駄目な人にデザインを丸投げして、今日の日産のデザインの停滞を招いた。
 この件は、前にも論じた。
  → 日産車のデザイン
 ここに、次の記述がある。
 「日産車のデザインは、最近の車はみんなひどい。これも英語ばかりに熱中しているせいだろうか」

 本項とよく似た話題なので、上記項目も読むといいだろう。
 
 [ 補足4 ]
 日産のデザイン部門の責任者である中村史郎は、カルロス・ゴーンの就任直後にヘッドハントされて、デザイン本部長に就任した。それが 2000年である。以後、今日まで 14年間もの長きにわたってデザイン部門を牛耳っている。おまけに、この人はすでに 63歳という高齢者だ。
  → 中村史郎の経歴
 しかし、同一人物が 14年間も統括し続けていれば、人事は停滞するし、機構にも澱みが出てしまう。実際、日産車のデザインはひどいデザインになっており、そのまま刷新されもしない。
  → 日産車のデザイン
  → 日本車 vs 韓国車
 
 以上のことは、きわめて不自然なことだ。
  ・ 同一人物が 14年間もデザイン部門を牛耳っていること
  ・ ひどいデザインの責任を取らずに居座っていること

 どうしてこういう奇妙なことが起こるのか? ずっと不思議に思っていたが、本項を書いたあとで、推測した。
 「この人は英語が得意だから重用されているのでは?」
 早速、上記の経歴を調べると、まさしくそうだとわかった。いすゞに入社後、次の経歴がある。
 1981年米国アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン、トランスポーテーションデザイン専攻卒業。その後、GMデザイン勤務後、欧州デザインマネージャー、米国副社長、デザインセンター部長を歴任。
 海外在住歴がとても長い。これなら英語はペラペラだろう。そして、その特性ゆえに、ゴーン社長に重用されたのだろう。彼と英語で十分に意思疎通ができるデザイナーは、他にはほとんどいないと思えるからだ。(デザイン力と経営力を備えた人はいるだろうが、英語力まで備えた人は少ないだろう。)

 結論としては、こうだ。
 「英語重視」という方針ゆえに、人材の選択の幅が極端に狭められた。そのせいで、同一人物が 14年間も部門の長の座に居座った。失敗しても、停滞しても、14年間も居座った。そのせいで、日産のデザインは停滞して澱(よど)んでしまった。流れのない川のように。
 その代表的な例が、「醜い」と評される GTR だろう。また、最近のエクストレイルもひどい。スカイライン(インフィニティ)もセンスがない。これほどにも駄目なデザインを連発しながらも、英語力があるというだけで居座り続ける。
 英語は日産を滅ぼす。



 【 関連項目 】

  → 英語で授業:その是非

 「英語の授業を英語でやる」という、日本政府の方針。
 英語ができない生徒に、英語で英語を教えたら、どうなるか? もちろん、チンプンカンプンである。結果はひどいことになるに決まっている。
 楽天・富士通・パナソニック・日産は、「英語の社内公用語化」で会社をひどい状況にしてしまった。
 それと同じことを日本全体でやろうとするのが、日本政府の方針だ。富士通・パナソニックを倒産寸前にさせたように、日本全体を倒産寸前(沈没寸前)にしてやろう、ということか。
 ひどいね。





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